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スプラッシュ・シンバルに再注目! Zildjian K Custom Dark Splash|【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯30

  • Text:Takuya Yamamoto
  • illustration:Yu Shiozaki

第30回 Zildjian K Custom Dark Splash

ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回は、エフェクト・シンバルにフォーカス!

いつもお読みいただき、ありがとうございます! 近頃の楽器のトレンドについて情報を収集していたところ「今、あらためてエフェクト・シンバルに注目している」という話を耳にしました。

エフェクト・シンバルと言えば、チャイナやスプラッシュが真っ先に思い浮かびましたが、ハンド・クラップの音色を再現するタイプのスタック・セットの人気が上昇しており、ヘヴィ・メタルにルーツを持つスタイルのドラミングのニーズが高まったことで、ベル(カップ・チャイム)にも多数の製品が投入されています。すっかり定番となった穴あきシンバルも、その出自に遡れば、エフェクトの1種ともみなせるでしょう。今回は、最も手軽に導入できるであろう、スプラッシュ・シンバルに注目してみます。

今月の逸品 【Zildjian K Custom Dark Splash】

2025年2月の時点では8″と10″の2種類がラインナップされています。小さい方の8″と、廃番になった12″を所有していますが、12″はクラッシュ色が強いので、基本のスプラッシュとして探す場合は8″から10″あたりがおすすめです。

シンバルは、ドラム・セット内ではもちろん、音楽全体のアンサンブルの中でも最も高い帯域の成分を多く含んで発音する楽器の1つです。基本的な性質として、サイズが小さくなるほどピッチが上がる傾向があり、小さなスプラッシュは、実際の音圧以上によく目立つ存在です。

スプラッシュを語る上で欠かすことのできない重要なモデルとして、スプラッシュの元祖とも言えるジーン・クルーパが開発に携わったA Zildjian Splashや、スプラッシュのあり方を再定義したスチュワート・コープランドが愛用する、PAISTE Signature Splashなどがあります。

どちらも明るく弾けるキャラクターで、うまく使いこなせば素晴らしい働きをしてくれますが、明瞭で溌剌としているがゆえに、深く考えずに鳴らしてしまうと耳障りになってしまうこともあるかもしれません。

その点、このK Custom Dark Splashは、その名の通りスプラッシュとしてはダークなキャラクターが特徴の1つで、極薄のウェイトと、レイジング後に施されたオーバー・ハンマリングによって、キレの良いドライなサウンドに仕上げられています。

Kシリーズらしく、入念なハンマリングによって生まれる複雑な響きもあって、他の楽器との馴染みも良く、プロからハイ・アマ向けの比較的高価なモデルではありますが、そもそもの口径の小ささのおかげでエントリー・モデルとの価格の差が小さいため、初めてスプラッシュを導入するような方にもお勧めできるモデルです。

他の楽器と重なりにくいレンジで鳴るスプラッシュは、楽曲の中で印象的な働きをすることも少なくない楽器です。オリジナル楽曲を演奏するような状況では、作曲者やアレンジャーの中に確固たるイメージが存在していて、それにピッタリの音色を求められることもあります。そんなとき、何十枚とは言わずとも、2〜3種類の選択肢があるだけでその打率は大幅に向上するので、このダークで馴染みの良い1枚があれば、広い範囲の守備を任せられるでしょう。

今回はスプラッシュ・シンバルとしてピックアップしましたが、他の楽器にスタックしたり、ミニ・ハイハットにしたりと、アイディア次第でさまざまな使い方ができます。

近頃は、メーカーや楽器店による高品質なサウンド・サンプルが豊富です。デジマートは多数の楽器店の在庫をまとめて確認できるので、安価な順でソートして、気になったモデルの中古を探すのも良いかもしれません。この機会に、ぜひお気に入りのスプラッシュを見つけてみてはいかがでしょうか。

Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

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