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    Archive Interview 茂木欣一[フィッシュマンズ]④ 〜1996年3月号〜

    オリジナル・アルバムとしては約1年半ぶりとなる新作『空中キャンプ』を完成させたフィッシュマンズ。自分達のプライベート・スタジオを手に入れ、そこで納得のゆくまで音楽と向き合い制作されたという今作は、浮遊感を感じさせながらも、心地良い緊張感に包まれた出色の出来となった。生き生きと新作について語るドラマー茂木欣一の言葉からは、新作、そしてバンドの充実感が漲っているようだ。

    時間を気にしないレコーディングは
    曲への入り込み方が全然違う

    『空中キャンプ』(96年発表)

    前回のインタビューでは「次作はレゲエでいきたい、より生々しいものにしたい」って言ってましたよね?

    茂木 その通りの作品に(笑)。

    その話の流れでいくと、今回は一発録りに近いようなものになるのかと思っていたんですけど、それとは正反対の作り込まれたものになりましたが、それはなぜですか?

    茂木 前作を作り終えたときに、自分のドラムとしての素材ということにこだわってもいたんですよ。一発録りで“いっせーのせ”でやったそのときの流れというのも大切なんだけれど、それだけじゃなくてドラムだけで聴いても説得力のあるものというのを目指していたんです。そういう“いっせーのせ”とは別の部分も欲しがっていたんですね。

    あのときはそういう両面を求めていたと?

    茂木 新曲をライヴで何度か演奏してみるというのはとても重要なことで、それは前回よくわかったことなんです。それを今度は、CDとして家でじっくり聴くのに適したものにするにはどういうものがいいんだろうって考えるようになったんです。テンポとかタイム感とかね。だから両極端なものというんじゃなくて、あくまでもライヴっぽいものを、ということを踏まえた上でなんです。それは今回に限ったことじゃなくて、毎回、アルバムを作るごとに、1つ1つ覚えていったものを吸収した上で、次にまた臨むわけですけど。1つ越えればまた次の課題っていうのがちゃんと現れてくる。僕は全然器用な方じゃないから、1つ1つをちゃんと自分の血にしていきたいんです。

    バンドの中では自然な流れでこうなった?

    茂木 うん、とても。毎回、自分達の日々の生活の中で、こういうものがやりたいっていう欲求が自然に出てくるんですよ。

    実際にはどのような感じでレコーディングが進んだんですか?

    茂木 前から自分達のスタジオが欲しかったんですけど、今回、何と僕達のスタジオを手に入れることができたんです。いいですよぉ(笑)。もう、会う人みんなに「スタジオ、あるんだって?」って羨ましがられちゃって(笑)。もう自分達のペースで進められる創作の場というのは最高ですよ。さっきも言ったけど、僕らの曲って日常の生活の中から出てきているから、時間で区切られるのってどうもね……。

    ●スタジオに合宿してやった?

    茂木 いや、一応帰りました(笑)。でも、ドラムは深夜に録っていることが多かったです。夕方くらいから始めるから、調子が出てくるのが夜中になってしまうんですよ。自分達のスタジオの利点ってやっぱりそこですね。時間に追われないから、ひたすら音楽に向かうことができる。濃さが違うというか。だからすごく曲に入り込めた。知らない間に20テイクくらい録っていたり(笑)。うまくできなくてっていうんじゃなくて、俺はもっと曲に入り込めるよっていう前向きな姿勢でね。もうテンションがぜんぜん違うんだな(笑)。充実していたなぁ。今回はドラムだけで録った曲もあるんですよ。ベースの譲君が「あ、俺、終電で帰る」っていうのがあったんで(笑)。

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