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    Pick Up Next Generations #5-Lenny “The Ox” Reece

    • Score & Text:Yusuke Nagano Illustration:Yuji Shiozaki

    #5 Lenny “The Ox” Reece

    形を変えながら進化していく音楽の中で、めきめきと頭角を現す“新世代”のドラマー達。本連載では、次代を担うであろう、注目のプレイヤーをピックアップ! YouTubeで観られる映像をもとに、彼らのドラミング分析をお届けしていく。今回取り上げるのは、楽曲に独特の浮遊感をもたらすオッド・タイム・アプローチを駆使し、ライヴ・バーのハウス・バンドを拠点に活躍の場を広げているドラマー、レニー“ジ・オックス”リース。神保 彰も“現在ハマっているドラマー”としてその名を挙げた彼のプレイを見ていこう。

    奇数連符やエレクトロニックを織り交ぜ
    アイディア溢れるリズムを多彩に繰り出す

    音楽好きの父や姉の影響で、幼い頃からたくさんの音楽に触れていたレニー“ジ・オックス”リース。初めてドラムを叩いたのは6歳のときで、教会でドラムを演奏していた姉の代役としての、突発的な出来事だったそうです。その後、深夜のヒップ・ホップのラジオをカセットに録音して聴き始めますが、正式なレッスンには通わずに、楽器店のドラムに座って練習する日々を過ごしたということです。

    2012年にニューヨークのライヴ・バー=Arlene’s Groceryにて、“レッスンGK”というジャム・イベントを立ち上げたレニーは、同名のハウス・バンドのリーダーとしてNYのヒップホップ・コミュニティを牽引する存在となります。彼らの音楽は、ヒップホップ、R&B、プログレッシヴ・ソウルなどの要素を混ぜ合わせたスタイルで、ライヴはすべて即興的に進行し、毎回異なる化学反応が起きていたと言います。

    「音楽は自己表現の手段であり、ドラムを通して自分自身の経験を伝えている」と語るレニー。今回はそんな彼のプレイを、ヴィック・ファースの動画「VFJam LIVE!」から検証していきます。

    アコースティックと
    エレクトロニックを融合させたリズム

    Ex-1(動画内00:00〜は冒頭のリズム・ソロ。右手はRolandのSPD-SX、左手で生ドラムのハイハットとスネアを叩き分けて、アコースティックとエレクトロニックを融合させたリズムをプレイしています。生ドラムのキックのツブ立ちや、ハイハット・オープンの絡め方も特徴的ですが、足裏をフット・ボードから完全に浮かせてオープンする左足の動きからは、バランス感覚の鋭さも伝わってきます。

    7連符と6連符を混ぜて
    ねじれたようなリズムを演出

    Ex-2a(04:58〜はドラム・ソロの入り口の部分で、7連符と6連符を混ぜることで、ねじれたようなリズムを演出。3拍目ウラのキックから、4拍目をズラすスネアへの流れがキモになります。Ex-2b(05:36〜2aと似たコンセプトのパートですが、クローズド・ハイハットとしてセットしたジルジャンの穴あきシンバル3種と、通常のハイハットを巧みに絡めて、音程感のあるプレイを披露。こちらはバック・ビートをジャストに叩いて、キックに変化をつけているのもポイントです。

    左手1本のストロークで
    ハイハットとスネアを鳴らす手法に注目

    Ex-3(06:42〜はソロ中盤でのプレイ。ハイハットとスネアの高低差を利用して、左手1本でフラムのようにダブらせる手法はレニーがよく使うもので、荒々しいアクセントと凄まじいプッシュ感が印象的。右手の16分刻みのウネるようなニュアンスのインパクトも抜群です。

    フロア・タムを
    拳でパンチするように演奏

    Ex-4(08:19〜は、ソロ後半で、フロア・タムを拳でパンチするように演奏する場面。フロア・タムの打面には、裏返しに乗せたヘッドをテープで固定して、異なる音色のキックのようなテイストを醸し出しているのがポイント。このパフォーマンスの最後には、フロア・タムが倒れそうになる一幕もありますが、並々ならぬエネルギーがほとばしるプレイに圧倒されます。

    まとめ

    奇数連符やエレクトロニックなどの要素を巧みに織り交ぜて、アイディア溢れるリズムを多彩に繰り出すレニー“ジ・オックス”リース。テクニックはもちろん、パワー、スピード、グルーヴ、即興性などのすべての要素から規格外のずば抜けた才能が伝わってきますが、それらを余すことなく自己の音楽表現のために注ぎ込むセンスは本当に素晴らしいと感じます。

    そして今回の分析では触れていませんが、1台のスネアからさまざまな音色を引き出すタッチの妙技も特筆すべき点で、そのあたりも注目ポイントと言えるでしょう。さらに動画の中ではスティックが折れるハプニングもありますが(07:47あたり)、意に介さず折れたスティックをそのまま使い続ける様子からは、演奏に対する没入感の凄まじさも伝わってきます。

    同じ教会出身ドラマーでも、チョップス系の大技フィルを繰り出すスタイルとは異なるベクトルを持ったレニーのような新世代ドラマーの出現は、今後の音楽界の可能性が大きく広がっていくことを予感させます。

    【Another Playlist】

    今回取り上げた映像の他にも、YouTubeには数々の動画がアップされている。こちらもチェックしてみよう!

    ◎Drummer’s Information
    Lenny “The OX” Reece Instagram
    The Lesson GK HP Instagram

    ◎Profile
    長野祐亮(Yusuke Nagano):15歳でドラムを始め、つのだ☆ひろ、そうる透に師事。大学在学中からプロ活動をスタートし、数々のレコーディングやアーティストのサポートで活躍する。現在はインストラクターや執筆活動を通して後進の指導も行っている。「ドラマーのための全知識」、「1日15分!自宅でドラム中毒」など数多くの著書がある。

    ◎Information
    長野祐亮 Twitter

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