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ジャズの表現力を高めるコンピング/ソロの展開術【横山和明が書き下ろし解説!】
- Text:Kazuaki Yokoyama
ジャズ・シーンで活躍するプロ=横山和明の執筆によるガイド本『3年後、確実にジャズ・ドラムが叩ける練習法』。本書に掲載された貴重なレッスンの一部を紹介していくミニ連載の第3回となる今回は、Lesson 7&8で取り上げたコンピング/ドラム・ソロの副教材的コンテンツとして、何と横山による完全書き下ろしのスペシャル解説をお届け! 展開のつけ方のヒントを示す実践的な内容となっているので、譜例を見ながら取り組んでみましょう!
#3 表現力アップ! コンピングとソロの展開術

コンピング並びにソロの展開のつけ方のヒントとなる話をしてみようと思います。まず、Ex-1の譜例を読んでみてください。これはディジー・ガレスピーが録音しているOop Bop Sh’Bamという曲の中のスキャットで歌われる箇所のリズムを抜き出したものです。音源を挙げておきますので、聴きながら確認してみましょう。
これを材料にして、少し遊んでみます。譜例をいくつか挙げていきますが、あくまでも展開の過程の例を示すものであり、型として覚えて並べてつなげ、それらしく形にしよう、という話ではないことは先にお伝えしておきます。
Ex-1をスネア・ドラムで叩いてみましょう。手順はお好きなように。メロディを歌いながら、音程が高い箇所はやや強めのタッチで当てて音に張りを与え、音程が低い箇所は柔らかめのタッチで沈むイメージを持たせると、スネア・ドラムの上だけでも抑揚のあるメロディックな表現に感じさせることができます。

次にこの譜例を、定型のビートをキープしながらスネア・ドラムの上で歌ってみます(Ex-2)。ストロークのアップ/ダウンと抑揚のつながりを確認しながら、ゆっくり丁寧に始めましょう。

ビートを刻みながらメロディを歌うことに馴染んできたら、ベース・ドラムとスネア・ドラムに振り分けます(Ex-3)。音程差が出るので、より立体感が出ますね。

さらにメロディックに聴こえさせる手段として、タムを織り交ぜます。ここではタムとフロア・タムで振り分けた例を示しておきます(Ex-4)。
ここまではメロディをなぞりながら色の変化を加えていきましたが、今度はメロディを音に出さずに自分の中で歌い(他の楽器が演奏しているという想定)、その周りを装飾していくようなアプローチを試してみます。



Ex-5〜7では、メロディに相槌を打ったり絡み合ったりする、カウンター・ラインとなるリズムの例を挙げました。元のメロディのリズムも示しておくので、噛み合い方を確認してみてください。まずはメロディを歌いながら、譜例のリズムを叩きます。馴染んできたら、Ex-2やEx-3のようにビートを刻みながらスネア・ドラムやベース・ドラムで歌わせてみましょう。対となるラインを織り上げていくようなこの感覚は、立体的なバンド・アンサンブルを構築する上で大切なものです。コンピングにおいてはもちろんですが、ドラム・ソロでも、メロディやモチーフに対して話しかけるように展開させていくと良いでしょう。

さて、Ex-1を再び見てみましょう。3〜4小節がほぼ空白となっています。本来、原曲ではスキャットに対する管楽器の応答、つまりコール&レスポンスのレスポンスに当たる箇所なのですが、ここで短いソロをするつもりで、自分なりにフレーズを組み立ててみましょう。メロディとの噛み合い、つながりを意識しながらいろいろと試してみてください。

最後にもう少しだけ。Ex-8は、元のメロディの1小節目だけを抜き出したもので、Ex-9、Ex-10はフレーズのスタート/着地を1拍ずつ後ろに動かしています。同じ形のフレーズでも、配置を変えれば違って聴こえてきます。このように、モチーフを動かして遊ぶことも、展開をつけるアイディアの1つです。
Check!!『3年後、確実にジャズ・ドラムが叩ける練習法』
『3年後、確実にジャズ・ドラムが叩ける練習法』
横山和明(著)
定価:2,750円(本体2,500円+税10%)
仕様:A4変形判/112ページ/CD付き
ISBN:9784845638789
商品情報はこちら→https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3122232001/

Profile●1985年⽣まれ、静岡県出⾝。3歳からドラムを始める。中学⽣の頃に地元での演奏活動を始め、師である本⼭⼆郎のグループを中⼼に多くのミュージシャンと共演を重ねる。⾼校3年の春、渡辺貞夫カルテットのツアーに参加。海外アーティストとの共演も多く、これまでにJunior Mance、Barry Harris、Red Holloway、Sheila Jordan、Eddie Henderson、Wess Anderson、Steve Nelson、Gene DiNovi、Lew Tabakinなどと演奏。現在もさまざまなグループで活動する傍ら、尚美ミュージックカレッジ専門学校、昭和音楽大学で後進の指導に当たるなど、多岐に渡る活動を展開している。
X: @yokoyamakazuaki