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沼澤 尚直伝! 音で聴く“黄金”のシャッフル・グルーヴ〜基礎編〜
- Recording:Naoyuki Uchida Interview:Rhythm & Drums Magazine Score:Michiaki Suganuma Photo:Yukitaka Amemiya
日本では苦手意識を持つ人が多いハネたリズム=シャッフル。しかし現在のポピュラー・ミュージックのルーツにあるリズムで、そのスウィングするフィールはグッド・グルーヴの鍵を握り、“苦手”という一言で避けてしまうのはあまりに惜しい。そこでここでは自身のバンド=ブルーズ・ザ・ブッチャーでブルーズ・シャッフルを多彩に操るグルーヴ・メイカー、沼澤 尚が“音源つき”でその基礎の基礎からレクチャー。苦手という人もとにかくサウンド&グルーヴを聴いてみてほしい。
Introduction〜日本に根づくシャッフルの考え方〜
シャッフルとは?
時代の流行り廃りによってかなり細かい部分で変化を遂げてきていますが、このリズムを生んだアメリカで自分が習った経験から言うと“シャッフル=3連符の真ん中のないリズム”(Ex-A)という一般的に知られている先入観を捨てる、ということがまず最初でした。いわゆる典型的な3連のシャッフルもありますけど、それだけではなく、いろんなバリエーションがあるので。“シャッフル=3連”と固定概念で片づけられて、“こういう簡単なリズム・パターンでしょ”、と解釈されてしまうことが最も危ないですから。例えばロバート・ジョンソンやライトニング・ホプキンスの弾き語りを聴けば、シャッフルが3連だけじゃないっていうことがハッキリとわかると思います。
そもそもカードのシャッフル、つまりトランプのカードを切る音がその由来で、簡単に言えばスウィングしているリズムがまず基本になります。そのスウィングも当然3連だけじゃなくて、16分だったり、6連だったり、バリエーションは無限にあるので。だからスウィングのコンセプトをまず理解することがシャッフルの解釈へそのままつながります。
小太鼓、大太鼓、シンバルなどバラバラだった打楽器を、ドラム・セットとして演奏するようになって確立された最初のビートがビッグ・バンドのスウィングで、そこからブルーズやジャズ、ロックンロールが生まれたので、このコンセプトをドラム・セットを演奏する上での大前提として知っておくのは悪いことではないと思います。
サブディヴィジョン
そのスウィングを理解する上でポイントになるのが“サブディヴィジョン”で、つまり4分音符から次の4分音符までの長さをどうやって表すのかっていうことなんですけど、アメリカのドラム教育では、それを理解するところからスタートします。何よりも先にやるのが、シンバルを使ったスウィング・ジャズのタイム・キープで、どんな練習でもまずここから始まって、すべてそこを踏まえた上で行われます。
ジョー・ポーカロの『Drum Set Method』っていう教則本があるんですけど、そこで最初に説明しているのもやっぱりスウィングの解釈の仕方について。シンバル・レガートの譜面があって、その8分音符をテンポによってどう表現するのかが、“この場合は3連”、“この場合には16分”っていうように明記してあります(Ex-B、C)。でもそれはあくまでも目安として記してあるだけで、決まりということではない。つまりタイム・フィールとして演奏するには、その分け方が無限にあるよ、ということなんです。サブディヴィジョンが無限であることを理解しておくことは、ドラム自体ではもちろん、回りにどう対応するかということでとても重要ですから。
ストレートとスウィング
スウィングというフィーリングを表現するためには、まずストレート=イーヴンとの明確な違いをちゃんと知っておく必要があります。ストレートでイーヴンな8分音符とスウィングしている8分音符。同じ場所にやってくる4分音符を右手が表していたとして、それ以外の左手、両足をその合間のどこのどの辺に置くのかでストレートとスウィングを表現する。これによってシャッフルはもちろんですが、それ以外のいかなるグルーヴもまず何よりこのコントロールがどれだけできるかがすべてになってきます。
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