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【Interview】KOUHEI[04 Limited Sazabys]『Harvest』リリース・インタビュー
- 文:編集部 撮影:藤井 拓
フィルに奇数を入れ始めて
世界が一気に広がった
1拍目のバスドラを抜くという“優しさ”
●リード曲にもなっている「Honey」はストレートな歌詞と綺麗なメロディで、ドラムのアプローチもそこをすごく聴かせたいのかなという印象を受けました。
○まさにその通りですね。GENが持ってきたときに、“これは本当に余計なことしないでおこう”と思って作ったので、フィルに関しては歌に寄り添えば何でも大丈夫だなっていうのがあって、出てきたものをそのまま、何も難しく考えませんでした。落ちサビに入るところのフィルはタムを上から降りていくのか、“ダンダンダンダン”にするのかはメンバーと話し合いました。それでダンダン〜に決まったときに、落ちサビで1拍目はシンバルだけでバスドラを抜こうと思ったんです。そういう手法があったのは知っていたんですけど、フォーリミでやったのは初めてですね。そこで“優しさ”が出たな、みたいな(笑)。優しさの表現としてバスドラを抜くというところに辿り着きました。
●「Cycle」は冒頭のフィルがトリッキーでカッコいいですね。
○「Cycle」あたりからフィルの考え方とか幅が広がった記憶がありますね。
●それは何かきっかけがあって?
○『SOIL』のツアーが終わって、自分は今後どうなりたいんだろうって悩んで、いろんなドラマーと話したんです。そのときに神田リョウ君とスタジオに入って、「フィルってどうやって考えてるの?」と聞いたときに「16分音符でも無限に割り方ない?」という話になって「奇数を入れ始めると訳わからなくなるよね」って言われたときにハッとしたんですよ。そこからいろんなパターンを試していくうちに、その作業がすごく楽しくなってきちゃって。そのおかげで「Cycle」の最初や「Jumper」のアウトロができていって、味しめちゃってますね(笑)。もちろん何でも使えばいいってわけじゃなくて、俺の場合はメロディみたいに自分で歌ってみて、気持ち悪いとか、カッコ良くないというのはボツにします。でも奇数ってやっぱりキャッチーじゃないので、どうキャッチーに聴かせるか苦戦した気がします。
●でもこのフィルが聴こえたら“「Cycle」だ!”と思うあたり、キャッチーに仕上がっているのではないかと思います。
○よかったです。そう思ってもらえてうれしいです。
●次の「hug」はポップに聴こえますけど、めちゃくちゃ速いですよね?
○(BPM)230です(笑)。でもそれがねらいだったんです。ちょっと柔らかめ、いわゆるハネ系の曲も1曲欲しいなと思って。以前の曲だと「milk」なんかがあったんですけど、それは結構温かい系で、それよりはキャッチーとポップに寄せようともともと考えていて、じゃあ速さは徒歩よりはスキップ寄りかなと作っていった記憶があります。
●「Galapagos Ⅱ」は展開がめまぐるしいですよね。入れたいリズム・パターンをどんどん入れていこうと思って作っていったのですか?
○そうですね、テンポ・チェンジはもともと決めていて、まずはイントロのパターンが思いついたので、「ここはこう叩くからこう弾いてくれ」とHIROKAZに頼んで、Aメロからは“アホっぽく”、ウラ打ちにしてめちゃくちゃ明るくポップになればいいなと思ったんです。で2ビートを挟んで、キャッチーにサビ終わったと思ったら“ナメてる”感じに戻って、という(笑)。そういう“面倒くさい”感じはテーマとしてありましたね。ゆっくりなところはダルい感じで歌って、アホっぽくなって、いきなり速くなって、サビ終わったらまたナメてる感じに戻る。面倒くさいって、いろんな感情があると思っていて、それを体現できたら、楽曲でもしょうもないことに対して中指立てられたらなと、フォーリミの中でも一番ヤンチャな部分が出せたなと思います。
ゴースト・ノートがいらないのも
フォーリミらしさにつながっている
●「Harvest」は後半でめちゃくちゃ速い2ビートになりますが、インタールード的な曲というのは考えてはいなかったんですか?
○「Harvest」はGENからアイディアがきたときは全部弾き語りだったんですけど、アコギ1本でそれっぽい雰囲気が出ていたので、ただアコースティックにするにはちょっとフォーリミっぽくないなと思っちゃって。アルバムだけどインタールード的にする必要はないなと思ったので、後半をもう思いっきり速い2ビートにしてみたら意外と受け入れてくれましたね。これもフォーリミっぽい考え方なんですけど、ライヴを考えちゃうと、セットリストから外れる可能性があるのはもったいないなと思って、それで自分達が一番大事にしてきた2ビートも両方出せたらいいかなと思ってできた曲です。
●「Just」もフレーズが全編通して練られている感じがありました。ラスサビ前のスネアの連打や、8分音符のシンプルなアプローチには思わず舌を巻きました。
○ありがとうございます。すごくうれしいです。ラスサビ前のスネアに関してはすごく考えて、これまでの曲で使っちゃったアプローチもあって選択肢の幅も狭まっちゃって、3日くらい寝られなかった記憶あります。何が正解かわからなくなってたんですけど、そのスネアの連打を選択したときに“俺よう頑張ったな”ってなりました(笑)。メンバーからも「あそこいいね」って言ってもらえたし、“やったぜ俺”ってなりましたね。ラスサビ直前の“ダツダツ〜”の部分は連打じゃないなと思っていたので、ここはシンプルにしてあげようと思って。でも単純なアプローチだと面白くないので、ひねくれ部分、ウラとオモテが入り混じればいい感じかなと思って組み立てました。1番のBメロも結構悩みました。
●クローズド・リムから盛り上がっていく部分ですね。
○自分のアプローチに対してギターがどう弾くかも関わってくるので、そこに関しては「こう弾いてほしい」とお願いした記憶があります。ドラムとギターの兼ね合いで考えていたので余計時間がかかったのかもしれないです。
●最近ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤さんと伊地知さんの対談をしたときに“曖昧なゴースト・ノートがなくなった”という話になったのもあって気づいたのですが、KOUHEIさんのプレイにも、ゴースト・ノートがほとんどないですよね。
○昔は使ってたこともあったんですけど、俺の場合、ゴーストのニュアンスってコンプをかけると出づらいということにあるとき気づきまして、“このニュアンスで叩いてないんだよな。このニュアンスを出すために音のレベルを揃えると、めちゃめちゃ音圧が下がっちゃうな”ってなったんです。それでフォーリミでゴーストを使うことのメリットがそこまで感じられなくなったんです。効果的であれば使うんですけど、フォーリミは楽曲に対して効果的に作用する場所がないんです。それがらしさでもあると思うんですけど。
●それでは最後に、アルバム・ツアーに向けてのメッセージをお願いします!
○アルバムを出してのツアーがもう4年ぶりになるんですけど、やっぱりバンド冥利に尽きるというか、作品を引っさげてツアーするのは企画ライヴとはまた違った思い入れがありますし、4年間培ってきたものと一緒に演奏できるので、それを噛み締めてもらいたいと思います。自分達も1本1本、はじめましての対バンも多いので、そういう久しぶりの感じを存分に味わいながら回れたらと思います。目撃できる人はぜひ楽しみにしてほしいし、ワンマンもありますので、一緒に育てて、一緒にライヴしましょう。