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【2003年11月号特集『3連〜最大の弱点はこれで攻略?〜』より】 <Part.1> 3連苦手を克服するために
- 講師:山本雄一(RCCドラムスクール)
第4章
3にまつわる必須=“ハネ”を練習する!
シャッフル・ビートがうまく叩けない
“シャッフルは楽しい!”
という前向きな心を持つ!
“シャッフルは難しいぞ~”と周りにおどかされ、実際に叩いても散々“ヘタ”呼ばわりされて(実際とてつもなくヘタでしたが……)、いつしか“シャッフル恐怖症”のように筆者はなっていました。
そんな私がボズ・スキャッグスのナンバー「リド・シャッフル」(『シルク・ディグリーズ』収録)という曲を叩く必要に迫られたときがあり、“あ~、やばいな一”とお約束のようにビクビクしていたのですが……、音源に合わせて練習したら、これがなんと楽しいことか!
そしてこれまでの“うまくハネなくては……”という強迫観念がなくなり、“カッコ良くハネたい!”という願望に満たされました。
かといって突然うまくなるわけではありませんでしたが、気の持ち方ひとつでシャッフルが楽しくなったのはまざれもない事実です! 「リド・シャッフル」を叩いていたジェフ・ポーカロに感謝!
左手の瞬発力が必要不可欠!
シャッフルがうまくハネられないのは、シャッフルの曲を聴いたり、また演奏したりという絶対経験が少ない場合、ある程度は仕方ないことだと思います。
しかし、“いつになってもうまくできない!”という場合は、肉体的な瞬発力の弱さが原因になっている場合もあるでしょう。
特に“左手”。最初に書いた“バック・スイング”を意識すると、Ex‐9のフレーズを叩くためには、左手は1&3拍目のウラで振りかぶることになります。つまリギリギリのタイミングまで振り上げず、右手が2&4拍目に差しかかるのと同じタイミングで瞬間的に動かすスピードが求められるのです。
しかも音量が欲しい場面なので、ある程度のストローク幅も必要です。こういった点を強く意識した上で、練習をしてみると、きっと自分自身に足りない部分が見えてくるでしょう。
では、この左手強化のために、次のような練習をしてみましょう。
Ex‐10a:下の写真5のように右手のスティックを上に構え、1&3拍目のウラにスティック同士がぶつかるバック・スイングのタイミングを作りつつ2&4拍を叩く。左手は動く瞬間こそ瞬発力を要するが、それ以外の部分ではリラックスした柔らかいイメージで待機。
Ex‐10b:オーソドックスな両手打ちのシャッフル。何だかんだと言って、最も難しいこのスタイルを徹底的に練習する。このパターンが無理なく叩ければ、左手の瞬発力は十分に鍛えられ、身体全体のバランスもレベル・アップするはず。
ハネる16分音符系
ここまでの“3連”というイメージからは少し遠ざかりますが、ハネもの系の16ビート・スタイルも、現代では必須項目でしょう。
根本的にはとても難しいノリですが、 ドラム教室に来ている生徒達と接していると、面白い現象が1つ……。それは小~中学生あたりの、“ハネる”とか“ハネない”という意識があまり強くない世代の子達が、妙にノリ良く叩けてしまうことです。
これは普段、彼らが耳にするポップスに、ハネた16分系もたくさんあるということが大きな要因でしょう。要するに“普段から聴いていること”、かつ“楽しんで聴いていること”が、このスタイルのドラミングを身につける上で最も効果的な練習法のように思えます。
ハネた16分音符を感じさせる8ビートを叩こう
ちょっとわかりにくいコーナー・タイトルですが、これは第1章の“3連フィーリングの4分音符を叩く”というのと同じ系統の内容です。
ハネる16分系を実際に叩く前に、ハネを感じさせる8ビートを叩けるようになることも大切な土台作りなのです。
Ex‐11を見てください。この8ビートだけではハネる要素はありませんね。しかし、ハネた16分の存在を背後に感じつつ叩けば、これが不思議なことにハネて(ハネたように?)聴こえてきます。
その1つのポイントとなるのがやはりバック・スイングのタイミング。普通の8ビートがEx‐12aのようなバック・スイングとの関係になるのに対し、ハネるグルーヴではEx‐12bのような関係になります。
簡単に言えば、ハネる方はバック・スイングのタイミングが遅くなるわけです。この現象をシッカリ意識した上で、簡単に叩けるであろうEx‐12をとことん練習する!
これが、ハネた16分系を上達させる上での第一歩だと思ってください。
具体的な練習法としては、ゴキゲンなハネ系ナンバーに合わせて、バック・スイングを意識しながらEx‐11を叩くのがお勧め。みなさん自身で好きな曲があれば、それが一番ですが、もしも見当のつかない人のために筆者の個人的趣味で紹介しておくと……
スロー・テンポ:スティーリー・ダン「安らぎの家」(d:バーナード・パーディ)
ミディアム・テンポ:ボズ・スキャッグス「ジョジョ」(d:ジェフ・ポーカロ)
アップ・テンポ:スティーヴィー・ワンダー「サー・デューク」(d:スティーヴィー・ワンダー)
……この3曲は最高の練習素材、かつドラマーなら知ておくべき曲ですので、ぜひ一度聴いてみてください。
最後に……
今回は“3連系が苦手だから3連フレーズを練習する”という内容よりも一歩基本に戻ったレベルからいろいろと考えてきました。
最終的には数多くの3連系ナンバーを聴く、練習する、そして人前で演奏するということが、上達への唯一の道だと思いますが……。
その過程の中で今回の内容を1つのヒントとして役立てていただければと思います。