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“ドラムの材”が丸わかり!スネア材質図鑑 -木材編- その1

  • Text:Kazuaki Yokoyama、Takuya Yamamoto、Rhythm & Drums Magazine

Beech -ビーチ-

あまり膨らまず縦にヌケてくるスマートなトーン

ヨーロッパではスタンダードな材の 1 つで、ドラムにおいてはソナーやNEGIなどが古くから使用してきました。重く硬く、ネバりもあり、木目は緻密。表面の仕上げも美しく仕上がります。


SONOR Vintage Series
ソナー創業140周年に発表されたヴィンテージ・シリーズ。伝統のビーチ・シェルとパーツのバランスなのか、塊感のあるソナーらしさとヴィンテージ感溢れる優しい音が同居するかのよう。

メイプルに比べると中域が豊かで、バーチより伸びがあり、華やか過ぎず沈み過ぎず、中庸な印象。あまり膨らまず縦にヌケてくる、スマートなトーンです。ドラム・セットの文化的に、アメリカで豊富なメイプルが主流になっただけで、ドラムの素材としては理想的なものの1つのように感じます。

かつてはYamahaなどもビーチ材を使ったシリーズを出していましたが、採用するメーカーがもっと多ければ、よりポピュラーな材として認知された可能性があるかもしれません。

Bubinga -ブビンガ-

見た目と重量感を裏切らない
ダークでパワフルなキャラクター

アフリカ産の硬く重たい木材です。ドラムによく用いられる木材の比重は、概ね0.6から0.7の範囲が中心ですが、ブビンガは0.8から0.9台後半とされており、数値からもその重硬さがうかがい知れます。

肝腎のサウンドは、その見た目と重量感を裏切らない、ダークでパワフルなキャラクターです。硬さから生まれる高域、豊富な油分によるリッチな中低域、重量ゆえのロスの少なさから生まれる繊細なヘッドとスナッピーの反応は、シェル材の重要性を実感させてくれます。

TAMA STAR Bubinga
ブビンガ4プライにコルディアの化粧板が美しいこのモデルは、ダークな芯にガシっとした低音が秀逸。

楽器として成立した経緯ゆえに、ドラムに用いられる木材はアメリカに自生しているものがその主役となっていますが、限りある資源を使用せざるを得ない宿命にあるドラムにおいて、アフリカの大地から生まれた木材から、素晴らしいサウンドが生まれることは、未来の可能性を感じますが、ワシントン条約による規制の対象となっている樹種であり、今後広まる可能性は高いとは言えないでしょう。

国産メーカーでレギュラー・モデルとして製品化されているので、このサウンドに魅力を感じる方は、今のうちに手に入れておいた方が良いのかもしれません。

Walnut -ウォルナット-

硬めのタッチで温かさと歯切れの良さが共存

家具で有名な北米の木材です。感触は硬めで、マホガニーよりはメイプルやバーチ、ビーチなどに似ています。アッシュのような軽さも感じますが、高域のディケイはメイプルと同程度に長め、中低域は豊かながらキレが良く、温かさと歯切れの良さが共存しています。

TAMA STAR Walnut
材の個性が発揮されたファットな中低域が印象的。プライ・シェルでは中域が強調された膨らみのあるトーン、ステイヴ・シェルではプライに比べてやや高めの位置に移動した中域の成分と、短く収まるサステインが抜群のバランス。

メイプルで強く感じる、高域で膨らむ成分がやや低めの位置に存在しており、硬さのわりにダークさがありますが、マホガニーのようなマイルドな音像ではなく、ビーチのような粘りのある中域を持った材とも異なり、ウォルナット特有のサウンドが存在しています。比較的高価な材であるせいか、ロンゴやブラック・スワンプ・パーカッション、クラヴィオット、カノウプスなどのソリッド・シェルや限定モデルとして目にする機会が多い印象ですが、TAMAのハイエンドであるSTARシリーズではレギュラー・ラインナップされています。