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クラッシュ・シンバルの選び方と押さえておきたい万能モデル【連載|博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯39】
- Text:Takuya Yamamoto Illustration:Yu Shiozaki Photo:Takashi Hoshino
第39回:クラッシュ・シンバルの選び方
ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回は、クラッシュ・シンバルにフォーカスし、その選び方とぜひ押さえておきたいモデルを紹介!
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
先日、ドラマガ本誌の新製品レビュー・コーナー「NEW PRODUCTS」において、セイビアンの新しいクラッシュ・シンバルである、Todd Sucherman AA Spotlight & HHX Redlight Crash Cymbalsを試奏しました。
現代の一般的なドラム・セットでは、2枚のクラッシュをセットするケースが多いと思いますが、これらのシンバルは4枚同時にセットする前提で設計されており、示唆に富んだユニークな楽器でした。
個人的には、2〜3枚のライドで成立させたセットに対し、1枚のクラッシュを追加するか、1枚のライドに対して1〜3枚のクラッシュを合わせる方法でセットを構築しています。トッド・サッチャーマンの4枚を並べる手法は、自分の中の方法論にも通じる部分があり、実に合理的で機能的だと感じました。
そこで今回は、クラッシュ・シンバルの選び方を軸として、厳選したモデルを紹介してみたいと思います。
今月の逸品 1【Zildjian 16″&18″ A Custom Crash】
ジルジャンより1991年に登場したAカスタム・シリーズにおける、最もベーシックなクラッシュ・シンバルです。このモデルの他には、廃番になったラインも含めると、Fast Crash、Medium Crash、Projection Crash、Rezo Crashといったものが存在しますが、この無印の“Crash”が基本モデルです。ネーミングからすると、Medium Crashがそのポジションと思われるかもしれませんが、シンバルの重さを示す“ミディアム”は、クラッシュとしてはウェイトがある部類になり、事実として、Aカスタムのクラッシュの中では、最も重くパワフルです。
A Custom Crashは、ジルジャンのA Familyらしく明るいトーンを基本としていますが、Thinという軽めのウェイトと、高さを抑えた低いプロファイルに加え、浅いレイジングとブリリアント・フィニッシュによって、カドが取れた滑らかなサウンドに仕上がっています。
ブリリアント・フィニッシュのシンバルは、その外観からか、明るくきらびやかなサウンドであると認識されやすい傾向があり、実際にそのような仕上がりの楽器も多数存在していますが、実際にはそうとは限りません。
例えば、シンバルのボウをスティックのチップで打つとき、ブリリアント加工によって磨かれた表面は、より広い面積で接触することになるため、“Ping”と呼ばれる、触れた瞬間のサウンドが強調される側面があります。一方、楽器全体が振動して発音するプロセスでは、旋盤加工によって生じた表面がそのままの、ナチュラルやトラディショナルとされるタイプの方が、高域の倍音が複雑で豊かになる傾向があります。
A Custom Crashは、明るさやクリアさ、素早い立ち上がりといった、クラッシュに適したキャラクターと、ダークなシンバルともブレンドする余地のある、甘く落ち着いた響きが備わっていることから、最初に試すクラッシュにふさわしいモデルとしてセレクトしてみました。
もし、よりフレッシュで輝きのあるサウンドを求める場合、AジルジャンのMedium Thin Crashを試してみたり、甘さはそのままに明確にダークなサウンドを求めるならば、KジルジャンのSweet Crashを確認するなど、伝統的なクラッシュ・シンバルの中で、さまざまな方向に進むことができる、サウンドマップの中心点のような存在の1つです。
今月の逸品 2【SABIAN 16″&19″ HHX X-Treme Crash】


▲SABIAN 16″&19″ HHX X-Treme Crash
A Custom Crashを筆頭として、ここまでに取り上げたクラッシュとは異なるレイヤー/ベクトルを持ったモデルです。個人研究のレベルですが、2000年代の前半に、ジルジャンから発売されたFX(Oriental)Crash of Doomや、セイビアンのHHX Evolution O-Zone Crashが登場したあたりから、ウォッシュをさらに強調したような“トラッシュ(サウンド)”の概念がクラッシュにも浸透し、新しいモダン・クラッシュのサウンドが形成されてきています。そんな、現代的なタイプの隠れた名器とも言える楽器が、X-Treme Crashです。
エクストリームというと、メタル周辺の激しい音楽を連想する方もいらっしゃると思いますが、このモデルは薄く、しなやかなタッチで、ウォッシーでダークなサウンドでもあるので、現代的なジャズや、それに隣接する音楽との相性も良好です。
Aカスタムのクラッシュでは16″と18″をピックアップしていましたが、こちらは16″と19″です。一歩踏み込んだ、サイズ選びの考え方について説明しましょう。
ハイハットとライドのサイズと、並べられる枚数で、クラッシュのサイズを考える方法があります。具体的には、14″のハイハットと20″のライドで、ハイハットを除いて3枚を並べる場合であれば、16″と18″が筆頭の候補となります。この組み合わせは、カバーできる音域の範囲、使い分けの明快さに優れた要素があり、意識して向き合うと、現代のスタンダードになった理由がわかりやすいと思います。
同じ枚数でのセットアップ例として、このハイハットとライドが15″と22″になると、クラッシュは18″と20″あたりでしょうか。もし、この20″がライド寄りの楽器であれば、クラッシュは17″でもいいかもしれませんし、スタイル次第では18″に19″というのも良さそうです。
X-Treme Crashの16″と19″は、私が実際に長く愛用しているモデルで、他のシリーズを使用する際にも、よく使うサイズの組み合わせです。14″と22″の組み合わせで、さらに16″の帯域を抑えておこうとした場合、18″をサイズ・アップして19″にすることで、ハイハット以外の3枚が扱いやすくなるという利点があります。
徐々にマニアックになってきたので、今回はこのあたりにしておきましょう。
連載の第8回目で16“K Dark Crash Thinを取り上げた際、ウェイトに関して重点的に解説しています。併せて読み返していただくとよろしいかもしれません。
クラッシュの選び方にはいろいろな考え方があります。今回のコラムを参考に、ドラマーのセットアップを見直してみてください。新たな発見があるかもしれません。

Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。
公式X:https://x.com/takuya_yamamoto
【Back Number】


『That Great GRETSCH DRUMS』


