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    マックス・ローチ−Modern Jazz Drummingの開拓者−

    ファンキーさと理路整然とした部分
    その両面を持ち合わせたドラマーだった

    ローチのセットは初期がグレッチで、18″や20″のバス・ドラムのイメージが強かったりもしますが、意外と後期のラディックやヤマハのセットは大きいんですよね。バス・ドラムの口径が22″で、1タムから12″と13″の2タムになったりしていて。今は一般的に“ジャズ=小さいバス・ドラム”っていうイメージがありますけど、これはやっぱりエルヴィンやトニー・ウィリアムスの影響がとても大きいんでしょうね。ちなみに当時はバス・ドラムの口径が18″だと、アメ車のトランクにも入ったんですよね。(トランクの)外からバス・ドラムがはみ出てタイコが見えていると盗まれてしまうし、ハードウェアやシンバルもまとめてトランクに入るから、そういうことも含めて、段々とバス・ドラムのサイズが小さくなった/点数が少なくなったとも言われています。もちろんそれ以外にもさまざまな理由があったのだと思いますが。

    マックス・ローチのオススメ作品を紹介するとしたら、やっぱり一番有名なソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』とローチのソロ作品である『Drums Unlimited』は鉄板ですね。特に『サキソフォン・コロッサス』は中学生の頃からよく聴いていました。それからもう1つ、『サキソフォン〜』と『Drums Unlimited』以外で、僕がとても衝撃を受けたアルバムは、クリフォード・ブラウンとの『スタディ・イン・ブラウン』。確かその当時『スタディ・イン・スカーレット』という小説が流行っていたから、それをモジッたんだと思います。この作品を初めて聴いたのは高校生くらいでしたけど、当時はもちろんYouTubeやApple Musicなんてないですから、レコードを買いました。相当聴き込みましたよ。

    『スタディ・イン・ブラウン』を録音した当時、23〜24歳だったクリフォード・ブラウンは、アート・ブレイキーのライヴ・アルバム『バードランドの夜 Vol.1』でも演奏していて、最初には前口上みたいなMCがあるんですけど、司会の人が「トランペット・センセーション、クリフォード・ブラウン!」と彼を紹介していて。でも彼はその年の25歳で惜しくも交通事故で亡くなるんですけど、当時のトランペット界において、こんなに巧い人はいませんでしたから、まさにセンセーションだったと思います。……話を戻すと、『スタディ・イン・ブラウン』は変拍子、5拍子のセクションが出てきたりするんですけど、バンド・メンバーも素晴らしいから、とてもクリアにアンサンブルされていて、マックス・ローチのプレイはもちろんファンキー。素晴らしいんですよね。そのファンキーさと理路整然とした部分との両面を持ち合わせたドラマーだったと思います。

    ※本記事は2017年11月号掲載の内容を転載したものです。

    Recommend Albums

    『SAXOPHONE COLOSSUS』
    Sonny Rollins
    (1956年発表)
    『Drums Unlimited』
    Max Roach
    (1966年発表)
    『STUDY IN BROWN』
    Clifford Brown & Max Roach
    (1955年発表)