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    ステージの新定番! 格段に進化したRoland SPD-SX PROの”実力” feat. 堀 正輝 & 江島啓一[サカナクション]

    • Text:Isao Nishimoto/Photo:Takashi Yashima

    数多くのプレイヤーに愛用されているローランドのサンプリング・パッドに、フラッグシップ・モデルのSPD-SX PROが新登場。ベストセラーであるSPD-SXの性能/機能を進化させた同機がラインナップに加わったことは、サンプリング・パッドという機材が普通の楽器として定着した証とも言える。そんなSPD-SX PROの実力を、堀 正輝とサカナクション江島啓一にチェックしてもらった!

    Roland SPD-SX PRO【New】

    SPD-SX PRO(Top)/オープン価格

    サンプリング・パッドの定番モデルを
    さまざまな面で強化

    コンパクトなボディに9つのパッドを備えたSPD-SXは、2011年に発表されたロング・セラー・アイテム。ジャンルを問わず幅広いドラマーのセッティングに組み込まれ、ステージで目にする機会も多い。そんなSPD-SXを使用するアーティストからの要望を徹底的に調査し、それに応えるために誕生したフラッグシップ・モデルが、新たに発表された SPD-SX PROである。

    基本的なデザインと筐体サイズはほぼ変わらず、同じ感覚でセッティング/演奏が可能。大きく変わったのはその中身で、内蔵メモリーが2倍の32GBに増えた他、48kHzの高音質サンプルを再生可能(SPD-SXはCDクオリティの44.1kHz)。ステレオで約44時間分のデータを保存できる。

    また、サウンド・クオリティ向上のため設計を一から見直し、サウンド・エディット、サンプル・インポートなど主要な機能を大幅に改良。時間のないライヴ現場で確実に設定を完了させるためのスムースな操作性、過酷なライヴ・ツアーにも耐えうる高い堅牢性も実現したという。

    SPD-SX PRO(Rear)/製品情報はこちら

    また詳しくは後述するが、パッド周りが刷新され、入出力系統も拡充。用途、目的次第ではSPD-SXも十分に役立つ一方で、より本格的に使いたいシチュエーションではSPD-SX PROが威力を発揮するだろう。

    ドラマーの表現の幅を広げる
    サンプリング・パッドという“楽器”

    バンド・スタイルの楽曲でも、パート以外の楽器や打ち込みなどを活用したアレンジは多い。ドラマーがそれをライヴで再現する上で、ドラム・セットでカヴァーしきれないサウンドを演奏できるサンプリング・パッドはとても便利な機材だ。

    ローランドは、複数のパッドを持つ電子パーカッションを1980年代から発売しており、2000年代に入って登場したSPD-Sでサンプリングに対応。6つの大型パッド+3つのショルダー・パッドでオーディオ・サンプルを演奏するという形がここで生まれ、現在のSPD-SXとSPD-SX PROにも受け継がれている。

    ライヴ・シーンにおける定番となったSPD-SX

    レコーディングで作り込んだ音源と同じサウンドを鳴らせるだけでなく、合計9つのパッドでメロディックなフレーズを演奏したり、もう1つのドラム・セットのように使うなど、ドラマーの表現の幅を広げるアイテムとなった。アコースティック・ドラムにトリガーや電子ドラムを組み込んだ“ハイブリッド・ドラム”と呼ばれるアプローチでも、サンプリング・パッドは大いに活躍している。

    SPD-SXやトリガー・モジュールのTM-6 PROに、バー・トリガーのBT-1などを組み込んだ堀 正輝のハイブリッド・セッティング。
    サカナクションの江島啓一はSPD-SXを左手側に配置。足元にはキック・トリガー・ペダルのKT-10も装備。

    演奏性、サウンド、機能に及ぶ
    フラッグシップ・モデルならではの特徴

    それでは、SPD-SX PROで強化されたポイントをさらに詳しく見ていこう。SPD-SXは、9つのパッドにそれぞれLEDインジケーターを備えているが、SPD-SX PROでは大型のマルチ・カラーLEDに進化。垂直方向にもLEDが配置され、色分けやグループ化、点灯の仕方などを自由にカスタマイズできる。また、ショルダー・パッドのセンサー構造が見直され、演奏性を向上させている。

    垂直方向にLEDが配置され、暗いステージでの操作性がアップ! 色分けのカスタマイズも可能。
    カラー・ディスプレイが採用され、1つの画面で確認できることが増えたことも進化ポイント!

    オーディオ・サンプルに関するスペック・アップは前述した通りで、本体内には1,550種類以上のサンプルをプリロード。クラウド・ベースのソフトウェア/音色提供サービスRoland Cloudのライブラリーからもサンプルを追加することができる。

    また、SPD-SXではオーディオ・サンプルを読み込む際、事前に44.1kHzへと変換する必要があったが、SPD-SX PROでは本体内で48kHzへと自動変換される。これは現場のリアルな意見を汲み取った進化ポイントと言えるだろう。

    さらに、1つのパッドに2つの音色をアサインできるレイヤー機能を強化。叩く強さによって音色を切り替える、交互に鳴らすだけでなく、それぞれの音質を個別に調整し、1つのサウンドとして馴染ませることができる点も見逃せない。また、1つのパッドを叩くだけで、各パッドに割り当てたサウンドをあらかじめ組んでおいた順番に演奏できるパッド・シーケンス機能にも注目したい。

    取り込んだ音色を本体内で変化させるマルチ・エフェクトは、各キット毎に最大4系統+マスター・エフェクト1系統を使用可能(SPD-SXはキット毎に最大2系統+マスター・エフェクト1系統)。ダンス・ミュージック系のサウンドで特によく使われるサイド・チェイン・コンプも加わった。

    快適な操作感と多彩な入出力で
    “PRO”の名にふさわしい1台に

    操作パネルのレイアウトは基本的にSPD-SXを踏襲しつつ、PAD EDITという2つのツマミで素早く効果的な音色調整が可能に。4.3インチの大型LCDディスプレイも、快適な操作をサポートしてくれる。

    Windows/Mac対応の専用編集ソフトSPD-SX PRO APP(こちら)を使って、サンプルの取り込み/管理/キット ・データのエディットなどをよりスムーズに行うこともできる。

    出力はL/RのMASTER OUTに加えて、各パッドの出力先を自由に割り当てられる4つのDIRECT OUTを新設。ミキシングの自由度が高まった。外部トリガー/パッドを増設できるTRIGGER INは4系統を備え、Y字ケーブルを使えば最大8つの入力に対応。

    『SPD-SX PRO』を使ったコンパクト・セッティングの例

    さらに注目したいのは、新たにハイハット・コントロール/エクスプレッション・ペダル端子が用意されたこと。V-Drumsのハイハット・パッドやハイハット・ペダルと組み合わせてハットのオープン/クローズをコントロールできるほか、エクスプレッション・ペダルで演奏中にエフェクトのパラメーターを変化させるといった使い方もできる。

    ここに挙げた以外にも、“PRO”の名にふさわしい数々の特徴を備えたSPD-SX PRO。これからどのようにクリエイティヴな使われ方をしていくのか、楽しみでならない。

    堀&江島によるレビューは次ページ!