GEAR
UP
【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯21〜小口径シグネチャー・スネア・ドラム〜
- Text:Takuya Yamamoto
- illustration:Yu Shiozaki
今月の逸品 ② 【TAMA PETER ERSKINE Signature PE106M】
さて、併せて確認いただくことで、双方への理解が深まる楽器ということでもう1台、TAMAのピーター・アースキン・シグネチャー・モデルである、PE106Mも簡単にご紹介いたします。
10mm厚のステイヴ・アッシュ・シェルを用いた、10”×6”のスネアです。サイズ、シェル製法など、共通点が多い楽器です。ピーター・アースキンはSTAR Bubingaシリーズと合わせて愛用しており、4.5mmという薄さのドラム・キットに対して、厚いステイヴ・シェルの小口径スネアを合わせるという構図は、ここまでお読みいただいた方には、1つの最適解であることがおわかりいただけると思います。
タム・マウント・ブラケットが取りつけられているのもポイントですね。フープと一体型なので、フープごと交換して、プレーンな状態で使うのも面白そうです。
今回は、楽器の価格帯も、情報の密度も、少々マニアックな内容になってしまいましたが、お楽しみいただけましたでしょうか。すべてのドラマーが必要とするカテゴリではないかもしれませんが、今回フィーチャーした2台は、状況によっては、メインとして据えても十分なポテンシャルを発揮できるスペックの楽器です。
小口径の楽器を褒める時、よく「○○インチとは思えない/○○インチらしからぬ」という表現が用いられるように感じます。私自身も時々使ってしまいますが、口径に由来するピッチやトーンは絶対的なので、もしそのトーンが必要ならば、そのサイズを使うべきです。キットの一部として組み込む場合に、望まずに生じてしまう何らかのギャップ。それを埋めるために、研究が積み重ねられ、創意工夫が盛り込まれているのだと思います。
より安価な普及価格帯にも優れた小口径スネアはいろいろとありますが、コストは後回しで、研ぎ澄まされた領域にある楽器でしか得られない情報や経験は、間違いなく存在しています。この機会にいろいろな楽器に目を向けていただき、そこから得られたものを、音楽に生かしていただけたらと思います。
Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。
Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto
【Back Number】