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アコースティックエンジニアリング meets 川口千里〜プロ・ドラマーが体感したショールーム・スタジオの響き〜
- Photo & Movie:Akito Takagawa/Text:Isao Nishimoto
- Recording & Mix:Masakazu Kimura
レコーディング・スタジオ、ライヴ・ハウスなどの防音/音響工事を行う専門業者、アコースティックエンジニアリング。一般住宅の防音室も数多く手がける同社は、東京・九段下の本社オフィスにショールーム・スタジオを構えている。依頼主が遮音性能や室内の響きを確かめ、納得した上でスタジオ作りに臨めるようにと考えられたショールームを、新世代のテクニカル・ドラマーとして活躍目覚ましい川口千里が体験! 自身のドラム・キットで演奏したデモンストレーション映像を通して、アコースティックエンジニアリングが作るスタジオの“音”を体感していただきたい。
多様なマテリアルを組み合わせて
ニュートラルな響きを作る
ショールームがあるのは一般的なオフィスビルの1階。上階には他の会社が入居しているが、十分な遮音が施されており、バンドが大音量で演奏しても問題なし。動画収録を行ったのは約10.6帖のメイン・ルームで、小編成のバンド・レコーディングが可能。ドラムの録音にも十分対応できる広さだ。



自宅に防音室を作る目的でショールームを訪れる人は、まず一番に遮音性をチェックすることが多く、特にドラマーはその傾向が強いという。ここの遮音性については川口も動画でコメントしているが、アコースティックエンジニアリングが重視しているのは、遮音性を確保した“その先”のことだ。
ショールーム・スタジオの設計を手がけた同社代表の入交研一郎氏は、「ベタベタに吸音されたデッドすぎるスタジオにはしない、というのが弊社の基本的な設計方針です」と説明する。
入交「気持ち良く演奏できる響きがあって、部屋のアンビエンスも含めて綺麗な音で録れて、モニター・ルームとしても自然かつ正確なモニタリングができる。このショールームは、そういうコンセプトで作っています。大きな特徴は、内装にいろんな種類のマテリアルを複合的に使っていること。ドラムのシェルはマテリアルによって響きが違いますよね? 部屋も同じで、木の板でできた部屋は板の響きがするし、コンクリートならコンクリートの響きになる。そこで、いろんなマテリアルを使うことによって、癖のないニュートラルな響きを作ろうと考えました」。




入交「実際にスタジオを作る際は、お客様からのヒアリングを通して、お好みの響きになるように設計していきます。例えば、ジャズ系が好きなら柔らかい響きを、打ち込みの制作スタジオならソリッドで分離の良い音を、といった具合いです。このショールームは、そのためのベンチマークのような立ち位置ですね」。
川口千里によるレポートは次ページ