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【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯28〜Pearl Eliminator Redline〜

  • Text:Takuya Yamamoto
  • illustration:Yu Shiozaki

第28回Pearl Eliminator Redline

ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回はパールが誇るフット・ペダルの定番、Eliminator Redlineにフォーカスします!

いつもお読みいただき、ありがとうございます! 前回は、CanopusのMO Snare Drum(こちら)を取り上げましたが、トレンドの移り変わりが激しい業界の中で、いつの間にかロング・セラー製品として成長していたことをあらためて実感しました。

また、以前取り上げたLudwigのAcrolite Snare Drums(こちら)は、公開後の2023年に従来の8Lugから10Lugへとモデル・チェンジが行われました。度々行われてきたフィニッシュやフープ厚の変更なども、サウンドへの影響は小さくありませんが、ラグ数の変化はより大きな違いが生まれます(本記事の執筆現在、60’s〜80’sの在庫が大変潤沢です)。

そこで今回は久々にキック・ペダルに注目し、今手に入れることができる、ロング・セラーの定番製品をチェックしてみたいと思います。

今月の逸品 ① Eliminator Redline【P-2050C

PearlのEliminator Redlineは独自のカム形状変更機能、インターチェンジャブル・カムシステムを備えた、プロ・ユースのキック・ペダルです。アンダー・プレートと、それに付随するヒンジ位置の変更機能、パワーシフターを備えたモデルが2016年頃に登場したP-2050C、それらをオミットして、新たに折り畳み機構を取り入れたモデルが、2021年末に登場したP-2050C/Fです。

初代Eliminatorは2000〜2001年頃に登場しました。それまでは組み上げ段階で区別されていたカムやスプロケットの形状を、簡単に交換できる斬新な仕様で、大きな話題になりました。

さらに1世代前に当たるP-201Pから、フット・ボードのヒール固定位置が変更可能な機構(パワー・シフター)も引き継いでいたので、スプリング・テンションや、ビーター・アングル、ビーターの長さ、ストラップ素材(チェーンorベルト)、フット・ボード・アングル(ストラップの長さ)といった、先行していた各社の製品でも調整幅として設けてあった部分を除いても、基準となる状態が12通り(カム4種類×ヒール位置3箇所)へと一気に増加しました。

この12通りの中には、適切なフット・ボード・アングルへ調整を前提とするであろう極端なものも含まれており、単品でリリースすることは考えにくい組み合わせも含まれていたためか、当時は「調整機能が多すぎて扱いづらい」という意見もありました。

しかし、四半世紀の時を経た2024年現在では、2回の大きなモデル・チェンジを挟みつつ、リハーサル・スタジオの機材としても一般化しており、更なる調整機構を設けたペダルが増加した事もあり、Pearlを代表する王道のフット・ペダルとしての地位を固めたように感じます。

今月の逸品② Eliminator Redline【P-2050C/F

基本のポジションを出して、自分の体重にあったスプリング・テンションを見つけた後は、あまりセッティングに凝りすぎず、フット・ワークの技術を磨くことがドラム上達の近道かとは思いますが、ある程度の演奏スキルを身につけた段階で、調整機構が及ぼす影響を確認することで、レンタル機材でもベストな演奏ができるように、スピーディな調整の技術を身につけることができます。

例えば、DW5000のTurboに慣れていて、トラブルの際にやむをえずバックアップとして用意されていたAcceleratorを使用しざるを得ない状況が発生したとしましょう。自分の演奏技術でカバーできれば、それは何よりですが、例えばビーターを少し短くしたり、スプリング・テンションを下げたりなど、調整によって、違和感を減らせる方法がわかっていれば、それを行うのも1つの技術です。

演奏内容や奏法、体格などによって、どのような変更をすることが、自分の違和感を減らすかはまちまちです。体系化して伝えたりする意義もあるかもしれませんが、機材ありきの技術は断絶する可能性をはらんでいます。自分のための技術を、自分自身で見つける習慣を身につけることは、他にない個性を生み出す上で重要なポイントです。

演奏のためのペダルとしてのポテンシャルは間違いないモデルであり、同時にペダルに関する知識や、調整機能を活用する技術を身につけるための教材としても、優秀な1台です。すでにお気に入りのペダルをお持ちの方も、その好みの源泉を探ることで、更にセッティングを突き詰められる可能性があります。

プラスティック面が利用可能なビーターを標準装備しているので、メッシュ・ヘッドの電子ドラムや練習パッドにも対応しやすく、趣味の機材としても比較的少ないコストでさまざまな楽しみを見出すことができます。初めてのペダルにも、2台目以降にも、プロアマ問わず、おすすめできる要素があるので、この機会にぜひチェックしてみてください。

島村楽器主催「ドラムショー2024」との
コラボレーション企画が決定!!

島村楽器が行っているドラマーのためのドラム展示会=“DRUM SHOW”(ドラムショー2024)が今年も開催! その「ドラムショー2024」と本連載のコラボレーションが実現!! 「山本拓矢が島村楽器ドラムショー2024で見つけた逸品たちを試打&レポート」と題した試奏イベントを10月19日(土)名古屋パルコ店で行います!

限定アイテムやハイエンド・モデルなど、「ドラムショー2024」でフィーチャーされるスネア・ドラムを博士が試奏し、それぞれの特徴やサウンドの魅力、チューニングのポイントなどをリアル・タイムで解説するという内容を予定。イベントで試奏したスネア・ドラムは後日、本連載でもご紹介します!

イベントは人数限定となっているので、興味のある方は早めに申し込みをオススメします!! ドラムショー2024の詳細はこちら→https://info.shimamura.co.jp/drums/article/drumsshow2024


Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

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