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【動画連動】大坂昌彦 ✖️ アコースティックエンジニアリング〜プロのスタジオ活用術!〜

  • 録音:鹿間朋之/動画撮影:竹川彰人/スチール撮影:八島崇
  • 取材&構成:編集部/文&編集:西本勲

“自宅で思いきりドラムを叩きたい。しかも良い音で”……スタジオやライヴ・ハウスなどの防音/音響工事を行う専門業者、アコースティックエンジニアリングが住宅に施工したドラム用防音室にフォーカスする連載企画。今回は特別編として、日本を代表するジャズ・ドラマー大坂昌彦が2020年に完成させた自宅スタジオを再び訪問し、ソロ&トリオ編成によるデモ動画を制作した。練習、レッスン、YouTubeでの発信などフル活用しているスタジオを「最高の環境」と絶賛する大坂のコメントと併せて、自宅で収録したとは思えない表情豊かなサウンドを堪能していただきたい。

プロ・ドラマーとしての危機感に
動かされてスタジオ作りを決意

スタジオを作ろうと決めたときのことを「一念発起して家探しから始めた」と話す大坂。そして地上3階(木造)+地下1階(RC工法)の住宅を購入し、地下をスタジオに改装した。そのきっかけとなった2019年の北京ドラムサミット出演については前回の記事で説明しており、今回の動画でもリアルな言葉で語っている。

プロ・ドラマーは仕事でドラムを演奏する機会が多く、自宅でもドラムを叩きたいという欲求はあまり切実ではないのでは?と思う人もいるかもしれない。実際、大坂も以前は同じような考えを持っていたようだ。

ちょっとうがった言い方になりますが、日頃ライヴなどでめちゃくちゃ忙しいし、スクールでも教えているので、まあ毎日ドラム叩いているから……”という感覚を持っていました。でも北京ドラムサミットでの体験を経て、やっぱり家でもドラム叩かないとって強く思ったんです」。

施工前約10畳→施工後約9畳のスペースに作られたスタジオ。前回の取材時は、対面レッスン用に2台のドラム・セットを置いたセッティングで撮影を行ったが、今回は大坂の愛器であるYamaha PHXのみを置いた状態。ドラムの下に敷かれていた市松状のタイル・カーペットは外され、現在はドラム・マットを使用している。

こうして自宅スタジオ作りを決意した大坂が依頼先にアコースティックエンジニアリングを選んだのは、「ドラム・マガジンの連載を見ていたから」と実にストレートなもの。

その連載でアコースティックエンジニアリングのことは知っていたし、僕のかつての生徒だった吉岡大輔君というドラマーも掲載されたことがあるんです(2010年3月号)。それを見て、“スタジオ持ってるんだ、いいなあ”と思っていました」。

ドラムの反対側に置かれたピアノ、存在感のある掛け軸、ドラム・セットとシンバル、そして内装のトーンが全体でコーディネートされたように調和している点にも注目したい。
室内で一際目を引く5本のライン。木の幅と間隔は図面上で何度も検討を重ね、最終的にこのバランスに落ち着いたそうだ。設計を担当したアコースティックエンジニアリングの中島 元氏曰く「化粧材1本1本の太さ・間隔・色のバランスが、ちょうど良いところに配置できました。これはドラム・サウンドの音量バランスやタイミングに通じるところがあると思います。大坂さんにも気に入っていただけて、とてもうれしく思っています」。

スタジオを作るにあたり、大坂は「デッドな音のスタジオにしたい」とリクエスト。ジャズ・ドラマーからの要望としては意外に思える。その理由について前回の記事では、対面レッスンを想定して「ドラム2台で演奏してもうるさく感じないように」という大坂の言葉を紹介したが、今回も「自分の叩いている音がうるさいと感じると、プレイに大きく影響するんです」と説明。コメントの続きはぜひ動画で確認してほしい。

壁の大半が吸音パネルで覆われているほか、天井にも吸音パネルを広い範囲で設置してデッドな鳴りを実現。アコースティックエンジニアリング中島氏によると「天井の吸音を増やすと、よりデッドな音響になります」とのこと。
「ダークな感じの床に」という大坂の要望で選ばれた床材は種類が豊富で耐久性もある塩ビタイル。
天井と壁の間に設けられた換気のための梁型は、木製の反射面。下側をカットした形状で、音の反射を分散させる効果がある。
黒く塗装された木製防音ドア。外側にあるもう1枚の木製防音ドアとの間には収納つきのスペースがあり、遮音性向上に貢献している。天井高確保のためスタジオの床を下げているのもわかる。

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