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【Rest In Peace】アフロ・ビートの創始者、トニー・アレン逝く
- Photo:Hiroto Fujimoto
アフリカ音楽の英雄=フェラ・クティと共にアフロ・ビートを創り上げたドラマー、トニー・アレンが去る4月30日に急逝。享年79歳であった。
トニー・アレンは1940年生まれ。ナイジェリアの西部に位置するラゴス出身で、18歳の頃にドラム・セットの原型である“トラップ・ドラム”を叩き始め、その後独学でドラムを学んだという。プロとしてのキャリアは60年頃からスタートさせ、60年代中旬にフェラ・クティと出会い、70年にバンド“アフリカ70”を結成。79年に脱退するまで、バンド・リーダーとしてフェラと共に活動を続け、独特の躍動感を持つ“アフロ・ビート”で世界中のアーティストに大きな影響を与えた。
そのアフロ・ビートの成り立ちについて、本人は2013年7月号の本誌インタビューで「僕達が(自分達がやっている音楽を)アフロ・ビートと名づけたんだ。ハイライフ・ジャズ(ガーナ発祥と言われるアフリカの大衆的な音楽)から発展したジャンルで、ハイライフのトラディショナルなリズムに、その他いろんなリズムをミックスをしていった。だからいろんなものをミックスしたものがアフロ・ビートだと言えるね」と語っている。
フェラと袂を分かれたトニー・アレンは、アフロ・メッセンジャーズというバンドを結成。80年代からはロンドン〜パリへと活動拠点を移し、さまざまなセッションに参加。その活動は衰えることを知らず、ソロ名義で数々の作品を残す傍ら、ブラーのデーモン・アルバーンらと共にバンド、Rocketjuice and The Moonを結成するなど、2000年代に入ってさらに活発化。朝霧JAMやFuji Rockなどのフェスで来日も果たしている。
近年もアート・ブレイキーに捧げたEP『A Tribute To Art Blakey And The Jazz Messengers』の発表や、テクノ・シーンのレジェンド=ジェフ・ミルズとのコラボ、さらにソロ・アルバム『The Source』をジャズの名門、ブルーノート・レーベルからリリースするなど、常に話題を提供し続けてきた。昨年1月の来日公演も記憶に新しく、それだけに今回の訃報に驚いた人も多かったのではないだろうか。
最後にトニーを敬愛するドラマーの芳垣安洋氏よりいただいたコメントを掲載。
昨年ステージを見たときには「まだまだ現役、いつまで叩き続けられるのだろう。」なんて思ったのだけれど。突然の訃報に言葉が見つかりません。40年くらい前に、フェラ・クティのバンドのアルバムを聴いてからずっと、私のドラム・ヒーローの1人でした。最後まで自分のリズムと自分のスタイルを貫き通しながら、アフロ・ビートのみならずジャズ、ロック、ニュー・ウェイヴを股に掛け、60代になってからイギリスのポップス界のスターとバンドを組んだり。何て凄い人だったのでしょう。あらためて、彼のクリニックやインタビューを扱った映像をいくつか見てみたのですが、その力の抜けたスムースな動きから作り出されるビッグ・ビートとビッグ・サウンド(音量ってことじゃないですよ)にあらためて驚かされました。キックもスネアもハイハットも、どれもがその楽器の最も低いレンジの響きを音の芯の周りに絡ませているように聴こえてきます。足で踏むハイハットの刻みとオープン・クローズの音切りはこの人だけのものです。
なお、6月16日発売のリズム&ドラム・マガジンにて、トニー・アレンの追悼企画を予定。心よりご冥福をお祈りいたします。