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    【LESSON.1】 知っておきたいドラマーの“役割”

    • Text:Yusuke Nagano/illustration:Chihiro Yaegashi

    リズムとフィルインが“要”

    ドラムを始めるに当たって、まずはドラム/ドラマーの役割について記しておきたいと思います。音楽の中でドラムが担っている役割はたくさんありますが、大きく分けると“リズム”と“フィルイン”の2つと言えるでしょう。1つ目のリズムは、バンドの土台となるリズム・パターンを演奏してアンサンブルをまとめること。2つ目は曲の展開に合わせて場面を盛り上げたり下げたりと、抑揚を操作することですが、その抑揚操作にはフィルインと呼ばれるフレーズをタイミングよく織り交ぜるセンスが必要となります。

    Rhythm〜リズム〜

    “ドンタン・ドンタン”……などと躍動感のあるリズムを演奏して、バンド・アンサンブルの土台を築くという点がドラムの最も大切な役割です。リズムを一定に保つことをリズム・キープと呼びますが、共演者が心地良く演奏できる安定感のあるリズムを叩くことは、すべてのドラマーが重要視しているテーマです。ただし、曲の中で速くなったり遅くなったりするのがすべて良くないことかというと、そうとは言い切れないのがリズムの面白くも難しい部分です。不本意にテンポを乱してしまう演奏は好ましくありませんが、曲の展開に則して、奏者が一体となってテンポが自然に変化する名演もたくさんありことを知っておいてください。

    そしてリズム・キープと共に大切なのが“ノリ”の部分。それを“groove”などと表現したりしますが、聴手をワクワクさせたり、リズムに乗って自然に身体を動かしたくなるような勢いが大切になります。譜面上は同じリズムを叩いていても、熟練者のリズムは一味違うものです。いつもそれを念頭に置いて日々の練習に取り組むことが上達のポイントでもあります。

    また曲にはいろいろなリズムの種類があります。ロック、R&B、ジャズなど音楽のスタイルに合わせてさまざまなリズムを叩き分け、曲の個性を際立たせるのもドラマーの役割です。ドラムに耳が慣れてくると曲の中で叩いているリズムを聴いただけで、この曲はロック風、ジャズ風などと聴き分けられるようになると思います。

    Fill-In〜フィルイン〜

    曲の中で、“ダカダカ・トコトコ・ジャーン”……などとリズム以外のフレーズを挟むことがあります。それをドラム用語で“フィルイン”と呼びますが、展開の節目に叩いて盛り上げたり、逆に静かな流れに導いたりと、抑揚変化を促す役割を果たします。フィルインは、“フィル”と短く省略して呼ばれたり、ベテランのバンド・マンなどには“オカズ”と呼ぶ人もいます。この“オカズ”という表現は、リズムを“白飯”に例えて、それを味つけするためのフレーズというイメージでしょう。

    フィルインは、曲の雰囲気に合わせて自由な感覚で演奏されることも多く、同じ曲の同じ場面でも、その日の気分で異なるフレーズを叩くドラマーもいます。従ってこれからみなさんがバンドなどを組んで演奏を楽しむときは、本来の曲中で演奏されるフィルインが難しければ、雰囲気を損なわないように簡略化しても構わない部分だと知っておいてください。そしてドラマーにとって最も大切なのは、主食となるリズムの部分で、それを崩さないようにフィルインでうまく味つけするのが、良いドラマーの秘訣です。

    ※本記事は『超ドラム初心者本』の内容を転載したものになります。本の詳細はこちら→HP