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ドラムが叩ける!お宅訪問 #8[埼玉県在住 伊﨑さん宅]

  • 取材:編集部 撮影:関川真佐夫
  • 文:西本 勲

“いつでも好きなときに、自分のドラムを思い切り叩きたい”、そんな夢を叶えてくれるのが、プロ用のスタジオやライヴ・ハウスなどの防音/音響工事を多く手がける専門業者、アコースティックエンジニアリングが作るドラム用防音室だ。今回は、埼玉県に住む伊﨑さんのプライベート‏・スタジオをレポートしよう。

子育てと仲間の交流を実現
学生時代から夢みた至福のスペース

約6.1畳のスタジオ。細長いスペースの奥にドラム・セット、手前にベース・アンプ、ギター・アンプなどが置かれている。「普段は電子ドラムの簡易的なキットも組んでいて、夜遅い時間はそちらを叩きます。スタジオの性能としては生ドラムでも全然大丈夫ですけど、その方が自分の心理的にも楽なので」。

新築物件の利点を活かして
使い勝手の良いスタジオに

2022年に新築した一軒家に、自身の家族とご両親の二世帯で暮らす伊﨑さん。ドラマーなら誰もが考える“自分の家でドラムを叩けたら”という願いが芽生えたのは大学生のときだったそうだ。

「大学で軽音楽部に入っていて、バンドでプロになりたいと考えたこともあります。その頃から、ドラムを一生続けたいなという気持ちがありました。でもドラムの練習にはスタジオ代が結構かかるし、家で叩けたらいいなと思っていました。卒業後は普通に就職したんですけど、仲間達とバンドは続けていて、ドラマガの連載(本誌「アコースティックエンジニアリングが手がけた“ドラムが叩ける”プライベート・スタジオ」)を読んだりしながら、自分のスタジオを作りたいという思いは続いていました」

スタジオ作りをアコースティックエンジニアリングに依頼したのも、本誌の連載が理由だという。

「いろんな方の自宅スタジオを見て、いいな〜と思っていましたから(笑)。内装はこんな感じにしたいとか、スピーカーは天井から吊りたいとか、壁にテレビやギター・ハンガーをつけたいなど、全部ドラマガの記事を参考にイメージを膨らませて。九段下にあるショールームで、遮音性能の確認もさせていただきました。ドアの外にはどのくらい聴こえるのか、屋外にはどうなのか、といったことを疑似体験してからスタジオの遮音仕様を決めることができたのは良かったです」

アコースティックエンジニアリングのオフィスに併設されたショールームで佐野康夫がその響きを体感した記事がこちら

伊﨑さん宅は新築の注文住宅。そのため、スタジオを家のどの位置にどう作るかというところから計画を進めることができた。

「二世帯住宅なので、スタジオは親の生活スペースからなるべく離すことと、外からの動線などを考えて間取りを決めました。バンド仲間を呼んで音を出すこともあるので、玄関とは別にガレージからも家に入れるようになっています。スタジオはドラムの練習スペースという意味合いだけじゃなく、やっぱりバンド練習をやりたいというのがあって、みんなで集まって話したりお酒を飲んだりしながら、そこで音楽もできたらより楽しいかなと。今は仕事が休みの土日などに、月2~3回くらいそういう日を作っています」

木造2階建ての伊﨑さん宅。右のシャッターを開けると、倉庫として使っているガレージがあり、その奥にあるシューズクロークを経由してスタジオへ出入りすることができる。
写真の通り隣家との距離が近いが(右奥の窓のないあたりがスタジオ)、十分な遮音が施された結果、音漏れのトラブルは皆無だという。

家族との暮らしを大切にしながら
バンド練習‏/個人練習でフル活用

自宅に防音室を作ってドラムを叩くだけでなく、そこにバンド仲間も呼んで音を出すというのは、家族の理解があってこそできること。伊﨑さんの場合、奥様も音楽が好きでバンド活動を応援してくれているのだそうだ。

「よくライヴを観に来ていてメンバーとも顔見知りだったので、家に来てもらうことに全然抵抗がないんです。そこはすごく助かっています。練習するたびにスタジオ代がかかることもないし、私としては移動時間がないのもありがたいです。まだ小さい子供がいるので、スタジオへの行き帰りも含めて何時間も家を空けるわけにはいきませんから」

ドラム側から見たスタジオの様子。左奥の吸音パネル(サウンド・トラップ部分)と防音ドアの濃いブルーはドラム・セットに合わせたコーディネート。設計上の工夫として、配管の都合で床下にできた空間が共鳴するのを抑えるために床を分厚くしている。その結果、乾式床ながらコンクリート床に近い低域の締まったサウンドが得られたそうだ。

