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【Report】スティーヴ・ガッドが極上のサウンドで会場を包み込んだジェームス・テイラーの来日公演!

  • Report:Seiji Murata
  • Photo:Masanori Doi

4月6日、東京ガーデンシアターは、ジェイムス・テイラー&ヒズ・オールスター・バンドによる極上のサウンド&リズムと温かい雰囲気に包まれた。ジェイムス・テイラー(以下、JT)の来日公演としては、10年に日本武道館で2日間行われたキャロル・キングとの“トルバドール・リユニオン”や、15年の小澤征爾80歳記念公演があるが、単独としては1995年の中野サンプラザ以来、実に29年ぶりになるという。

しかも今回のステージは、この一夜限り。この1点だけでも、このライヴが貴重だということがおわかりになると思うが、本誌読者にとってもJTの、人生のさまざまな経験、その心の機微を染み込ませた歌々をスティーヴ・ガッドの生演奏で聴けるという、またとない機会。

当日は、日本のスティーヴ・ガッド的存在とも言える島村英二さんや、横山和明さんもガーデンシアターにいることをSNSに投稿していたが、残念ながら足を運ぶことができなかったドラマーがたくさんいたことも、後日耳にした。ここでは可能な限り、2時間に渡るステージを詳細に振り返ってみたいと思う。

“An Evening with James Taylor & His All-Star Band”と銘打たれたこのライヴは、JTの2024年ツアーの実は初日となる。つまりここからアジア〜オーストラリア〜ニュージーランド、そしてアメリカ全土へと9月にかけて(4月下旬現在)およぶツアーの1本目。

オールスター・バンドは、スティーヴ・ガッドをはじめ、ジミー・ジョンソン(b)、ケヴィン・ヘイズ(key)という、お馴染のツアー・メンバー=“ガッド・バンド”の面々で、ギターは今回、名バイ・プレイヤーのディーン・パークスが務めることとなった。このメンバーの名を聞いただけで、“絶対観たい!”という人も多かったはずだ。

定刻18時、ステージ袖から姿を見せ、中央に進み出ると帽子を取って「こんにちは」と挨拶すると割れんばかりの拍手に包まれる。初期代表曲「彼女の言葉のやさしい響き」の透明感のあるギター・アルペジオと穏やかな歌声、そして3声の美しいハーモニーが鳴り響くと、静かな“ッッタッタントン”フィルでドラムIN。このフィルだけで曲のグルーヴすべてが感じられる。クローズド・リム・ショットによるグルーヴだが、その音色が、この後、1色ではなく曲によってさまざまに使い分けられていることに驚くこととなる。また時折、バス・ドラムを1発、“意味”のある絶妙な場所に入れるなど、すでに1曲目で“ガッドらしさ”に引き込まれていた。

MCで、1967年に書いたこの曲が、ロンドンでポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンに聴いてもらい、翌年アップル・レコードと契約することになったことや、この会場は美しいグッド・スポットだ(次のMCでも「ここは音楽するには最高の場所だね」)と話すと、続いてまた1stより「レイニー・デイ・マン」へ。ハイハットの4カウントからもう歌っている……単なる“点”ではなく絶妙な音の幅を、当然だが、場面場面でさまざまに使い分けるプレイに、またこの後、何度も耳を奪われることとなる。ちなみに、エンディングのトップ・ハイハットでのロールで、トップ・ハットのピッチはけっこう高いんだなと思った。

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来日公演のハイライトとなった
JTとガッドのデュオ