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【Interview/後編】”カシオペアの新ドラマー”、今井義頼 に迫る1万字超えの独占取材!
- Interview:Isao Nishimoto
僕にしかできない演奏は
熱量と情熱とテクニックを全力で注ぎ込むこと
その内側からの衝動に対して躊躇せず、思いっきり出す
●ここまで答えていただいたこと以外に、アルバム制作を通して新たに発見したこと、気づいたことなどがあれば教えてください。
今井 僕が普段、有形ランペイジ含めお仕事でしているレコーディングは、とにかくクリックやグリッドに対してジャストをねらいながら綺麗に演奏をするということが正義の現場が多く、僕自身もジャストで叩けている音の良さみたいなものを売りにしていたところがあるのですが、カシオペアというバンドは、逆に全員のリズムのヨレやズレ、ウネリなどを大切にし、とにかく生のアンサンブルの質感を大事に、全員一緒にせーので録る。このやり方は本当に新鮮で気がつくことも多く、とても勉強になりましたね。
今のご時世、このように録るバンドも、それが可能な条件が整うことも少ないと思うので、僕は逆にこのような昔ながらの製作におけるスピリットがとても大切なやり方に感じました。僕を含め、ジャスト&エディットが常識となっている今の音楽世界は、もしかして人間の演奏ならではの味や感覚を、退化というか忘れさせて感じ取れなくしてきてしまっているのではないかと思うんです。
僕としても、今回のレコーディングで感じられたこの感覚をもっともっと研ぎ澄ましたいと思いますし、今後カシオペアのレコーディングで、もっとこういう心構えで挑もうとか、こんなことに挑戦してみようということが、もう今僕の中にすでにたくさん出て来ています。気が早いのですが、次回作以降が楽しみでなりません。
●レコーディングで使用したドラムは、普段愛用されているYamahaのLive Custom Hybrid Oakだと思いますが、このキットのどういうところが気に入っているか、あらためて教えてください。
今井 とにかくドンとしっかり鳴ってくれるところですね。叩いていて気持ちが良いんです。そしてASPRのS2 BLACKとの相性がすこぶる良い! アタックのハイ成分とミッドローのパワー感の充実、ディケイの落ち着き、それらすべてを成立させることができ、僕の理想に相当近い音が出せるようになってきました。
●スネアは何を使いましたか?
今井 メインがステンレスの14”×5.5”、サイドは武蔵の12”×6”です。M7「A BEAM OF HOPE」のみブラスの14”×5.5”を使用しました。
●シンバルのセレクト/セッティングは、カシオペア用に変更、調整したところはありますか?
今井 レコーディングのときは今まで物を使用しましたが、ライヴでは大幅にアップデートしました。ライヴ用に左側のシンバルが4、5枚増えましたし、各シンバル、A Zildjian系からK Zildjian系に変わったものが多いです。
●シンバル・スタンドの処理の仕方は、神保さんのセッティングを参考にしたところもあるのでしょうか?
今井 昔から参考にしまくっておりまして、そのまま今に続いている感じです。まさに参考どころか影響を受けまくっています(笑)。
リハーサルが終わったあとに、Yamahaの方に「大問題が起きた! 顔がまったく見えない!!」と言われまして。大幅にシンバルの位置を変えたという事件がありました。神保さんのセットは、見え方の部分でもとても計算されたセットなのですね。
●タムの打面ヘッドはアサプラのS2 BLACK以外にコーテッドのST-250Cも使ったそうですが、コーテッドはどの曲で使いましたか? それぞれのヘッドの特徴も併せて教えてください。
今井 コーテッドは、僕がレコーディングの日に大阪から直接入る日で、テックの方に「ケースに入ってるヘッドを張っておいてください」ってお願いしておいたら、コーテッドになっていたという経緯があるんです(笑)。僕はS2 BLACKを想定していたのに。でもこれから録る曲に合うかもしれないからこれで行こうということで使用したら大当たりでしたね。
「DAILY BREAD」はまさにST-250Cを使いましたね。それから「Vivaciously」と「FLY ME TO THE FUTURE」、そして「PURE HEART」です。S2 BLACKはマイクに乗ったとき、タムの欲しい成分がとてもいいバランスで録れるヘッド。それに対し、ST-250Cは太鼓の味の良さをそのまま出してくれるヘッドです、コッテリで旨味の効いた味噌ラーメンと出汁の味わいが深い塩ラーメンみたいな感じで、どちらもとても魅力的ですね。
●先日のブルーノート公演は2日間で4公演を行い、大盛況だったようですが、ライヴに臨む緊張感は他の現場と比べていかがでしたか?
