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和太鼓によるパフォーマンスを軸に、篠笛/三味線/箏といった楽器と共に和の世界観を“ストーリー性のある肉体の芸術音楽”として表現するエンターテインメント集団、DRUM TAO。1993年に結成され、今年30周年を迎える彼らが、5月より全国ツアー「THE TAO 夢幻響」を開催中。テーマは1997年に完成させた作品「天響」を、今あらためて表現するというものだ。
舞台衣装は日本を代表するファッション・デザイナー、コシノジュンコが、舞台美術は空間デザイナーの鈴木順之がそれぞれ担当し、楽曲や映像なども「天響」からすべて一新させた渾身の作品になっているという。
ここでは去る7月4日にEX THEATER ROPPONGIで行われた東京公演3日目の様子をお届けしよう。
客電が落ち、舞台上に設置された巨大ビジョンにDRUM TAOの歴史や活動を振り返るオープニングが映し出される。その映像が終わると巨大なビジョンは、6枚の液晶パネルに分割され、曲の世界観に応じたイメージ映像が流れるという演出に変化。
ビジョンの後ろにはすでに複数の和太鼓がセッティングされており、尺八のソロが鳴り響く中、各メンバーが所定の位置へつくと本編がスタート。大太鼓、長胴太鼓、組太鼓が奏でるリズムに、尺八、篠笛、三味線、箏の旋律が絡み、さらに銅鑼やチャッパなどの金物が小気味良いアクセントを効かせる。特に迫力のある音を奏でていたのが一番奥に鎮座する巨大な大太鼓で、奏者の身長よりも大きい太鼓を高い位置で振りかぶるように叩き、その強烈な重低音を担う和太鼓と上モノのコントラストが鮮やかだ。
冒頭から激しいパフォーマンスが数曲続いた後、エイサー太鼓を叩くメンバーが客席へ下り、通路を練り歩く曲では、オーディエンスとハイタッチを交わす場面もあり会場に一体感が生まれていく。真横を通る太鼓の音は心臓にまで響き、迫力満点。その後も、柏手や掛け声で一緒にステージを創っていく楽しさを味わうことができ、客席には笑顔が溢れていた。
ステージではさまざまな和太鼓が使用されるが、桶胴太鼓をはじめとする低音を担う太鼓は太いバチによるずっしりとした音と、細いバチによる繊細な音色が使い分けられており、それが楽曲ごとの世界観に変化を与えるアクセントとなっていた。一方、腰鼓や締太鼓といった小口径の太鼓は非常に音ヌケが良く、音像の中でしっかりと存在感があり、これらの低音と高音の太鼓が混ざり合うことで美しい音のコントラストを生み出していたように思う。
美しい音色を生み出す演奏技術もさることながら、激しいステージを支えている鍛え上げられた肉体もまた印象的。各パートのソロや、アドリブ演奏、ダンス、棍棒を高速回転させるパフォーマンスなどで、その肉体が躍動する様子を見ることができた。
公演が後半に差しかかると、黒とシルバーのデザインから、赤を基調としたデザインの衣装に変わり、複数の箏と篠笛による美しい旋律が中心の、しっとりとした世界観に変化。舞台上にはまるでオペラのセットのように白い紐が何本も重なり合った幾何学的な装飾が現れ、30周年の節目に生まれ変わったという新たな世界観を、ステージいっぱいに感じることができた。
次第に華やかな楽曲へとシフトし、最後は大太鼓、組太鼓、エイサー太鼓、三味線、篠笛、尺八などによるパフォーマンスで本編は賑やかにエンディングへ。
アンコールでは、歌舞伎のイラストにそれぞれの名前が入った衣装へとチェンジ。メンバー紹介と同時に液晶パネルに1人1人のイメージ映像が映し出され、ステージ上には和太鼓や篠笛、三味線などに加えて高く掲げられた提灯が並ぶなど、クライマックスにふさわしいお祭りムードに。ラストは地べたで上半身だけを起こし腹筋で身体を支えながら激しく太鼓を叩く、いわゆる腹筋太鼓も披露。ハードなパフォーマンスに会場の熱気は最高潮に達し、約90分の公演は終了。
上記で紹介した太鼓以外にも多種多様な太鼓や楽器、小道具が登場し、楽曲によって使用される楽器が細かく変化。太鼓を叩くバチも太さの違いによって多彩なサウンドを奏でていた。また、ハイハットやチャイナ・シンバルが使われるシーンもあったが、“和”を象徴する和太鼓の世界観において決してアンマッチではなく、楽曲を引き立たせるアクセントとして見事に融合。
それぞれの見せ場がふんだんに組み込まれつつ、楽曲ごとの転換は非常にスピーディーかつ全体を通して緩急のついた演出で、その移り変わっていく“肉体の芸術音楽”による世界観を存分に楽しむことができた。