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フィル・ラッドに代わってAC/DCのヨーロッパ・ツアーに参加するドラマー、マット・ローグとは?!

  • Photo:Kevin Mazur/Getty Images

いよいよ5月17日から8年ぶりとなるヨーロッパ・ツアーをスタートさせる最強のロック・バンド、AC/DC。今回のツアーはドイツからスタートし、イタリア・スペイン、オランダ、オーストリア、スイス、イギリス、スロヴァキア、ベルギー、フランス、アイルランドを3ヵ月かけて回るという内容で、ツアー発表直後に追加公演が決定するなど、スタート前からすでに話題を集めている。

ツアー・タイトルは「POWER UP Tour EUROPE 2024」となっており、2020年にリリースされた『POWER UP』を冠したもの。同作ではバンドを離脱していたヴォーカルのブライアン・ジョーンズ、ベースのクリフ・ウィリアムズ、そしてドラムのフィル・ラッドが再び集結。唯一無二なギター・リフを核に展開される、これぞAC/DCという圧巻のバンド・サウンドが貫かれた傑作となった。

しかし残念ながら今回のツアーにはクリフとフィルの2人は不参加となっており、ベースにはジェーンズ・アディクションのメンバーで、日本ではB’zのレコーディングなどでも知られるクリス・チェイニーが、ドラムには昨年10月にAC/DCが出演した音楽フェス=「POWER TRIP」でもサポートを務めたマット・ログが参加することがアナウンスされている。ここでは気になるドラムのマット・ローグのキャリアを探ってみたい。

マットは1968年生まれで現在56歳。出身はアメリカのサウスカロライナ州。幼少の頃からドラムを始め、高校卒業後にロサンゼルスに移住し、セッション・ドラマーとしてのキャリアをスタートさせた。彼の活動の中で最も有名なものは、1995年に発表され、3000万枚を超えるメガ・ヒットを記録したアラニス・モリセットの『Jagged Little Pill』への参加で、シングル・カットされた「You Oughta Know」を含む6曲でプレイしている。

その後はアリス・クーパー、スラッシュ・スネイクピットといったロック・レジェンドや、クリスティーナ・アギレラ、アナスタシアなどの女性シンガーのレコーディングに参加。数多くのプロデューサーと仕事を重ねてきたそうで、テレビや映画のサウンドトラックにも数多くクレジットされている。

ツアー・ドラマーとしてのキャリアも豊富で、イタリアのロック・スター=ヴァスコ・ロッシのサポートを長年に渡って務めており、2017年には20万人を超えるオーディエンスの前でプレイした経験もあるという。

パーマネントな活動では、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのメンバーであるマイク・キャンベルのプロジェクト=マイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズの一員として、ライヴ/レコーディングで活躍。近年はカリフォルニアに居を構えるレコーディング・スタジオ=スタジオ・シティ・サウンドのオーナー兼エンジニアのトム・ウィアーとタッグを組み、オンライン・レコーディングにも力を注いでいるとのこと。

経験値が高く、大舞台に慣れていることも抜擢の理由だろうが、実は2001年に行われた”Stiff Upper Lip”ツアーのオープニング・アクトをスラッシュ・スネイクピットが務めており、AC/DCとは20年以上前から縁があったようだ。

また、フィルがバンドを離れていた時代に2度に渡ってその屋台骨を支えたクリス・スレイドもマットのことを知っているようで、昨年POWER TRIPへ出演することになった彼について、SNSで「I know Matt as a very nice guy from my days of living in California. He is a very capable, teetotal drummer and will put the drums exactly where Angus wants them…… At the back of the stage. I wish him the best of luck!」と投稿している(こちら)。

一回り若い、新しいリズム体を迎えて、世界屈指のライヴ・バンドであるAC/DCは、果たしてどのようなパフォーマンスを繰り広げてくれるのだろうか。