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初心者のためのイヤモニ入門! feat. 響[摩天楼オペラ]

  • 試奏/レビュー/映像制作:響[摩天楼オペラ] 撮影:八島 崇 製品解説:竹内伸一

Ⅱ ドラマーのための“SAFE LISTENING”を考える

■生音が聴こえづらくなる不安

 ライヴを行う上では良いことずくめだと思えるイヤモニですが、ドラマーのように生楽器を扱うプレイヤーにとって、生音が聴こえづらくなることには大きな不安も伴うでしょう。中には、イヤフォンをつけてプレイすることの違和感を語るドラマーもいます。しかし、イヤモニを使う利点の方がそれを上回り、それを実感しているうちに違和感も消えていくケースが多いようです。

また、イヤフォンに返す音のバランス次第で、より違和感を感じにくくするアプローチもあります。そういう意味では、生音の聴こえ方の変化は、イヤモニのデメリットと言うより、イヤモニを使う上で越えるべき壁と言った方がいいかもしれません。

■イヤモニを導入するにあたって

この記事を読んで、自分もイヤモニを使ってみたい!と思った読者の方もいるでしょう。しかし、イヤモニはあくまでもライヴにおけるサウンド・システムの一部です。気に入ったイヤフォンを買って持ち込めばすぐ使えるというものではありません。セッティングはもちろんのこと、使用する際のモニター・バランスも重要で、音響スタッフとの連携が欠かせません。

もしライヴ・ハウスで使うとしたら、事前に店側としっかり打ち合わせを行い、どのような機材が必要なのか、そもそもイヤモニに対応してもらえるのかを確認しておく必要があります。自分のスネアやシンバルを持ち込むのと同じような感覚で、ライヴ当日にいきなりイヤフォンを持って行って“これ使いたいんですけど”というのは通用しないので気をつけましょう。

■“SAFE LISTENING”という考え方

最後に、イヤフォンの耳栓としての働きについてもう少し触れます。特に、メタルやラウド・ロックなどのようにステージ上が大音量になる場合、人間の持つ生理的な調整機能によって、耳の感度が低い状態に抑えられてしまいます。これは音楽を演奏する上で決して良い状態と言えないのはもちろんのこと、それが長時間続くことによって聴力低下の原因にもなります。そのため、ライヴでは耳栓をしているミュージシャンもいます。

イヤモニを用いるのも同じで、こうした危険からプレイヤーを守ることにつながります。耳の形にぴったり合ったカスタムIEMなら、その効果はより顕著になります。とは言え、イヤフォンから爆音が鳴っていたのでは意味がありません。適正な音量、適正なバランスのモニター音が大前提です。

イヤフォン・ブランドFitEarの代表、須山慶太氏は“SAFE LISTENING”というスローガンを掲げ、ヘッドフォンやイヤフォンで安全に音楽を楽しむための啓蒙活動を行っています。

それによると、耳への負担は音の大きさだけでなく時間の長さにも左右されます。耳は目と違って閉じることができないため、意識的に耳を休ませる時間も必要です。豊かな音楽表現のために導入したはずのイヤモニが、逆にそれを妨げることにならないように、注意して使っていきたいものです。

▲大きな音から耳を守る耳栓(イヤー・プラグ)は、演奏時だけでなくライヴ鑑賞時にも有効だとして注目されている。写真は、耳への圧力が耳穴全体に分散することで痛みや疲労感を軽減するソフト・シリコン製のイヤー・プラグ、FitEar Silence。

※このページは、カスタムIEMメーカーFitEar代表の須山慶太氏が本誌で執筆した記事「知っておきたい“音楽と耳の関係”」などを参考にしながらまとめたものです。内容は須山氏の監修を受けていますが、文責は執筆者にあります。なお、本コラムは、リズム&ドラム・マガジン本誌2018年2月号からの転載記事です。