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【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯11 〜Moongel Damper Pads〜
- Photo & Text:Takuya Yamamoto
- illustration:Yu Shiozaki
SlapKlatzには、近頃、詰め替え用のパッケージも登場しましたが、プラケース入りのSlapKlatz Proの使い勝手が良好です。大中小3つのサイズがセットになっており、微調整のしやすさは群を抜いています。円形は振動によるめくれが起こりにくく、効き方が安定しています。
Moongelのような長方形とは効き方が異なるので、状況に応じて併用しています。カラー・バリエーションも豊富なので、紛失防止として派手なカラーを選ぶのも一考の余地があります。
シート・ミュート
シートは、代表的なものとして、BIG FAT SNARE DRUMと、DRUM EFFECT SHEETを挙げておきます。
スネアの上に載せるとピッチがグッと下がり、独特な“ダシッ”という音色が手軽に作れます。音量がかなり下がるので、質量があってパワフルなスネアと組み合わせたり、キットやシンバルの音量に気を遣うなどの対策を念頭に置くと、使えるシーンが増えるでしょう。
手軽さが長所ではありますが、目指す音色があれば、ジェルやリングとの併用も試してみてください。シートのサウンドをより掘り下げてゆく場合、TARA:NOME productsのミュートニャンや、Ikebe Original 丸クロスも、おすすめです。
テープは専用のものというわけではないのですが、寺岡製作所のオリーブテープはプロ御用達の鉄板アイテムです。粘着剤の量や流動性、質量の面でミュートに最適で、これさえあれば何とかなると言っても過言ではありません。
ただし、汎用性の高さゆえに、製品としてのマフラー類のような安定した再現性はなく、完全に使い捨ての消耗品なので、他のツールと併用して、利点を生かす方向をお勧めしたいです。”テラオカ”は効きが強すぎると感じる場合は、ニチバンなどの養生テープもお勧めです。
アウトサイド・マフラー
アウトサイド・マフラーは、製品としては少なくなってしまいましたが、現行ではベーシックなパールのOM-1あたりでしょうか。後述のプレッシャーを与えるという点では毛色が異なりますが、変わり種としてレモのHK-2417-00も挙げられます。
このジャンルでは、TAMAやSONORのヴィンテージ(6553、Signatureなど)が良い働きをしてくれるので、見かけたら買ってみても良いかもしれませんね。なお、古いものはノイズが出やすいので、糸やテープで適宜対処してください。
他のミュート類と大きく異なるのが、能動的にヘッドにプレッシャーをかけられることです。また、リングのように特定の帯域を大きくカットしたり、ジェルのように振動を吸ったりしないので、ディケイとリリースの成分を前後に大きく圧縮するようなニュアンスで使えます。
また、フープに固定するという構造上、重力の影響から開放されるので、タムの裏をコントロールするのに便利です。ピッチやトーンの関係でテンションボルトを回したくないときや、ボルトの一箇所を緩めてリリースを調整する際、ボルト付近に適当なプレッシャーを与えてシワから生じるビビリを出さないようにしたり、固有の使い勝手があります。
駆け足で紹介してきましたが、一通り網羅できたのではないでしょうか。
ノー・ミュートの倍音が必要なシーンもある一方、適切にミュートした音色を取り扱えることも、同じくらい重要です。それぞれの役割を理解して、音楽ファーストで、音色の引き出しを増やしていただけたらと思います。
Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。
Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto
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