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アコースティックエンジニアリングが手がけた“ドラムが叩ける”プライベート・スタジオ Archive #11[千葉県 合原さん宅]

  • 取材:編集部 文:西本 勲
  • 撮影:関川真佐夫

“自宅で思いきりドラムを叩きたい。しかも良い音で”……スタジオやライヴ・ハウスなどの防音/音響工事を行う専門業者、アコースティックエンジニアリングが住宅に施工したドラム用防音室にフォーカスする連載企画。今回はプロ・ドラマー、合原晋平さん宅の自宅スタジオを紹介! コロナ禍で稼働を開始したプライベート・スタジオは、ドラム・レコーディングやレッスンなどで大活躍!

ドラムを自宅で録って納品する仕事は
さらに増えていくと思います

「以前から自宅で電子ドラムを使ってMIDIレコーディングの仕事も行っていたんですけど、やっぱり生ドラムを録りたいとずっと思っていました。さらにレッスンの仕事もしていて、そのたびに外のスタジオを借りるコストが気になっていたところ、家を購入するタイミングと重なり、だったらスタジオを作ろうと決心しました。周りに自宅スタジオを持っている知り合いが多く、いろいろ話を聞けたのも役に立ちましたね」

取材時にはラディックの1970年代製BIG BEAT(22″×14″BD、12″×8″TT、13″×9″TT、16″×16″FT)が置かれていた合原さんのスタジオ。中古で購入した木造住宅を全面リフォームし、スタジオ部分をアコースティックエンジニアリングが担当した。壁と天井は吸音面がメインで、レコーディング向きのデッドな室内音響となっている。「納品した後に扱いやすい音で録ることを考えた結果ですが、もちろん耳に聴こえてくる音も良くて、楽器による音の違いが細かいところまで驚くほどはっきりわかります」。
ドラム・セットからの眺め。レコーディング用に立てられたマイクの位置や角度など、エンジニアからの助言を受けつつ合原さんが研究を重ねている。手前に見えるスネアはラディックの現行Jazz Fest(14″×5.5″)、シンバルはすべてジルジャン。

スタジオが稼働したのは2021年の秋からだが、すでにここで40曲以上(2022年4月号取材当時)のドラム・レコーディングを行っており、その中にはメジャー・アーティストの楽曲もあるという。

2025年現在でも合原さんの自宅スタジオは大活躍で、高橋 優の「キセキ」のドラムは合原さん宅でレコーディングされたもの。
歌入れ前の音源に実際にドラムを録音する想定で収録した動画。詳細については、過去にドラマガWebで紹介した『動画で体感!アコースティックエンジニアリングが手がけた”ドラムが叩ける自宅スタジオの音”』を参照。

「録り音のクオリティは高いと、みなさん言ってくださいます。特に、床をコンクリートにしてもらった効果は絶大です。低域の膨らみが少なく、プラグインで処理しなくても素の音がバッチリ決まります。電源もトランスを入れてもらったので、以前は録音時にどうしても入ってしまっていたノイズがまったくありません。小さいドラム・セットをもう1台置いてレッスンも行っていますが、良い音で練習しやすいと好評です」。

トランス経由の専用電源やワイヤリングに対応できる通線口など、本格的なレコーディングを踏まえた設備が随所に。ドラム・セットの横に置かれたコンパクトなデスクには、コンパクトなProToolsシステムやプロ仕様のオーディオ・インターフェース、マイク・プリアンプなどが並ぶ。
廊下から木製防音ドアを開けると前室があり、そこからもう1枚のドアを隔ててスタジオ(左)と収納スペース(右)に分かれる。
もともとクローゼットだった空間を利用した収納スペース。「使っていない楽器などをスタジオに置いておくと鳴ってしまうので、こういう部屋があるのはとてもありがたいです」。ゆくゆくはコントロール・ルームとしても使えるように、スタジオとの間の壁には通線口(下の写真参照)が用意されている。

個人で活動するドラマーにとって、こうしたスタジオが仕事の幅を広げてくれるものであることは間違いない。「自宅でドラムを録る需要はとても多く、今後さらに伸びると思います。僕自身も引き続き、さらに上を目指して取り組んでいくつもりです」

リフォーム前の間取りを、合原さんの希望に沿ったスタジオに生まれ変わらせたレイアウト。高遮音仕様がもたらす性能も申し分なし。
こちらが2025年現在のスタジオの様子(合原さん撮影)。ドラム・セットの配置が変わり、スピーカーや壁掛けモニターも新たに設置。レイアウト変更によりできたスペースにオーバーヘッド・マイクが1本追加されているのもポイントだろう。

ドラム歴は20歳から。「専門学校の音響系学科に通っていたとき、ビクター・ルイスの演奏を間近で見て感動して、2年生の夏にドラム科に移りました。そこからは猛練習しましたね」。卒業後はバンド活動を経てジーン重村に師事し、プロとしてのキャリアを重ねてきた。「レッスンの仕事は、ジーンさんのスクールで一緒に教え始めたのがきっかけ。今はサポート・ドラマーの活動をメインに行っています。好きなドラマーは、ドラムを始めて最初に好きになったアダム・ダイチと、タイプは全然違いますが山木秀夫さん」。

合原さんが代表を務める『Ta-Low Studio Drum School
https://ta-low-studio.com

※本記事は2022年4月号掲載の記事を転載したものになります。

アコースティック
エンジニアリングとは?

株式会社アコースティックエンジニアリングは、音楽家・音楽制作者のための防音・音響設計コンサルティングおよび防音工事を行う建築設計事務所。1978年に創業して以来、一貫して「For Your Better Music Life」という理念のもと、音楽家および音楽を愛する人達へより良い音響空間を共に創り続け、携わった物件の数は2,000件を超えている。現在も時代の要請に答えながら、コスト・パフォーマンスとデザイン性に優れ、「遮音性能」、「室内音響」、「空調設備」、「電源環境」、「居住性」というスタジオの性能を兼ね備えた、新しいスタイルのスタジオを提案し続けている。

株式会社アコースティックエンジニアリング
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