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    ステージの新定番! 格段に進化したRoland SPD-SX PROの”実力” feat. 堀 正輝 & 江島啓一[サカナクション]

    • Text:Isao Nishimoto/Photo:Takashi Yashima

    Roland SPD-SX PRO meets 堀 正輝 & 江島啓一[サカナクション]

    続いてはSPD-SXのディープ・ユーザーであり、すでにSPD-SX PROを所有している堀 正輝と江島啓一によるクロス・レビューをお届けしていこう。ライヴの現場で、さまざまな使い方をしている2人に、”プロの視点”からSPD-SX PROの進化について語り合ってもらった!

    細かいところが改善されて、音云々以前に
    プレイヤーとして演奏に集中できる……江島

    ●お二人はすでにSPD-SX PROを試し済みということですが、あらためて第一印象をそれぞれ教えていただけますでしょうか?

    江島 パッと見た時点で、現場で使っているプロの意見が反映されていることがわかりましたね。アウトが増えたことやツマミが扱いやすくなったこと、ディスプレイが見やすくなったこと……僕自身がこうだったら良いなと思っていたことが、改善されているのがすぐにわかったので、いろんな人から言われていたんだろうなって。

     設定がとにかく細かくなったなと思いました。使っていく中で、いろんな人がいろんなことを考えると思うんですけど、ほとんどのことが設定で解決できるくらい、細かい調整ができるようになっていますね。

    ●試奏のときに、「こういうことはできるんですか?」という質問をいくつかローランドの方にされていましたけど、ほぼ設定で解決していましたよね。

     SPD-SXは設定に限界があったので、例えば“これをやろう”っていうときに、“この機能とこの機能を組み合わせればできるかな”っていう裏技的な方法で解決していたんですけど、SPD-SX PROは設定で解決できるし、裏技的なこともさらにできるようになっているんだろうな、と。

    ●パッドの反応はもちろん、内蔵音源も一から設計を見直されたということですが、演奏性やサウンド面についてはどんな印象を受けましたか?

     まずボリュームが大きくなっていますね。比較してみるとけっこう差を感じたので、ダイナミクス幅がつけやすくなったように思います。よりその人の好みに合わせられるようになった気がしますね。SPD-SXでは“Dynamic Switch”をオンで使ったことがほとんどないんです。SPD-SXのパッドだとスムーズにダイナミクスを感じるのが難しくて。オンにしたいときは、感度の良いVドラムのパッドを使っていたんですけど、SPD-SX PROくらい感度が良いと、このパッドだけで完結させることもできそうですね。

    江島 (SPD-SXは)叩いたときの強さと、出てくる音のベロシティの強さがそこまでリンクしてなかった印象は確かにありましたね。叩き心地という点では、SPD-SXもSPD-SX PROもそんなに変わらなかったんですけど、センスの部分で言えば、感度がめちゃめちゃ上がったなと思いました。特にショルダー部分のパッドはかなり変わったと思います。

     ショルダー部分のパッドに感じていた若干のレーテンシーが改善されていたね。あとは発音される面積も広くなったように思います。何ミリというレベルなんですけど、その差は大きいですね。

    江島 そう。単純にミス・ショットが少なくなるからね。

    ●江島さんは実際に叩いてみてどんなことを感じましたか?

    江島 音質については現場で使ってみないと何とも言えないんですけど、とにかく現場仕様になったなという印象です。

    ●シンプルに使いやすいユーザー・インターフェースですよね。

    江島 手に入れてから1回も説明書読んでないんですけど、何となく使い方はわかってきましたね(笑)。でもそれって大事な要素だと思うんです。こういうことをやりたいっていうアイディアが浮かんだときに、直感的に操作できるのは現場ではありがたいですよね。

    あとはディスプレイ上で確認できることが圧倒的に増えて、今入っているサンプルが一目でわかるのも便利ですね。どこに何を入れていたかっていうのは、意外と忘れるんですよ(笑)。

     正直、本番中も賭けに出るときあるよね(笑)。

    江島 クラップどっちのパッドに入れてたっけ、みたいな(笑)。ライヴ中は音出しして確認できないじゃないですか。かと言ってメニュー押して潜って潜って“このパッドだったんだ”って確認するのも微妙だなと思っていたんですけど、SPD-SX PROではそういう必要がなくなりました。

    ●キットの音色の切り替えも速くなりましたよね?

