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【Interview】宇多田ヒカル「SCIENCE FICTION TOUR 2024」を支えたアイザック・キジトのミュージシャン・ポリシー
- Interview:Rhythm & Drums Magazine Interpretation, Translation & Interview Support:Yusuke Nagano Photo:Tetsuro Sato
ドラムもレコーディングも愛している
心の底から僕が本当にやりたいことなんだ
今年、デビュー25周年を迎えた国民的シンガー・ソングライター、宇多田ヒカル。そのアニバーサリーを記念して、6年ぶりに開催された全国ツアー「HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024」では、イギリス出身のアイザック・キジトがドラマーとして初抜擢され、ベスト・ヒット曲の数々をグルーヴィーに叩き上げた。発売中のドラマガ本誌2024年10月号掲載「DM Debut」では、ツアーへの参加経緯やドラマーとしての意識を語ってもらったが、 ここでは誌面に収まらなかった未公開セクションをお届けしよう。
僕がヒカルと仕事しているのを見て
ロンドンのミュージシャン達が
すごく盛り上がっているんだ
●大学では、ドラムではなく音楽制作の分野を専攻されていたんですね。
アイザック ICMP(インスティテュート・オブ・コンテンポラリー・ミュージック・パフォーマンス)には、ドラムを学ぶために入学して、ディプロマを取得したんだ。だけど僕はずっと、レコーディング・ドラマーになりたかったんだよ。スタジオ・ドラマーにね。それで、途中からACM(アカデミー・オブ・コンテンポラリー・ミュージック)に編入したんだ。「ドラムはもう十分できるから、(ドラムに)もう1年を費やしたくないな」と思ったんだよね。
ACMでは、ミュージック・プロダクションを学んだんだ。だけど周りのみんなは、僕がドラムを叩けるとわかった途端、ギグに誘い始めた。そのときはもう「悪いけど、ホーム・レコーディングを学ぶためにここに来てるんだ」と言って断ったよ。まあ、その頃もドラムはたくさん演奏していたけど(笑)、レコーディング・ドラマーになるって信じていたからね。僕のインスタグラムを見てもらえればわかるけど、自宅で録音するのが大好きなんだ。ドラムも大好きだけど、レコーディングも愛しているんだよ(笑)。これが、心の底から僕が本当にやりたいことなんだ。
●あなたの出身地であるロンドンには、ユセフ・デイズをはじめ、素晴らしいミュージシャンがたくさんいますよね。
アイザック ユセフ・デイズ! 僕の友達だよ! あと、今(2024年7月)はロッコ・パラディーノ(b)も日本に来てるね。彼は一番仲のいい友達の1人なんだ。
●そんなロンドンのミュージシャン・コミュニティは、あなたのドラムにどんな影響を与えているのでしょうか。
アイザック お互いに良い影響を与え合っているよ。例えば、僕が良いなと思うミュージシャンを見たとき、その人に対してとてもうれしく思うと同時に、僕も練習をしなきゃって気にさせてくれるんだ。背中を押してくれて、前へ進む力になる。それと同様に、ロンドンのミュージシャン達が、僕が(宇多田)ヒカルと仕事しているのを見てすごく盛り上がっているんだ。今、彼らもさらに練習をしているよ。だからとても良い環境だと思う。
ジャズ、ロック、ヒップホップからポップス・シーンまで網羅するロンドンは、僕にとって最高の場所の1つだね。ロンドンの音楽シーンはとても大きいし、良い意味ですごく競争的だから、とても健全で自分のためになる。若手のとても素晴らしいミュージシャン達もいて、ジャズをやる人達、ポケット・ドラマーもいるし、スタジオで主に演奏する人、ゴスペル、ロック、とにかくすべてのジャンルのミュージシャンがいるよ。
全員が一生懸命準備してくる
これは本当に大事なこと
●宇多田ヒカルさんのツアー「SCIENCE FICTION TOUR 2024」に参加されていますが、イギリスと日本のポップスではどのような違いがあると思いますか?
アイザック ヒカルの音楽自体、曲によってまったくテイストが異なるよね。例えば「君に夢中」なんかは、過去の曲と全然違う。初期のR&Bの曲は、とてもイギリスのポップスに近いね。ヒカルの音楽は、あらゆるジャンルを混ぜ合わせたものなんだ。だから、ビートルズのような曲がいくつかあったりするし、そうかと思えば「ぼくはくま」みたいに完全に雰囲気が異なる曲もあるよね。
●確かにそうですね。宇多田さんの楽曲ではどのナンバーが気に入っていますか?
アイザック 彼女の曲は全部好きだから、特に絞っていなかったけど……そうだね、「In My Room」がお気に入りかな。
●ツアー・メンバーとの間では、彼女の歌に対してこう演奏しよう、といったディスカッションはあったのでしょうか?
アイザック 僕は、メンバー全員がプロフェッショナルだと感じているんだ。まず、メールで楽曲を受け取ったら、みんな曲をしっかり学んでこないといけない。だから、そういうやり取りをしたのはリハーサルのときかな。これをやって、あれをやって、ここの前はやらないでという具合いにね。音楽ディレクターに何回か電話をかけた気もするけど、とにかく全部問題なく進んだよ。僕達は全員プロフェッショナルだから、演奏内容の相談はまったくしなかったね。全員が曲を覚えて、やるべきことはすべてやってくる。一生懸命準備してくるというのは、本当に大事なことなんだ。
「SCIENCE FICTION TOUR 2024」への参加経緯や
プレイ・スタイルへのこだわりが語られた本誌掲載インタビュー&
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リズム&ドラム・マガジン2024年10月号