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Archive Interview – ピエール中野[凛として時雨]2009年7月号
- Interview & Text: Rhythm & Drums Magazine Photo:Yoshika Horita
ピエール中野[凛として時雨]のアーティスト・ブック発売を記念し、ドラマガWebでは本書の特設サイトを公開中! ここでは試し読みコンテンツとして、書籍に再収録予定の本誌掲載インタビューを一部ピックアップ。前回お届けした初インタビューに続いて、ここでは、リズム&ドラム・マガジン本誌2009年7月号掲載のインタビュー記事を紹介。こちらも本人の最新コメントと共にお送りしよう。
リズム&ドラム・マガジン2009年7月号掲載インタビュー
僕が8ビートを叩くと
8ビートに聴こえない
●アルバムを聴かせていただきましたが、とてもバラエティに溢れたアルバムになっていますね。前作『Inspiration is DEAD』と比べると、今作『just A moment』はより練って作られたのではないかと思ったのですが、いかがですか?
ピエール そういう印象がありました? 僕らとしてはいつも通りにやったつもりなんです。基本的には作り手である北嶋君(TK)の楽曲や世界観ありきで、それに自分のドラムを当てはめていくっていう作業になるので。だから彼の作る楽曲の幅とかクオリティが単純に上がっているっていうことだと思います。
ドラムも特に意識したり、以前と比べたりというのではなく、ほとんど無意識に出ているのだと思います。もともと引き出しにあったものとか、聴いてきた音楽、リズムとかが、自分のフィルターを通して出ていったっていうことだし、それが出せるような楽曲が増えたんだと思います。なので、練って作るというよりは、考え方も含め、逆にシンプルになっているような気はしています。
●前作ではTKさんが持ってこられた曲のデモ・テープには基本となるリズムが入っていると言われていましたが、今回は?
ピエール 1曲まるまるデモで打ち込んであるのもありましたし、リフだけ用意されていて、「これに合わせてドラム叩いてみて?」って言われたり、あとは何もない状態から「こんな感じのドラムを叩いてみて」とか。で、そこでドラムを録音して「ありがとう」って言われて終わったり、その場は(笑)。で、何だったんだろうって思ってると、持って帰ってそこからデモを発展させていて「こんな感じでやりたんだけど」って提示されて、曲を仕上げていくっていう作業もありましたし。結構いろんなパターンがありました。そこから「これだったらこういう方が良くなる」とか、「これはできないからこうします」とか言ったりも(笑)。
北嶋君は感覚で作るタイプなので、無理難題を突きつけてくるときも当然あるわけですよ。それを何とか再現しようとするんですけど、「それよりこういうふうにやった方が合理的だし、攻撃性があるよ」とか、「良い音、良いリズムになるよ」っていうのはきちんと提示できるようにはしていて。そこで僕が提案すると北嶋君は「じゃあそれで」っていう感じなので、それで物事が進んでいくんです。
●特に今回は1曲の中での展開が多い曲がいくつかありますが、ドラムのパートを作るときは1曲の中で部分ごとに考えていくんですか? それとも1曲全体を見渡した上で考えていくんですか?
ピエール 最初から“全体”では見てないんですよ。部分部分で見ていって、つなげたときに違和感があったりするとフィルやパターンで変化させてつなげていくっていう作業をしています。
●ただ、今作に収録されている楽曲はこれまでのものより、フィルが少なくなっている気がします。
ピエール そうですね、フィルは減っていると思います。今までよりは。もともとする必要がなければ、しなくていいものだと思っているので。「moment A rhythm」なんてフィルを抜いてますからね。例えばスネアを抜いたりとか、(いわゆる)フィルっぽくないフィルインとかをやっていたりするので。僕は手数が多いと思われがちなんですけど、そのへんは意外とシンプルな考えでやっているんです。
●だからなのか、基本となるリズムが前面に出て面白い感じになっていますね。
ピエール そうかもしれないですね。今回あらためて思ったのは、僕が8ビートを叩くと8ビートに聴こえないな、と。何か複雑なビートに聴こえてきませんか? 「JPOP Xfile」のイントロとか特にそうなんですけど、あれは“ドドタン、ドドタン”っていう普通の8ビートじゃないですか、譜面に書いたら。でもただの“ドドタン、ドドタン”に聴こえないっていう。それはハイハットの感じなのか、音のバランスなのか、音作りなのか、それが全部関係しているとは思うんですが、そこは自分のいいところだな、と。最大の武器であるなとあらためて思いましたね。
Review 〜当時のインタビューを振り返って〜
ピエール中野「インタビュー慣れしてきて、ドラム・パート構築の様子をしっかりと伝えてます。時雨の場合、いまだに全体像はわからないまま作っているので、とにかくその瞬間にカッコいいと思えるフレーズをしっかり演奏するに尽きます。基本となるリズムが複雑に聴こえるのは、それぞれの楽器へのタイム・コントロールが複雑だからというのと、ゴースト・ノートの入れ方が変則的だからだと説明できます。レコーディングも手探りでいろいろと試していた時代でしたね。20歳になるのが怖かった話がすごく懐かしいし、あの感覚は他にないです。すごくいい話。組み合わせの掛け算で、唯一無二の個性につなげる考え方もこの頃には確立してました」。
12月14日発売の『ピエール中野[凛として時雨]アーティスト・ブック』では、このインタビューの続き&過去の掲載記事をまとめて読める!
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Artist Book
ピエール中野[凛として時雨]
今年CDデビュー15周年を迎えた凛として時雨のドラマー、ピエール中野。ドラマーとしてはもちろん、プロデューサー、DJ、MC、ヘッドホン/イヤホンの監修など、その才能を多方面で発揮している。本書ではそんなピエールのマルチな魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。録り下ろしによる最新の超ロング・インタビューでは、そのルーツやドラマーの軌跡はもちろん、求められる自分になる方法や、セルフ・プロデュース術などにもフォーカス。ドラム・セット5台、スネア・ドラム24台を核とした膨大な機材コレクションや、愛用のイヤモニや監修したイヤホンも30ページ以上に渡って掲載! さらにリズム&ドラム・マガジンでこれまでに行ってきたインタビューを再収録する他、関係者によるコメントや撮り下ろし写真を駆使したプレイ・スタイル分析なども掲載。ドラマーとしての魅力を凝縮したアーティスト・ブックでありながら、“人生の歩き方”もわかる世界的にも類を見ない1冊です。
-掲載予定コンテンツ-
Special Interview
Biography
Gear
Drumming Style
Archive Interview
Discography、etc.