    江島 かなり速いです。

     確かに速いかも。あんまり気にしてなかった。

    江島 こういう細かいところの改善は、音云々以前に、プレイヤーとして演奏に集中することができるのでありがたいですね。

    1つのパッドで2つのレイヤー(サンプル)が鳴らせるPLAY TYPE設定画面。2つのレイヤーを同時に鳴らす(MIX)、交互に鳴らす(ALTERNATE)、叩く強さに応じて徐々に音量比率を変化させる(Fade/XFade)、叩く強さで切り替える(SWITCH)などの設定ができる。
    各パッドの2つのレイヤーごとに搭載された4バンドEQにより音質調整が視覚的に行える。各レイヤーのスイッチや各EQのスイッチを使うことで、EQの効果を確認しながらエディットができる。

    ●そもそもお二人は普段どういう用途でSPD-SXを使っていたんですか?

    江島 エレクトロニック系のドラムの音を出したいときと、曲間で無音にしたくないところで音を途切れさせないために使っています。拍手がどれぐらい長くなるかわからないときって、マニピュレーターが1回シーケンスを止めて、お客さんの拍手の具合いを見て、次の曲をポン出しするんですけど、その間も音途切れさせたくないので、場つなぎとしてのシーケンス的な使い方ですね。環境音とかを流しておいて、次の曲が始まる瞬間にその環境音を止めてっていう。その曲間をフレキシブルにするには、マニピュレーターだとちょっと難しいけど、こっちだとできるんですよ。

     僕の場合、ほとんどの現場でシーケンスの音が流れているんですけど、シーケンスと他の楽器の生音をできるだけ分離させたくなくて。その隙間を埋めるためにSPD-SXを使っているんです。生ドラムの音とシーケンスで鳴っている音、SPD-SXで鳴らす音、この3つをどれがどう鳴っているのかわからなくするっていうために使っています。もちろん単純に入れている音を鳴らすために叩くこともありますけど、メインはトリガーとして使っている感じです。

    これだけ機能があればエフェクトで音を作って
    その曲っぽい感じをすぐに用意できる……堀

    ●これまでの内容と少し重複するかもしれませんが、SPD-SXを長年使い続けてきた2人が “こうだったらもっといいな”と思っていたことが、SPD-SX PROで解消されていると感じた点を教えてください。

    江島 まず第一にDIRECT OUTの数ですね。特にキックは会場が大きければ大きいほど、鳴り方が変わってくるので、PAさんに個別で調整してもらえるように、低域が多いものはやっぱりバラバラで出したい。SPD-SXもSUB OUTで、できなくはなかったんですけど、使い勝手という点で、SPD-SX PROの方が楽ですね。

    あとは(パッド)個別にEQが調整できるとか、アタックを弱めたり短くしたりっていうことがけっこうサクッとできる。例えば、現場だとPAさんから「キックの音、ちょっとだけ短くしてくれない?」っていうリクエストがけっこうあるんですよ。SPD-SXはそれをやるために、1回パソコンに戻って、音を作り直さなければいけなかったんですけど、僕らの場合、リハーサルでそんなことをやってる余裕がなくて。SPD-SX PROはそれが簡単にできて、しかもDIRECT OUTに出せるっていう。本体だけで完結できることが増えたのは、大きなポイントだと思います。

