プランのご案内
  • PLAYER

    UP

    【Report】異色の2人が共演! FUYUソロ・ライヴ・ツアーでフレデリック高橋 武と繰り広げた熱狂のドラム・セッション

    お互いに譲れない部分を誇示しながらも
    触発し合い呼応し高めあった貴重な一夜

    ここで2人はトーク・コーナーへ。ここからが濃密だった。参加者から寄せられた質問にも答えながら、バンド・ドラマーとセッション・ドラマー、境遇や身を置くシーンなどまったく異なる2人はお互いに聞きたいことがごまんとあったようで、日米でのドラマーの考え方の違いやメンタル的な話、技術的な話、機材のトピックなどなど、語り合うこと何と30分以上! その中でも特にヒートアップしていたのは音作りに関する話題で、高橋が「チューニングはまず目指している音を知っているかどうかが重要だと思う。ラーメン屋さんを開きたい人がインスタント・ラーメンばかり研究する、インスタント・ラーメンの味を知ることも大事だけど、そればかりで本当にラーメン屋として成り立つのか。その音を出したいなら、基本や王道、そこから派生してたくさんのリファレンスを自分の中で蓄えることが大事で、“チューニングがうまくいかない”というのは、音に正解があるわけではなく、自分が目指すべき音がどういう音なのかを再現できるかどうかが大きいのではないか」と語っていたのが印象的だった。

    機材についてのトークでは、シンバルの枚数やスローンの高さなど、大きく違うお互いのセットに興味津々で、それぞれのセットを交換して座ったかと思いきや、セッションがスタート! やはりお互いのセッティングというのが大きく影響しているのか、FUYUは高橋寄りに、高橋はFUYU寄りのドラミングになっていたと感じたのは筆者だけだろうか。

    トークがひと段落すると、FUYUが再び音源に乗せてソロを披露。RED DIAMOND DOGS「RED SOUL BLUE DRAGON」の最新アレンジとSilver Kidd「Cloud 9」が演奏された。先ほどのソロとはまたテイストの違う骨太のロック・ナンバーで、FUYUの演奏もダイナミックかつパワフルに変化し、大きく振りかぶったりスティック回しを入れ込むなど、より魅せるドラムに特化。“バンド・ドラマーFUYU”としてのパフォーマンスを見せてくれた。

    イベントのラストは2人によるこの日だけの特別なツイン・ドラム・セッション! トーク中に話題に挙がった、自然の音やイメージをドラムで表現するといった内容に触発されたFUYUがシチュエーションを提案し、それに沿った形で物語を展開するようなセッションをしていくことに。テーマを“海から見える森”と題し、シンバルの繊細なタッチでセッションはスタート。はじめは凪のような優しく穏やかな音色が、さざなみ、大きな波、そしてだんだんと砂浜に近づいてきたことを感じさせるサウンドへと変化していき、高橋がクローズド・リムとフェザリングのような弱音のバス・ドラムでシームレスにビートをスタート。徐々に2人がビートを共有しヒートアップしてくると、そこからは自然と8小節ごとにソロをぶつけ合うドラム・バトル状態に発展。お互いに目を合わせながら、いつどのように仕掛けるのか、虎視眈々とねらいつつも楽しみ、面白がる様子が非常によく伝わってくる。熱量は途切れることなく続き、互いが互いを鼓舞し、最高潮を更新し続ける中、バトルは終了。2人はもちろん、固唾を飲んで見守った観客からも清々しい表情が感じられ、東京公演は幕を閉じた。

    FUYUが高橋と共演してみたかったというリクエストで実現した、通常のライヴやイベントではなかなか見られないレアな組み合わせ。繰り出されるドラミングは確かに系統が異なり、お互いの矜持を誇示するような、譲れない部分が見られながらも、触発し合い、呼応し、新たな面も見えていく貴重な夜を体感した。

    ◎Live Gear

    FUYU’s TAMA Superstar Classic

    今回のツアーでは各地でドラム・セットをレンタルしていたFUYU。ここでは大阪公演での機材をキャッチ。キットはTAMA Superstar Classicで、シンバルはマイネル。刻みの要となるハイハットとライドはそれぞれJazz HatsとExtra Dry。スネアは計3台で、メインがMastercraft THE BELL BRASS、左手のサイドがエイブ・カニンガム・シグネチャー、右手がS.L.P.のG-Birchを上下ウッド・フープに換装している。

    Takeru’s SONOR Vintage Series

    高橋がイベントの相棒にセレクトしたのは長年愛用するSonorのヴィンテージ・シリーズ。注目はシンバルで、ハイハットと右手のライドは個人でやり取りし購入したというアメリカの新興メーカー、Royal Cymbals。かねてより“最低限の枚数でさまざまな音色を出せるようにしたい”というこだわりを持つ高橋が惚れ込んだ響きで、この日が初お披露目。左手にはイスタンブール・アゴップのメル・ルイス・シグネチャー・ライド。リベットを2箇所打っており、ヒット時の音の伸び具合いにはFUYUも感動していた。スネアは70年代ラディックのブラック・ビューティー。