このように、家族との暮らしを大切にしながらスタジオを活用している伊﨑さん。1人でドラムを叩く時間はどのような感じなのか聞いてみると……。

「平日でも仕事が早く終わった日は、帰宅後に叩きます。子供が早く寝たら、そのあとにも30分くらい叩いたり。壁のテレビでBlu-rayやDVDを流しながらとか、YouTubeで演奏動画を観ながら練習したり……普通のテレビ番組を観ながら叩くこともあります(笑)」

バンド練習が行えるように用意された、YamahaのパワードPAミキサーEMX7。
エレクトロボイスのスピーカーZX1i-100(Black)を天井から吊るし、限られたスペースを有効利用。現在は吊り金具が世界的に供給不足となっているそうだが、ここはそうなる前に作られたので実現できた。
ゆくゆくはマイクも手に入れてドラムの録音もしたいそうだが、「今はこれで遊んでいます」というYamaha EAD10と、同社のコンパクト・ミキサーMG06X。

家にスタジオを作ったことが
子供達にも良い影響を与えてくれた

スタジオが完成してからもうすぐ3年。ドラムを叩くことが生活の中に自然な形で溶け込んでいる印象だが、まだまだやってみたいことがあると伊﨑さんは話す。

「もちろんドラムはずっと続けていきますが、今はほとんど弾けないギターやベースにも本格的にチャレンジしたいです。トランペットやサックスにもちょっと憧れががあるので、そちらにも手を出してみたいかな。あとは、子供達も楽器を演奏できるようになって、いつか一緒にセッションできたらうれしいですね」

外側は居住スペースの雰囲気に合わせた木製ドア。内側に鉄製の防音ドアを使っているのは、壁の遮音性がそれに見合うほど高いことの証でもある。

現在2人のお子さんがいる伊﨑さんは、子供の話題になるとさらに表情が和む。

「スティックを振るのが楽しいみたいで、おもちゃのドラムみたいなやつを買ってあげました。防音室に入れたこともあるんですけど、まだ大きい音はちょっと怖がるので、もう少し大きくなったら使ってくれるんじゃないかと思ってます。スタジオの取り合いになるかもしれませんが(笑)」

楽器を通じた情操教育という点以外にも、スタジオを作ったことは子供達にとって良かったと感じることがあるという。

「バンドのメンバーや友達が家に来るので、人と触れ合う機会が多くなるんです。特に上の子はいろんな人に懐いていて、気がついたら普通に遊んでいたりして。スタジオがとても良い影響を与えてくれたなと、すごく感じています。そういう意味でも、スタジオを作って本当に良かったなと思いますね」

「とにかくご近所に迷惑をかけないようにしたいと、ずっとお願いしていました」という伊﨑さんの要望に応えた高い遮音性能に注目。特に、スタジオの南側は隣家の勝手口がある位置に面しているため、より遮音性を高めている。
ドラム・セットはパールMasters Maple Complete。ブルーのフィニッシュは伊﨑さんが憧れたドラマー達(プロフィール欄参照)に由来する。スネア・ドラムはTAMA、フット・ペダルはDWの9002、シンバルはセイビアン、ジルジャン、パイステの組み合わせ。

※画像はすべてタップで拡大できます。

Profile●中学生のときに電子ドラムを買ってもらってドラムを始める。「高校ではサッカー部に入ったのでなかなか叩けなかったんですけど、同じ大学に進学した友達と一緒に軽音楽部に入って、またドラムを真面目にやり始めました。最初に好きになったドラマーはJanne Da Arcのshujiさん。高校生のころにDVDで観て、カッコ良いなと思ったんです。そこからブルーのドラムに目が行くようになって、9mm Parabellum Bulletのかみじょうちひろさんや、ONE OK ROCKのTomoyaさんにも憧れました」。

アコースティックエンジニアリングとは?

株式会社アコースティックエンジニアリングは、音楽家・音楽制作者のための防音・音響設計コンサルティングおよび防音工事を行う建築設計事務所。1978年に創業して以来、一貫して「For Your Better Music Life」という理念のもと、音楽家および音楽を愛する人達へより良い音響空間を共に創り続け、携わった物件の数は2,000件を超えている。現在も時代の要請に答えながら、コスト・パフォーマンスとデザイン性に優れ、「遮音性能」、「室内音響」、「空調設備」、「電源環境」、「居住性」というスタジオの性能を兼ね備えた、新しいスタイルのスタジオを提案し続けている。

株式会社アコースティックエンジニアリング
【問い合わせ】
TEL:03-3239-1871
Mail:info@acoustic-eng.co.jp
住所:東京都千代田区九段北2-3-6九段北二丁目ビル
HP:https://www.acoustic-eng.co.jp/pro/

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