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本気で選ぶ! お勧めライド・シンバル3種【連載|博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯40】
- Text:Takuya Yamamoto Illustration:Yu Shiozaki Photo:Takashi Hoshino
第40回:本気で選ぶライド・シンバル3製品
ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回は、前回のクラッシュ・シンバルに続いて、自分に合うライド・シンバル選びのコツをレクチャーすると共に、マルチな場面で活躍する3製品を紹介!
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
おかげさまで、ついに本記事も連載40回目を迎えました。読者の皆さま、関係者の皆さまの温かいご支援のおかげです。心より感謝申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
前回がクラッシュ・シンバルだったので、今回はライド・シンバルです。選び方に触れつつ、汎用性の高い3機種を軸に紹介いたします。これさえあれば!という1枚を見つけていただく助けになれば、幸いです。
今月の逸品 1 【Zildjian 20″ A Medium Ride】

言わずと知れた大定番、王道中の王道モデル。本気で選ぶ1枚のスタート地点であり、結論となり得る1枚です。中でも、本コラムでは“2013年以降の製造の個体”を、個人的なお勧めといたします。2013年は、Re-designedと銘打って、ウェイトやシェイプの大々的な見直しが入った時期です。シリアル・ナンバーによる見分け方もありますが、本稿が執筆された2026年時点では、シンバル上のAのロゴが、Aカスタム・シリーズと同等の大型のものであれば、Re-designed以降の楽器であるとみなして良いでしょう。
A Zildjianは、音楽シーンの変遷と密接にリンクしており、常に細かなアップデートを重ねていて、各年代にそれぞれの良さがあります。昨今の(楽器に限らない広義の)ヴィンテージ・ブームの拡大と定着もあって、特定の年代を指名買いするケースもよくあると思います。その時代の音楽を演奏するならば、それも良い選択かと思いますが、現代の環境で、現代の音楽を演奏するならば、現行品を育てる楽しみを味わうチャンスを逃す手はないでしょう。
このシンバルを実際に使ってみて、何らかの欲が出てきた場合は、その方向を探ってみてください。それが、ライド・シンバル選びの第一歩です。
例えば、そう遠くない範囲で、温かみやダークさを求める場合、K Zildjianに注目してみてください。反対に、明るさやヌケに課題を感じた場合は、Ping Rideをはじめとした、よりヘヴィなモデルや、組成の異なる合金が用いられているパイステの2002などを参照するのも良いでしょう。
Medium Rideは、ほぼ間違いなく一生使える楽器なので、可能であれば持ち続けていただきたい楽器ですが、人気が安定していて流動性も低くないので、リセールも比較的良好です。
続いて、やや大きめとなる22″から選んだ1枚です。
今月の逸品 2 【SABIAN 22″ Artisan Light Ride】

現代のデファクト・スタンダードな20″と異なり、22″を選ぼうとした時点で、ある程度の目的が意識されているはずなので、かなり悩ましいカテゴリでしたが、この1枚に絞りました。参考として、迷った候補としてPAISTE Signature Dark Energy Ride Mark IIや、Zildjian K Constantinople Medium Rideも挙げておきます。
Artisan Light Rideのポイントは、アコースティックな音楽にも適した、手間暇をかけたハイエンドなモデルで、明確にライト・ウェイトであると標榜するタイプにしては、輪郭が保たれやすい程度にウェイトがある点です。
自身のニーズとしては、もう少しドライなタイプが助かるシーンが中心なので、より多用している楽器もありますが、録音の現場を中心に、ドラマーのみならず、共演者やエンジニアの方など、さまざまなポジションの方からの反応が良いので、20″と共に持参する機会が多いモデルです。
続いて、奇数サイズです。
今月の逸品 3 【Zildjian 21″ K Projection Ride】

22″にややジャンル性が含まれたので、こちらも別のベクトルを意識しています。2025年に、本誌のNEW PRODUCTSでもレビューしましたが、大音量環境に適したチューンがされつつも、高い汎用性と表現力を兼ね備えているモデルです。
ベルは大きめですが、いわゆるメガベルほどではなく、さほど気負わず、自然に扱える範囲に収まっています。メタルなどのジャンルで重宝されるスペックの1つで間違いはないのですが、意外な他ジャンルに特化した楽器でも、この要素を備えているケースがあります。
代表的なものでは、1980年代前半のアメリカで製造されたK Zildjianシリーズ、通称”EAK(Early American K Zildjian“)の、Jazz Rideが挙げられます。見かける機会は少なくなっていますが、初めて現物に遭遇したときは大変驚きました。大きく鋭いベル・サウンドを打ち鳴らすための仕様とは限らず、豊かな倍音を生み出すための仕掛けとして機能する場合もあります。
比較的新しい製品なので、楽器店などで実際に試した方もいらっしゃるでしょうか。このモデルは、セイビアンのOMNIや3-Point、ジルジャンではK CustomのHybridなどで示唆されているような、ヒットするポジションで音色をコントロールする手法にはあまり反応しないので、機能性に振り切った設計の楽器かな?と感じた方も少なくないと思います。もし、そのような印象をお持ちであれば、スティックに乗せる重さや、ショット・スピードのコントロールに意識をおいて、あらためて試してみてください。
静かな場面でも心強い、情報量の豊富なリッチな響きや、他の楽器を塗りつぶしたくない状況での、抑制が効いて整理されたクリアなトーンなど、さまざまな表情を見せてくれるはずです。
ここまで、異なる個性を持った3枚をご紹介いたしました。見慣れた楽器も、普段はチェックしないような楽器も、視点を変えて触れると、新たな発見があります。思い通りに振る舞ってくれるライド・シンバルは、演奏を楽しんで、音楽に集中する、大きな助けになります。そんな相棒に出会えるきっかけになることを願っています。

Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。
公式X:https://x.com/takuya_yamamoto
【Back Number】


『That Great GRETSCH DRUMS』
