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たたきびと ♯4 理想のスティックと出会うまで
- Photo:Takashi Yashima Special Thanks:CANOPUS
2014〜16年にお届けした玉田豊夢と朝倉真司による連載セミナー=“たたきびと”をドラマガWebに転載! 打楽器の魅力、楽しさを伝えることを主軸に置いており、ドラム&パーカッションを初めてみようという方に最適な内容です。第四回目となる今回は、ドラマーの身体の一部とも言えるスティックがテーマ。2人が現在のスティックに辿り着くまでの変遷と、“スティック観”について語り合います。
これからドラムを始めてみたいという方は「ビギナーお助け記事まとめ」をチェック!
スティックを持っていること自体
自分にとっては不自由
スティックに合わせようとしているというか
叩きやすさよりは
音のことを考えているかもしれない (朝倉)
自分のシグネチャー・モデルだけで
ぶっといロックだろうが
爽やかなポップスだろうが
何の違和感もなく解決できている
使うスティックが決まってから
自分の中で感覚が変わってきた (玉田)
●セミナーも4回目ということで、そろそろスティックに触ってみたいという人も多いかと思います。ちなみにお二人が初めて手に入れたスティックは何でした?
玉田 僕はパールの110Hですね。地元のすごく小さい楽器店だったので、種類もほんの少ししかなくて。選択肢があまりなかったんです。
朝倉 私はパールのポンタさんモデル。地元の楽器店で買ったんですけど、豊夢君と同じで選択肢がなくて、4種類くらいしかなかった(笑)。
玉田 (笑)。ポンタさんのモデルと110Hはどこの楽器店にも置いてありますよね。そういう感じで置いてある種類が限られている人はあまり悩まずに選べると思うんですけど、主要都市に住んでいる人は、お店にいっぱい種類があると思うので迷いますよね。
●実際に悩んでいる人もいるかと思いますが、そういった人にアドバイスをするならば?
玉田 まずは自分の好きなドラマーが使っているモデルを触ってみるのがいいと思いますね。それを握ったときに、例えば“何だか重いな”と思ったら、似た形のスティックで、それより軽いのを見つけるとか。ただ、それも大変だと思うので、店員さんに相談するのもアリだと思います。
●今、玉田さんは自身のシグネチャー・モデルと、朝倉さんはカースケさんのシグネチャー・モデルをメインで使っていますが、そこに辿り着くまでにはやはり試行錯誤があったんでしょうか?
朝倉 私はポンタさんのモデルから始まって、その後は本当にいろいろと迷いました。あまりにいろんなモデルを試しすぎて覚えてないくらい。当時はスティック・バッグの中にいろんなモデルが入っていて、“こんなの止めたい”ってずっと思ってました。落ち着いたのは、ヴィック・ファースのチャーリー・ワッツ・モデルに出会ってからですね。
その後、カースケさんが(カノウプスで)自分のスティックを作ったときに1組いただいて、それがチャーリー・ワッツのスティックとよく似た感じで違和感なくて、木自体も詰まっている感じで印象が良かったんです。それからはレコーディングもライヴも、ドラムを叩くときは基本的にカースケさんのモデルですね。僕は今はほとんどの場合片方を逆に持って叩くので、太いスティックの方がしっくりクるんです。
玉田 僕もスティックに関しては、明日まで話し続けられるくらい悩みましたね(笑)。太さも、形も、振りやすさも、スティックってちょっとしたことで感触が変わるじゃないですか? “これがいい”と思っても、少し使ったらまた新たな欲が出てきたりして。お店に置いてあるすべての種類を振ってみないと気が済まないっていう時期もありました(笑)。
基本的に、振り回しやすくて、パワーがちゃんと出るもの、というイメージはあって、それを追い求めるんですけど、振り回しやすかったらちょっと軽かったり、重心が後ろだったり。“あっちが良ければ、こっちがちょっと……”という感じが20年くらい続きました(笑)。
そうやって悩み続けて、何年か前に今のシグネチャー・モデルの形……“右は普通の形なんだけど、左はロック・ノッカー”というスタイルに辿り着いたんです。あれだけ悩んでいたのに、今は自分のモデルしか使わなくなりました。振り返ってみると、スティック選びが一番大変だったかもしれないです。木でできているので、同じモデルなのに鳴り方が違いますし。やっぱりスティックって楽器なんですよね。
●朝倉さんはパーカッションもやるので、スティックに対する感覚が、いわゆるドラマーとは違うように思うのですが、いかがですか?
朝倉 スティックを持っていること自体、私にとっては不自由な感じなので、やることがシンプルになりますね。スティックを持ったときは、スティックに合わせようとしているというか。
私は、泡立て器とかでドラムを叩くこともあるんですけど、フィルターをかけたような音になるんです。全然鳴らない。響きが広がらないので、皮全体が鳴らなくて、叩いた部分だけが小鳴りする感じ。そういうのもありだと思っているので、叩きやすさよりは、音のことを考えているかもしれない。
●玉田さんもシグネチャー・モデルを作るときに、音のことは考えたんですか?
玉田 そうですね。ただ、何だかんだ言っても慣れってすごく大きいと思うんです。最初扱いづらいなと思っても、そのスティックなりの鳴らし方がわかってくるじゃないですか?
前だったら、例えばすごく繊細なボサノヴァをやるときに、“メイプルでチップの小さいスティックでやろう”とか、そういう気持ちがあったんですけど、最近はそういうことにこだわらなくなってきたというか。このスティックだけで、ぶっといロックだろうが、爽やかなポップスだろうが、何の違和感もなく解決できているので。使うスティックが決まってからは、自分の中で感覚が変わってきている感じはありますね。
愛用のスティックとケースの中身をチェック!
試行錯誤を経て、現在愛用するスティックに辿り着いた玉田と朝倉。ここでは、そのこだわりのスティックを拝見。さらに普段使っているスティック・ケースの中身を見せてもらった。スティック&ケースから、それぞれのスタイルが見えてくるだろう。
玉田’s Stick & Stick Case
朝倉’s Stick & Stick Case
※本記事は2014年11月号の連載セミナーを転載した内容となります。
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