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藤本夏樹[Tempalay]が愛用のラディック・スネアを語る!【ドラム奏者のギアじまん #1】

  • Interview & Text:Drums Magazine WEB Photo:Masao Sekigawa(gear) Design:HOPSTEP

プロ・ドラマーに愛器を “自慢”してもらい、独自のこだわりを深掘りしていくWEB新企画「ドラム奏者のギアじまん」が始動! 今回は、枠に捉われない実験的な楽曲&サウンドを届けるTempalayの藤本夏樹が登場。持参してもらったライヴでのメイン・スネアをテーマに、音作りの探究からスネア選びのコツに至るまで語っていただいた。

スネア選びの第一歩は
“理想のビート感”を見つけること

藤本夏樹:僕がTempalayの楽曲で目指しているのは、タイトで近くに鳴っている音像です。そのために、スネアはミュートをガッツリとかけて、ハイ・ピッチにチューニングすることが多いですね。

(オープン)リム・ショットは使わずに演奏するという自分のプレイ・スタイルもあって、レコーディングした音の質感や音量バランスをライヴで再現しようとなると、ミュートにも負けず、音量を稼げるスネアが必要になってくるんです。

そこで、去年からライヴのメイン・スネアとして愛用するようになったのが、今回紹介するラディックのブラック・ビューティーです。

Fujimoto’s GEAR
LUDWIG|Black Beauty Series Snare Drum
(14″×8″/ブラックニッケル・ブラス)

およそ8年前に購入し、2024年からライヴのメイン・スネアとして愛用しているという、現行品のラディックのブラック・ビューティー(LB408)。マイク乗りの良い綺麗な音を目指し、オープン・リム・ショットを用いずにソフトなタッチでプレイする藤本の演奏を、8”という深胴ならではの骨太なサウンドでバックアップしてくれる頼もしい存在のようだ。フープやストレイナーを含む本体周りのパーツは標準仕様で、打面ヘッドはレモのコーテッド・アンバサダー、ボトムはアンバサダー・スネアサイドというスタンダードな組み合わせ。タイトな音像のため、チューニングは基本的にハイ・ピッチで使用。

このブラック・ビューティーは、8の深胴というのもあって、パワーのある音量感と、タイトな質感を両立して演奏できるところがとても気に入っています。

今持っているスネアは全部で4台で、ブラック・ビューティーの他にはラディックのブラック・マジック、LM400、サブで使えるように“魔改造”したマーチング風のメタル・スネアというラインナップです。過去にはウッド系のスネアも1台持っていたんですけど、湿気などで音のコンディションが変わってしまうところが、自分にはちょっと難しくて……今のところメタル・シェルで揃えているのは、環境の影響を受けずに安定した音を出せるというのが大きいですね。

ドラム・テックの北村(優一)さんが持ってきてくれる機材を使わせてもらうこともよくあります。レコーディングでは、ラディックのアクロライトとか、標準的な深さのスネアを使うことが多いですね。ブラック・ビューティーは音量感がある分、Tempalayではライヴ向きなんですけど、厚めのヘッドを張って、ロー・ピッチのサイド・スネアとしてレコーディングに使うことも時々あって。最近の曲でいうと、「NEHAN」(5thアルバム『((ika))』収録)はブラック・ビューティーで録りました。

スナッピーは、最初こそ線の本数はあまり意識していなかったんですけど、スネアの音量感にも影響することに気づいてからいろいろと試すようになりました。24本線を使っていた時期がしばらくあって、もう少し増やしてもいいかなと思ったので、今はカノウプスの30本線をセットしています。個人的には、ゴースト(ノート)のツブに存在感があって、もはやゴーストに感じられないほど際立つビートが好きなので、スナッピーはかなりタイトに張っています。そうするとリズムはシビアになるので、うまくコントロールすることも大事になってきますね。

スネアの音量やゴースト・ノートの存在感の増幅のため、スナッピーは、カノウプスのバックビートスネアワイヤー(30本線)をかなりタイトにセットしている。線の本数については、「20本線では足りないし、40本に増やすと音が暴れてしまうので、今は24〜30本線で落ち着いている感じです」と藤本は語る。なお、スナッピーはこの他にも20製品ほど所有しているとのこと。

打面には、カノウプスと柏倉隆史の共同開発により生まれたキーマフラー(KM1)と、SUPERWEIGHTのレザー・ミュート(M80)をオン。オン/オフも手軽で、音色の使い分けがしやすい2種の組み合わせとなっている。特にキーマフラーは、「すごく良いアイテムで、普通のミュートでは足りなくなってしまうハイの音域をカバーしつつ、音の余韻を短くできるんです」と藤本も絶賛。

どんなビートの中でもスネアは本当に重要な楽器で、ドラマーとしてのキャラクター性や、“その人らしさ”みたいなものが一番わかりやすく表れる場所でもありますよね。Tempalayの音像とは違いますけど、最近だとノーミュートでプレイしている人のプレイも見て、めちゃくちゃカッコいいなと思ったりもしています。

(――藤本さんが思う、“自分に合うスネア選びのコツ”があれば聞かせてください。)うーん……難しいですね(苦笑)。バンド・サウンドとの相性もあると思うし、ドラマーによって目指したい音像もかなり変わってくるとは思うんですけど……スネア選びに迷ったら、まずは“このビート、好きだな。再現したい”と思うような、自分の理想のビート感を見つけることが第一歩ですかね。

次に、再現したいビートの音量バランス……ドラム・セットのどの音(の定位)がより近くに聴こえるかに注目することで、必要なスネアを絞っていけるんじゃないかと思います。例えば、“スネアの音は少し遠くにあるな”と感じるなら、音量感というよりは華やかさを重視して、浅めのスネアを試してみる、といったやり方ですかね。理想のビートと音像を研究していくことで、選ぶべき楽器は自ずと決まってくるのかなと思います。

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