今井 そりゃもう(笑)。緊張しまくりでした。平静を装っていましたが、本番が近づくにつれて口数が減っていく自分が逆に面白いくらいでした。特にテンポやタイム感、グルーヴについての責任は大分重く感じていましたね。
セッション・ライヴより原曲のエッセンスを大事にしつつ、でも同期現場のようにクリックを聴きながら演奏するわけにもいかない。自分の演奏スタンスによってそのときの演奏がまるで変わるというスリルはものすごくありました。
またファンのみなさんに受け入れていただけるかということももちろん不安でしたが、ある意味カシオペアの大ファンである自分自身を心から納得させられるパフォーマンスができるのかという、内側の戦いが大きかったですね。
1公演目が無事終わったら、鳴瀬さんや野呂さんが「とても良かった」と言ってくださったので、相当肩の荷が降りた気がしました。そこからの3公演はある意味緊張から解放されて思い切り楽しめた印象です。
●初日 2 公演目の様子を YouTube で少しだけ観ることができますが、画面越しに熱気が伝わってくるようなパワフルな叩きっぷりが印象的で、熱いプレイをクールにこなす神保さんとは対照的な、カシオペアに新しい風が吹き込まれたと感じます。CASIOPEA-P4のライヴにおける自分の振る舞い方、見せ方などについて、何か意識するところはあったりしますか?
今井 神保さんの代わりになろうなんて事自体おこがましいですからね。とても僕なんかに務まる役じゃない、だけどやらせていただけるなら全力で、という心持ちでスタートしましたから。
決して神保さんと同じプレイをすることはできないと心から受け入れた上で、僕なりの音楽性を反映させて、とにかく心を込めて思いっきり演奏させていただきました。僕の演奏は、よく周りのプレイヤーに「熱量がものすごく高いよね」とか「すごく連れていってもらえる」って言っていただけることが多いんです。
大人しく綺麗に収めることもできるんだけど、それでは僕である意味がない。僕にしかできない演奏って、その熱量と情熱とテクニックを全力で注ぎ込む演奏かなと思っているので、その内側からの衝動に対して躊躇しない、思いっきり出すといったところでしょうか。
あ、それと、僕が楽しそうに演奏している笑顔に元気をもらったって言ってくださるお客様もたくさんいらっしゃるので、誰よりも演奏を楽しむ、そしてその笑顔を思いっきり出していく、それも意識しています。僕自身、神保さんの笑顔で楽しむ姿にインスピレーションを受けて育ってきた身でもあるので。
●12月のツアーでは、ブルーノートで演奏されなかったアルバム後半曲や、過去曲の新たなレパートリーなども聴けることを期待しています。ツアーに向けての意気込みを聞かせてください。
今井 デビュー・ライヴで、僕のドラムをメンバーのみなさん、そしてファンの皆様にも体験というレベルで知っていただけたと思います。その上で、12月はさらに化学反応してパワー・アップしたP4サウンドを披露できるかと思いますので、僕のドラムももちろんですが、ぜひ、新しくなったカシオペア・サウンドを肌で体感しに来てください!!
CASIOPEA-P4/New GIG~P4
●12/11(日):東京・EX THEATER ROPPONGI
●12/23(金): 大阪 BIG CAT
●12/25(日)名古屋・ボトムライン
*ツアーの詳細はオフィシャルHPをチェック