NOTES
UP
“ドラムの材”が丸わかり!スネア材質図鑑 -木材編- その1
- Text:Kazuaki Yokoyama、Takuya Yamamoto、Rhythm & Drums Magazine
Maple -メイプル-
現代のドラムにおける事実上のスタンダード
特にアメリカのドラムにおいて長い歴史を持ち、現代のドラムにおける事実上のスタンダードと言えるでしょう。木材の中では比較的明るい音色で、低域から高域まで豊かな倍音が感じられます。基本的には、ウッド・シェルらしい温かみがあり、滑らかでしっとりとした質感ですが、高音域の伸びやかさに特徴があり、エッジの形状などの仕様や個体によっては、ブラス・シェルに匹敵する華やかさを感じるものも存在します。くっきりした輪郭を感じさせながらも、程良いディケイの長さがあるため、細かいフレーズを滑らかに表現できるタイプです。
硬さと重さのバランスもドラムにとって理想的なものの 1 つで、さまざまなメーカーで利用されており、薄い〜厚いシェルまで、たくさんの楽器が作られています。明るい色味で木目が細かく、さまざまなフィニッシュが可能なこともあり、他の材をメイプルで挟んで合板とするケースも多く見られます。
Birch -バーチ-
短いディケイ、タイトな中低域、
パンチのあるアタック
主にヨーロッパと日本で使われてきた木材で、メイプルに次いでポピュラーなものと言えるでしょう。産地の違いや、楽器になった際の仕様の差によって、その印象はさまざまですが、総じて短いディケイが特徴的で、タイトな中低域や、パンチのあるアタック、キレの良いサウンドがフィーチャーされる傾向にあります。メイプルと比べると打点がハッキリしており、細かなフレーズの一打一打をしっかり聴かせるタイプが多い印象です。
北海道産のカバ材を用いたYamaha YD-9000の成功以来、スタジオにおいて根強い人気がある他、北米で良質なバーチ材が採れることもあり、メイプルが主力だったアメリカのメーカーでも採用されています。
Mahogany -マホガニー-
甘く柔らかい、ダークでファットなトーン
アメリカの楽器で用いられてきたホンジュラス・マホガニーが代表的ですが、アジアで植林されたビッグリーフ・マホガニーや、アフリカで採れる別種の総称であるアフリカン・マホガニーなど、マホガニーとされる代替材が非常に多い木材です。
美しい木目を生かした、プライ・シェルのアウターやインナーとしての採用が中心であり、単体で用いられることは決して多いとは言えないので、組み合わされる他の材との兼ね合いもありますが、甘く柔らかい、ダークでファットなトーンが特徴です。分離の良さ、ヌケの良さはメイプルなどのより硬質な材の強みとも言えますが、対するマホガニーは耳あたりが良く、アンサンブルに溶け込みやすい音色です。
やや本題から逸れますが、60年〜70年代のラディックは、インナーがメイプルのものとマホガニーのものが混在しているので、これらを叩き比べる機会があれば、木材ごとの傾向を掴むヒントになるかもしれません。