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試奏レポート【TECHRA】 Carbon Fiber Drum Sticks
- Review:Yusuke Nagano Photo:Takashi Yashima
イタリア発カーボン・ファイバー・スティックが
国内市場に本格参入!
イタリアのカーボン・スティック・メーカー、TECHRA(テクラ)が国内での販売を本格的にスタートした。50年もの素材研究で培われたノウハウを生かし、耐久性や木製スティックと遜色ないフィーリングを実現しているという。特にグリップ・エンド部分にはラバー素材を埋め込み、ショット時の衝撃を軽減するanti-vibration systemという機構を開発。よりウッド・スティックに近いフィーリングに貢献している。
今回はアーティスト・シリーズを除く6シリーズから1モデルずつ、計6組を検証した。各モデルの特徴は以下の通り。
●CARBON PRO
テクラ社のスティックで最もスタンダードなモデル。重心をチップ寄りにすることで、スピードとパワーの両立を実現。
●CARBON PRO SUPERGRIP
スタンダード・モデル=CARBON PROのグリップ部分にラバー製のNon-Slip Gripを採用。より高いグリップ力を追求。
●HAMMER OF GODS
ロックやメタルなど、ハードヒッターに最適な最重量級モデル。耐久性もCARBON PROを上回る。
●COLOSSUS
テクラ社の中で最も高い耐久性を誇るモデル。
●XCARB
最軽量モデル。木製スティックに近い重量で、操作性も高い。
●E-RHYTHM
ラバー・チップを採用したモデル。演奏時の音量が抑えられ、電子ドラムや練習パッドでのトレーニングに適しているという。
Review
※表示価格はすべて税込です。
CARBON PRO 5A
今回試奏した中では一番スタンダードなモデルと言われているCARBON PROの5A。スティック全体にカーボン・ファイバーの素材が詰まっているような感触で、とにかく重量があってパワフルです。他のモデルにも言えることですが、重心はかなりチップ寄りだと思います。叩いた音は、発音が明るくて明確で、特にタム類を叩いたときのヌケの良さと音質の太さは印象的でした。重量がある分、リバウンドにも手応えを感じます。
CARBON PRO SUPERGRIP 5A
グリップに施されたラバーが程良いしっとり感で、軽くホールドしてもしっかり手に馴染む感触が良いですね。スティック自体の特性はスタンダードな5Aと同じですが、グリップが効く分、パワー・プレイはもちろん、ダブル・ストロークなど細かい音符も叩きやすかったです。そして体感的な部分でも、スティック自体の重量が軽くなったような錯覚を覚えました。私はあまり手汗をかく方ではないので、カーボンと手汗の相性は測れないのですが、これは乾燥肌タイプのドラマーにもお勧めだと思います。
HAMMER OF GODS 5A
重量はCARBON PROとあまり変わりませんが、こちらの方が硬質な感じがします。今回試奏した中ではスティックのピッチが高く、とにかく音が鋭くてよくヌケますね。パワー・プレイに抜群の威力を発揮しますが、特にライドのピング音のツブ立ちの良さは印象的でした。他のモデルに比べ、手元からショルダーにかけて、どんどん素材が詰まっていくように感じられるのも特徴的で、重心はチップ寄りですが、リバウンド感も伝わりやすく、重量のわりにとても演奏しやすいバランスだと思いました。
COLOSSUS 5A
前述の3組よりも少し軽めにできていて、自然なレスポンスを実現しているように思います。リバウンド感も良いので、レガートなどの軽快なフレーズもやりやすく、なおかつ重心がチップ寄りなので、タムなどに行ったときのパワー感やツブ立ちの鮮明さも併せ持っています。重量も標準的なスティックと比べて重すぎるということもなく、個人的にはカーボン・ファイバー・スティックの入門に適したモデルかなと思いました。
XCARB 5A
今回試奏した中では重心が1番手元に近くて標準的な印象を受けました。6種類のうち、アコースティック・ドラム向けの5種類はすべて5Aということで、シェイプは同じなんですが、重心のバランスが違って感じられるのは面白いですね。リバウンドを生かした軽快なシンバルのレガートも演奏しやすく、ライトかつシャープなツブ立ちも心地良いです。最軽量モデルということで、1つ前のCOLOSSUSよりもさらに軽く、ウッド・スティックからのスイッチもすんなりできるかと思います。
E-RHYTHM 5B
今回は練習パッドと、メッシュ・ヘッドを張ったスネア・ドラムで試したのですが、木のスティックで叩くよりも音がマイルドで、振動も抑えられます。ラバー製のチップですが、リバウンドも違和感なく、細かい音のタッチやツブ立ちのコントロールも問題ないですね。ライヴ・ハウスの楽屋などで、テーブルなどを利用したちょっとしたウォーミング・アップにも使えるのではないでしょうか。
総評
アタックのインパクトをしっかり伝えながら
振動を程良くコントロール
木製スティックからのスイッチも違和感が少ない
従来のカーボン・ファイバー・スティックは、叩いたときのタッチの硬さが気になる場合もありましたが、今回試奏したモデルは、アタックのインパクトを手にしっかり伝えながら、振動を程良くコントロールしていると思いました。これはショット時のグリップへの衝撃を軽減するanti-vibration systemの効果が大きいと思われますが、小さなタッチにおいてもヒット時の振動は確実に手に伝わってくるので、木のスティックから持ち替えても、違和感が少ない気がします。
耐久性に関しては、やはり通常の木製のスティックに比べてかなり高いと思われます。ハイハット・シンバルを刻む際は打痕がつきますが、オープン・リム・ショットに関しては傷すらつきませんでした。木目などによる個体差がないのも安心ですね。
個人的には、木のスティックを使っていた人が、使用感をあまり変えずにスイッチしたい場合の最初の1組としては、COLOSSUSかXCARBをお勧めしたいですね。日頃、やや軽めの7Aタイプ(直径13mm程度)や標準の5Aタイプ(直径14mm程度)を愛用している人はXCARB、5Aからやや太めの5Bタイプ(直径15mm程度)を愛用する人はCOLOSSUSという感じでしょうか。そしてそれ以上のパワーを望むならCARBON PROとSUPERGRIP、HAMMER OF GODSというイメージですね。明るくキレの良いバック・ビートのインパクトはもちろん、遠心力を使って重さを載せた、タムやクラッシュなどの音色と叩き心地の良さは抜群でした。
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