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“ドラムの材”が丸わかり!スネア材質図鑑 -木材編- その1
- Text:Kazuaki Yokoyama、Takuya Yamamoto、Rhythm & Drums Magazine
Ash -アッシュ-
軽く乾いた感触がありつつも
色気を含んだ温かさを感じる
ソリッド・ボディのエレクトリック・ギターや、ベースの材として有名。打楽器ではコンガのシェル材としてファイバーと人気を二分する定番材で、例に漏れず北米産です。
ドラムへの利用の歴史はそれほど長くない材ですが、ステイヴ、プライ、ソリッドとさまざまな形で利用されています。メイプルのような明るさと、バーチのような短いディケイが同居しており、軽く乾いた感触がありつつも、色気を含んだ温かさを感じます。
はっきりした導管があり、ドラムの仕上げにおいて注目されるエッジ頂点の滑らかさを出すことが難しいようですが、仕様に応じてシェル材を選択するという観点で、メイプルやバーチといった加工のしやすさと供給が安定している材が存在していることを踏まえると、アッシュ・シェルで鋭いエッジを出す必要があるとは思いません。プレイヤーとして、この魅力的な材の楽器を用いる場合、あまりこだわりすぎる必要はないでしょう。
Jarrah -ジャラ-
素早いレスポンス、明確なアタック、太い中低域
オーストラリアの材。採用しているのは現地のブレイディやエヴェッツ・ドラムスといった限られたメーカーですが、良質な楽器が作られています。育成環境の違いなどに由来するのか、樹木の個体ごとの差が大きいようで、水に沈む比重が1以上のものから、ポプラやスプルースに並ぶ0.4台のものまで幅がありますが、ドラムに使用されるものは総じて比重が高めの材という印象があります。
硬く重たい木を使った楽器に共通する、素早いレスポンス、明確なアタック、太い中低域はこのジャラにおいても感じられます。ブロック・シェルは強力な音ヌケと遠達性、プライ・シェルは輪郭がハッキリした太い音色と、製造方法によって異なる表情もその魅力と言えるでしょう。
材の特殊性ゆえ、現地メーカー以外で採用されることは皆無といってよい状況であり、前述の2社の楽器も日本国内での流通量が大幅に減少していることから、今後はお目にかかる機会が減っていくと思われます。
Spruce -スプルース-
明るく適度に伸びやかで
甘く柔らかく軽やかな音色
古くからアコースティック弦楽器の表板に使われ、楽器の材としては馴染み深いものです。弾力性に優れ、木目は緻密。ドラムに使った場合は明るく適度に伸びやかで、甘く柔らかく軽やかな音色。ボワンッという低域の膨らみ方が特徴的です。アコースティック・ギターの響きをイメージするとわかりやすいと思います。
ただし、音色の通り非常に軽く柔らかい材なので、他の硬質かつ伝統的な材と同じ感覚で使うと、ラグ周りなどにトラブルが生じる可能性があり、要注意。トーンの甘さはなかなかに魅力的なので、うまくつき合えば唯一無二のサウンドになるかもしれません。
後編となる<その2>はこちら