    各パッドのアウトプット出力先(MASTER OUT、DIRECT OUT 1~4)、もしくは各パッドのマルチ・エフェクト(MFX1~4)への接続先を視覚的に確認しながら設定が行える。
    パッド演奏時の音量をレベルメーターで表示することで、キットや各パッドの音量確認が視覚的に行える。この画面ではマスターアウト、ヘッドホンアウト、ダイレクトアウト、AUDIO IN、USB AUDIOなどのレベルメーターを一覧表示。
     

     僕はEQですね。ハイハット・ペダルでオープン/クローズをコントロールできるようになったのも良いなと思いました。生ドラムを叩いている感覚で、ハウスなんかができるのも大きいですね。自分はサポートという立場なので、どんな曲が来るかわからないし、あらゆるトラック・メーカーが作った曲をやるわけじゃないですか。トラック・メーカーそれぞれでクセがまったく違うので、ハットの組み方1つにしても全然違って。“これを再現するのは大変だな”っていう曲もやっぱり出てくるんです。

    たまにある(ハイハットの)クローズ2種類とオープンの3種類でハット・ワークが成り立ってる場合なんかは、それをなぞったところで、音源と一緒なわけじゃないですか。100%のパフォーマンスをしたとしても、音源と同じところまでしかいけないので、あんまり意味がない。それを生のハットをプレイしてる感じでできたらフィジカル的にいけるから、アドリブが効くようになるし、音楽的になるんです。フィジカルな感覚を持って、デジタルな音を出せるっていう。自分はもうそこしか考えてないくらいなので、そういう視点で見ると、SPD-SX PROはめちゃくちゃ良くなったと思います。

    江島 すげぇ生の声な感じがする。

     あとはエフェクトの数が増えたのもポイントで、“っぽい音でやって”っていうときは、DAWを使って自分で音を作ってきてたんですけど、SPD-SX PROはサンプル数も増えてる……しかも使える音が増えていて、リヴァーブをかけたい、フィルターをかけようと思ったら、その場でできちゃう。これだけ機能があればエフェクトで音を作って、その曲っぽい感じをすぐに用意できると思うので、それはかなり大きいです。

    ●試奏中に“音が途切れずに次にいける”という話をされていましたけど、それについても詳しく教えてください。

    江島 わかりやすく言うとロング・トーンが途切れずにサンプル終わりまで再生されるっていうことですね。

     例えばAメロからBメロにいくときに1拍しかないと、キックの音のバンクを切り替えるときにどうしても最後の音が途中で切れちゃうんです。それが最後まで鳴ってくれるっていうのは、物理的にめちゃくちゃ大事なことで。

    江島 PCを使わないで、これ(サンプリング・パッド)をシーケンサー代わりにしてトラックを出して使ってるロック・バンドの人とかにも、SPD-SX PROはかなり有効なんじゃないかな。

     やっぱり鳴る面積が増えたのも大きいと思う。

    江島 あとは物理的なところで言うと、最初にも話したようにツマミが回しやすくなったのは個人的にめちゃくちゃうれしいです。演奏中に回したい人なので。前はMIDIコントローラーのフェーダーを1個だけつけてやっていたんですよ。演奏中にこのツマミを回すのはちょっと難しいなと思って、別口でフェーダーを足してたんですけど、SPD-SX PROだったら本体のツマミでいけるんじゃないかって。

    音量やピッチなどを調整するツマミ部分も一新され、より扱いやすくなった。

    ●江島さんは事前にパッド・シーケンスが気になるとおっしゃってましたが、どうでしたか?

    江島 組み合わせによっては、“何でこんなふうに鳴ってるんだろう?”ってよくわかんないくらい複雑に演奏することができるだろうなって思いました。今までは叩くと音が鳴るみたいな感覚だったけど、同じパッド叩いてるのにメロディ・ラインになっているとか、全部使いこなせたら、観ている人は何をやっているのかわからないくらい、すごいことができるんじゃないかと思いましたね。

     じゃあサカナクションのドラム・ソロはSPD-SX PRO1台でやるっていう(笑)。

    江島 (笑)。とりあえず連打するだけでもすごいことになりそう。

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