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同期と共生する“現代”のドラマーたち #2 山本真央樹【Archive Interview】

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine、Isao Nishimoto(equipment)

ヒットしたところに
クリックが乗っかるように努める

山本 意識がほんのりあるくらいで、そんなに明確なわけじゃないんですけど、一応、自分の中ではバラード……テンポが80以下とかの遅い曲では、ほんのちょっとクリックより後ろにいよう、みたいな気持ちは少しありますね。本当に真後ろにいるっていうよりは、クリックが聴こえたなと思った0.000000何秒後に叩く、みたいな感覚というか。その他、テンポが100以上くらいになると、さっき言ったようにクリックを予知して、“ここにクリックが来るだろう” っていうところをねらって、ヒットしたところにクリックが乗っかってくれるように努めています。自分にクリックが乗っかるような演奏というイメージですかね。バラードのときはクリックに乗っかって、そうじゃないときは、自分にクリックを乗っけるというか。

山本 レコーディングは作品作りなので、みんなが同じ指標を持って演奏しなきゃいけないものだと思っていて。グリッドというのは、プレイヤーのみんなが共通して参考にしなければいけない“ 点” だと思っているんです。なので、ライヴではアンサンブル重視で、“みんなでここの点に合わせていこう” っていうのを心で通わせてやるんですけど、それが良いときもあれば、みんなでズレちゃうっていうこともあって。作品作りをカッチリやるとなると、“それぞれがグリッドに合わせていった結果、みんなの点が集結したよ” っていう、わかりやすいツールという感覚で自分は捉えています。

だから、なるべくそのグリッドに合わせることによって、「あ、ちょっと俺グリッドからズレちゃった。俺が直すね」と調整するうちに、自然とみんなの演奏が合っていくみたいな。理想はみんなで24時間ずっと缶詰めになってアンサンブルできたらいいんですけど、やっぱり2~3時間とかで仕上げなきゃいけないっていう時間制限の中だと、グリッドをそうやってゴールにしていくことで、短い期間で良い音楽が作れるようになるんじゃないかなって。そういうふうに捉えてます。

山本 例えばDEZOLVEとか、全部クリックがある演奏だとクリックが一番大きめで、次に自分のドラムの音。あとは現場によって、クリック→ドラム→ベース→その他、みたいな感じの順番で音を決めていくことが多いですね。やっぱりクリックから外れると一番痛いので、聴こえなくなったら怖いものですね。ちなみにイヤモニは、須山補聴器さんのFitEarをずっと使ってます。

山本 おっしゃった通り、やっぱり他の楽器のグルーヴ感とかもキャッチしながら、クリックというロボットのグルーヴもキャッチしなきゃいけないから、ドラマーはすごく大変で……良いことなのか何なのかわからないですけど、どっちを信じようって思ってるぐらいなら、まずはクリックを愛した方がいいと思います。僕も“ グルーヴに合わせた方が良い音楽作れるかもなぁ”とまごまごしてるときもあったんですけど、いろいろと試していた結果、結局はみんなクリックを聴いているんだし、クリックにがっつり合わせて、その上でグルーヴ的に遊べるようなドラマーになった方がいいのかなという結論に至りました。

違う考えのドラマーさんも多分たくさんいらっしゃるとは思うんですけど、とりあえず、どっちを主軸にするかっていうのをしっかり自分の中で明確にすることですね。僕は多分、合わせるならクリックの方がいいかなと思っています。“バンドに合わせる” っていう感覚を持つのは、バンド・メンバーのみなさんで良いと思っていて。同期やクリックでの演奏でどっちに合わせようと悩んでいるドラマーがいるのであれば……少なくとも山本は、クリックにしっかり合わせることで、何とか今のところプロ生活10 何年くらいはうまくいっているので(笑)、1意見として参考にしていただいても良いんじゃないかなと思います。

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