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    【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯26〜ハイハット・スタンド〜

    • Text:Takuya Yamamoto
    • illustration:Yu Shiozaki

    第26回ハイハット・スタンド

    ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回は、ハイハット・スタンドにフォーカスします。

    いつもお読みいただき、ありがとうございます! 今回は、ハイハット・スタンドに注目してまいります。

    先日、Yamahaよりフラッグシップ・ハイハット・スタンド=HHS9Dのリリースが発表されました。発売に先立って試奏しましたが、フラッグシップにふさわしい仕上がりで、さすがのアクションとサウンドでした。気になる価格は、現時点での予定で、従来の最高級モデルと比較して約3倍ということで、驚いた方もいらっしゃることでしょう。しかし、各社における近頃の価格と比べてみると、実はそこまで異質なものではなく、むしろ既存のモデルの価格がまだ上がっていないだけ、とも言えそうです。

    以前であれば、おすすめのハイハット・スタンドを問われたら、「特徴がはっきりした各社のハイエンドと、ライト・ウエイトのモデルを試して、気に入ったものを選べば良いのでは」と答えていたかもしれませんが、なかなかそうもいかない状況になってきました。

    そこで、今回は、ハイハット・スタンド選びのヒントを交えつつ、私が求めるスペックを満たしたモデルを、スタンダード・ハイハット・スタンドと定義して、3機種ほど紹介してみます。

    今月の逸品 ① 【Yamaha HS850

    シンプルな三脚スタイルで、スプリング・テンションの調整機構を備えた、まさにスタンダードなモデルです。今回の3機種の中で、使用感の違いという点で注目すべき部分として、スプリング・テンションの調整機構が挙げられます。このモデルで採用されている11段階という細かな刻みは、あたりのつけやすさと、追い込みやすさのバランスが絶妙です。

    今月の逸品 ② 【Pearl H-1030S

    こちらも三脚かつスプリング・テンション調整機構が盛り込まれた、ベーシックな仕様です。テンション調整は無段階で、きちんと調整すれば、ストレスフリーな踏み心地を追求できます。テンションを大きく動かそうとする場合、たくさん回す必要がありますが、ハイハットを使い分ける方は、トップの重さに合わせた微調整が可能な仕様は、うれしいポイントでしょう。

    今月の逸品 ③ 【TAMA HH205

    メーカー公式では、もう1ランク上のHH605がスタンダード・モデルで、こちらはコスト・パフォーマンス・モデルと位置づけされているようですが、前述の2機種に近い仕様のモデルが、このHH205です。スプリング・テンションの調整機構は5段階、これは一見少ないように感じますが、調整機構が省かれたモデルも多数存在している中、5段階でも十分実用的です。変更が簡単で、再現性も高いので、スタジオやサークルの共有機材としても扱いやすい仕様です。

    ツイン・ペダルをセットする際などに真価を発揮する二脚スタイルのスタンドは、高級機種の象徴のような面もありますが、床面のコンディションの影響を受けやすく、理想的でない環境では安定性を確保できないシーンも少なくありません。その点、今回紹介した三脚タイプは、床の継ぎ目や段差を回避しきれない状況や、剛性が不足していて揺れが生じるような場合でも、相対的に高い安定性を確保しやすい構造であるといえます。

    スプリング・テンションの調整は、そもそも搭載されていないモデルも一般的であり、演奏内容によっては、そこまで神経質にならずとも、支障がないという方も少なくないでしょう。しかし、取りつけるトップ・ハイハット自体の重さや、脚の重さ、踏み込みに用いる速筋と、踏み続けたり、繰り返しの動きに対応する遅筋のバランスの違い、ボードの反発力によって左足にかかるストレスは、思いがけない負荷になっていることもあります。

    ドラム演奏の可能性を追い求めるのであれば、右足と同等かそれ以上のフット・ワーク・スキルを身につけても損はありません。キック・ペダルと同じ水準で、機材を選んだり、しっかりと調整することで、新たな発見があるかもしれません。

    この機会に、ハイハット・スタンドを見直してみてはいかがでしょうか。


    Profile
    ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

    Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

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