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SABIAN HHX ANTHOLOGY feat.ジョジョ・メイヤー with MASUKE
- Contents:Rhythm & Drums Magazine/Interview:Akira Sakamoto(Jojo Mayer)
今年創立40周年を迎えたカナダのシンバル・メーカー、セイビアン。そのアニバーサリー・イヤーを飾る新製品の第一弾として発表されたのが、ジョジョ・メイヤーとセイビアンの職人のコラボレーションから誕生したHHX ANTHOLOGY! ジョジョが“集大成”と語るこのモデルについて、本人の独占インタビューと、MASUKEによる試奏レポートを通じて迫ってみたい!!
Test Report〜HHX ANTHOLOGYをMASUKEがチェック!〜
Low Bell Cymbals
High Bell Cymbals
最初に買うシンバルとしてはもちろん
長く相棒として使えるセイビアンの中でも傑作
High Bellは、立ち上がりが良くて大きい音量の編成のバンドの中でも、“今、叩きましたよ”、“今、ここからこの感じのビートを出しますよ”っていうことをちゃんと伝えられるシンバルだと思いました。ロック寄りの演奏をしている人でも、物足りなさを感じることなく、でもうるさくならず、ちゃんと音色を楽しみながら、演奏できるシンバルだと思います。
Low Bellの方は、特に18″のシンバルが叩き方によってすごく差がつく印象です。サステインはHigh Bellに比べて短めですね。強く叩いても弱く叩いても、減衰の距離感は一緒なのですごく演奏しやすいシンバルだと思いました。アンサンブルの中に入ったときにも、すっきりした演奏ができると思います。クラッシュしたときのジュワっていう広がり……シンバルの一番美味しいジュワっとした広がり感は、Low Bellの方がより感じられるかもしれないです。
クラッシュでもライドでも使えると謳っているシンバルは、僕の個人的な印象では大体クラッシュ寄りなんですね。クラッシュの役割を果たすためには、ライドの方が犠牲になりがちで、その逆もまた然りで両立は難しいと感じていたんですけど、ANTHOLOGYはちゃんと両立していて、驚きました。特に22″はサイズ感も含めて見事ですね。High Bellの方はライドとクラッシュ両立している割合が、ライドが6、クラッシュが4とすると、Low Bellの方は5:5な感じがしますね。ちゃんとアンサンブルの中で演奏したときには、もっとくっきりとした差が出るのかもしれません。High BellとLow Bellの音量差は18″でも22″でもあまりないですね。両方一緒にセッティングしてもその点では心配はないです。18″と22″に関しては、Low BellかHigh Bellかということをあんまり気にしなくてもいいのかもしれません。どちらも素晴らしいので、それぞれの音色の違いは、ただのシンバルの個体差だと考えるのもありだと思います。
ハイハットに関しては、High BellとLow Bellで加工が全然違うので、18″・22″の印象と比べて音のキャラクターがはっきり分かれているのが面白いと思いました。High Bellはカチカチで、Low Bellはジュワジュワしている印象ですね。これは好みの分かれるところだと思います。High Bellの方は、鳴らす前のイメージよりもさらに硬かったですね。逆にLow Bellの方はイメージよりおとなしかったですね。下をHigh Bellのボトム、上をLow Bellのトップという組み合わせで使ってみたんですけど、すごく音楽的に良いマッチングになりました。自分の好きな組み合わせを選ぶにはこの4枚はいい選択肢が揃っていると思います。個人的には、上も下もLow Bellのボトムっていう組み合わせを試してみたかったですね。音自体はどれもすごく良いので、上下関係なくどの組み合わせにしても、鳴らし方やスティックを選ぶことで良いところに収まるような気がします。スティックを選ぶ基準としてのシンバルという意味では最高だと思いますね。これは18″、22″も含めてそう感じます。
叩き手の叩きたいように鳴らせる、シンバルの基準値がものすごく高いレベルで出せているシンバルだと思いました。スティックを(シンバルに)入れたぶんだけ、過不足なく反応してくれることに驚きました。前情報一切なしで試奏に臨んだのですが、ジョジョが開発に携わったシンバルということで、僕のプレイ・スタイルや好みよりもソフトだろうなと思っていたんですけど、全然そんなことないです。弱く叩いたときにちゃんと反応してくれるのはもちろん、強く叩いたときにも変に散らばることなく、すごく細かいことやっても全部ちゃんと聴こえてきます。あえて散らばるようにすることもできるし、だからこそ一発ずつ大事にしたいなと感じさせるシンバルでした。
シンバルの音を知る、シンバルのコントロールを身につけるという意味で、このANTHOLOGYは、最初に買うシンバルとしてはもちろん、ずっと長く相棒として使える楽器にもなってくれると思います。セイビアンの中でも傑作が出来上がったんじゃないでしょうか。ロゴがあえて控えめにデザインされているのも、“名前なんて書かなくてもわかるよ”っていう自信の表れなのかなと感じますね。
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