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2024.06.12
FUYU SOLO LIVE TOUR 2024 in TOKYO
DRUMS & TALK SESSION
〜SPECIAL GUEST 高橋 武(FROM フレデリック)〜
公称キャパは着席で80人となっている渋谷Gee-ge。この日は2つのドラム・セットが鎮座しているので、もう少し人数は限られるだろうか、ただ、観客全員がそのドラム・セットを見ながら、指をさして話をしたり、覗き込んだりなど、今か今かとワクワクしながら開演を待ち望んでいる様子が見て取れる。
時間ぴったりにMCに呼び込まれ登場したのは、この日の主役であるFUYU。まずは腕ならしに2分強のソロで魅せてくれた。ビートを核としながらも、それはフィルインを中心としたような、“フィルインでつなげるビート・アプローチ”といった感じで、その引き出しの多さと抜群のフレージング力、留まることなく流れるグルーヴに一気に引き込まれる。ソロから続けざまに自身がサポートするHanah Springの「IN THE SUN」を演奏。ここでは「日本に来てから歌モノのドラミングを学び、そこで1打に対する大切さや歌をサポートする心地良さを学んだ」と本人が語るように、身体を揺らす極上のグルーヴを提供。チョップスなどでも活躍するショット・スピードの速さは、バック・ビートを聴かせる場面でもスネアが抜群の出音で、曲の核を担う一打であることを感じさせる。曲の後半〜アウトロにかけては、ドラム・イベントであることを思い出させるように再び乱打で魅せていくのだが、その展開のつけ方も実にドラマチックで、曲の熱量とリンクしてドラムも熱を帯びていき、FUYUが“ドラムで歌う”とこうなるのだなと感じさせる貴重な場面だった。
ソロはもう1曲、FUYUが日本に来て本格的にサポート・ワークを始めた頃からバックを務めているさかいゆうの最新曲の中から、「よさこい鳴子踊り」を披露。日本らしさを感じさせる民謡をさかいがブルージーに歌い上げるファンク・ナンバーで、ここではダイナミックなチョップスの乱打か!?と思いきや、細かなハイハット・ワークを主体とした“32ビート”のようにも聴こえる超繊細な16ビートで会場を沸かせた。後のトーク・パートで高橋 武が、「めちゃくちゃ細かいことをやっているのに“やってる感”というか、ドヤ感が一切ない! あんなに細かいフレーズなのに曲の邪魔もしないし、超絶技巧なのに自分からは主張していない感じが本当にすごい」と語っていたのがすべてではないだろうか。
そしてこのデモ演奏が終わったところでいよいよゲストである高橋 武が登場。「最初からバチバチで、僕何したらいいんですか(笑)」と言いつつ、さっそくソロを披露した。高橋のソロ・パフォーマンスはオケを流さずドラム1本で聴かせるインプロヴィゼーションのようなスタイルで、精神統一したあと、シンバルの繊細な響きを引き出すアプローチからスタート。スナッピーOFFのスネアやタム類に絡めていくと、左足はハイハットを細かく刻んでおり、フリーの中にも絶妙なタイム感に裏づけされたフレージングが光る。中盤からはビートとフィルインによる踊らせるパートにシフト。フレーズを口ずさんだり雄叫びを上げるなど、展開と熱量に呼応しながら“歌い上げる”姿に観客の没入感も高まる。フレデリックのステージでは見ることのできない“ソロ・ドラマー高橋 武”とも言える貴重なパフォーマンスは圧巻で、なおかつFUYUとは真逆のタイプのソロに会場は圧倒されていた。
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