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    Drummer’s Disc Guide – 2021-22 Winter

    – Winter 2021-22 –

    【A】=アルバム 【M】=ミニ・アルバム 【E】=EP 【V】=DVD、Blu-ray


    【A】エルヴィス・コステロ『ザ・ボーイ・ネームド・イフ』

    d:ピート・トーマス

    特別な大人にしか絶対に産み出せない
    1小節目からロック・スピリット100%のアルバム

    FUJI ROCK FESTIVAL ‘12@グリーン・ステージ……ニック・ロウがプロデュースした1978年リリースのジ・アトラクションズの大傑作アルバム『This Year’s Model』から「Lipstick Vogue」のあの有名すぎる、大好きなピート・トーマスのドラム・ソロ・イントロでもういきなり息が止まりそうになり、そこから「High Fidelity」、「Radio, Radio」と続け様に……あの衝撃のステージから10年経った今、何とそのときのメンバー=ジ・インポスターズとしての新譜が、それも1小節目から特別な大人にしか絶対に産み出せないロック・スピリット100%のこんなカッコいいアルバムをリリースするなんて……まさに感涙モノ。(沼澤 尚/シアターブルック、ブルーズ・ザ・ブッチャー、他)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】エルヴィス・コステロ(vo、g、p)、ピート・トーマス(d、per)、デイヴィ・ファラガー(b、vo)、チャーリー・セクストン(g)、スティーヴ・ナイ―ヴ(key、p)、ニコール・アトキンス(vo)、セバスチャン・クリス(cho)、他

    発売元:ユニバーサル 品番:UICY-16039 発売日:2022.1.14

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    【A】アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ『ファースト・フライト・トゥ・トーキョー』

    d:アート・ブレイキー

    徹頭徹尾、どこを輪切りにしても
    メッセンジャーズのサウンドなのには恐れ入る

    一発目の音でアート・ブレイキーと答えられなかったらジャズ・ドラマーとしてモグリだろう、と言われてしまうほどに、この日本初公演でのライヴも間違いなくブレイキー。ドラマーがリーダーのジャズ・バンドのスタイルを作り出しただけではなく、この2管あるいは3管編成の規範になったと言っても過言ではない。徹頭徹尾、どこを輪切りにしてもメッセンジャーズのサウンドなのには恐れ入る。たとえメンバーが変わってもそうなのは他にはマイルス・バンドくらいではないか。本作はリー・モーガン、ボビー・ティモンズというハード・バップの名手と、ウェイン・ショーターという次世代モード・スタイルの入り混じったサウンドで、時期もちょうど、移行期の1961年。 リーもボビーも従来のアプローチを踏襲しつつも、新たな流れを掴もうとしている様子がうかがえる。お蔵入りになったドキュメンタリー映画のための収録だったらしいが、ぜひ、レガシーとして世に出してほしいと思わせる作品。(大坂昌彦)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】アート・ブレイキー(d)、ジミー・メリット(b)、ボビー・ティモンズ(p)、リー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(sax)

    発売元:ユニバーサル 品番:UCCQ-1145~6 発売日:2021.12.10

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    【V】エリック・クラプトン『レディ・イン・ザ・バルコニー:ロックダウン・セッションズ』

    d:スティーヴ・ガッド

    ガッドの音量コントロールの素晴らしさ
    そして楽器の使い方は本当に目から鱗

    世界中の音楽ライヴが延期という名の中止に追い込まれた2020年、負けじと無観客や配信ライヴ開催に起ち上がった勇気あるミュージシャンは少なくなかった。エリック・クラプトンもその1人。ロンドン郊外、壮大な景色の敷地内建物を舞台に選んだところなどは一味も二味も違う彼のセンスの良さを感じる。いつからそうなったのかアコースティック・ライヴと言えばパーカッションがつきものだが、今回はドラム。それがまた極上のアンサンブルの要因になっている。ガッドの音量コントロールの素晴らしさ、楽器の使い方は本当に目から鱗だ。既成概念に捉われずあくまでも曲に寄り添う彼の音楽への姿勢は、多くのドラマーが学ぶべきだ。クラプトンの歌やギターはもちろん、その息遣いや心の奥まで見透かすかのようなガッドの慈愛の眼差し。15年前幸運にもツイン・ドラムをやらせてもらったとき、一番感動させられたのは彼の思いやりの心だった。クラプトンとガッド 、宇宙一の2人を感じることができる素晴らしい作品だ。(江口信夫)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】エリック・クラプトン(g、vo)、スティーヴ・ガッド(d)、ネイザン・イースト(b、vo)、クリス・スティントン(key)

    発売元:ユニバーサル 品番:UIBY-15124(DVD+CD) 発売日:2021.11.12

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    【A】シルク・ソニック『アン・イヴニング・ウィズ・シルク・ソニック』

    d:アンダーソン・パーク

    あったかい人間味溢れる音楽が世界中で爆ヒット
    この事実は俺ら生身のミュージシャンを勇気づけた

    うわぁぁぁぁぁぁぁ、格好いいぃぃぃぃぃぃ
    全世界がコロナ禍で混乱を極めていた2021年3月、突如音楽界に現れたブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによるスーパー・ユニット、Silk Sonic。そこで発表されたシングル「Leave the door open 」には心底撃ち抜かれたねー、何これ、良すぎる、って。曲過剰に良し、歌過剰に良し、演奏過剰に良し、そしてプロデューサーD’Mileのサウンド半端なす……もう参りました。そしてこんなあったかい人間味溢れる音楽が全米ビルボードHOT100の1位をはじめ世界中で爆ヒット、って事実は俺ら生身のミュージシャンをマジで勇気づけたよね。まだまだ世界は明るいよ。ちなみに日本のビルボードHOT100では最高位41位。むしろ100位が気になるわ。まあいいとして、こんなスーパー・ユニットは企画で終わるでしょ、と思いきやまさかのフル・アルバムのリリース。マジか、続くんか、と。で聴いてみた→文章頭に戻る(BOBO)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】アンダーソン・パーク(d、vo、etc.)、ブルーノ・マーズ(vo、g、per、etc.)、D’Mile(b、p、vo、cho、etc.)、ブロディ・ブラウン/サンダーキャット(b)、ブーツィー・コリンズ(vo)、他

    発売元:ワーナー 品番:WPCR-18451 発売日:2021.11.12

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    【A】Gizmodrome『Gizmodrome Live』

    d:スチュワート・コープランド/ピート・レイ・ビギン

    スチュワートとエイドリアン
    2人の変わらぬ現役感と存在感がうれしい

    本作は2018年のワールド・ツアーのライヴ・アルバム。約40年前ポリスを聴いてドラムを始めようと思った。スチュワート・コープランドは今でも憧れの対象であり、エイドリアン・ブリュー在籍時のキング・クリムゾンも聴きまくっていた。2人の変わらぬ現役感と存在感がうれしい。ポリスの「Miss Gradenko 」、「Does Everyone Stare 」、「Bombs Away」、キング・クリムゾンの「Elephant Talk」、「Thela Hun Ginjeet」の収録が個人的にツボ。エイドリアンを介してビル・ブルーフォードのアプローチを思い出してしまうのだけれども、スチュワートとビルの音楽的志向性は似ているかもしれないと感じた。共にTAMAとPaisteを愛用しているのはたまたまだろうけどね。(Sakura/gibkiy gibkiy gibkiy、Rayflower、ZIGZO、他)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】スチュワート・コープランド(d、vo)、ピート・レイ・ビギン(d)、マーク・キング(b、vo)、エイドリアン・ブリュー(g、vo)、ヴィットリオ・コスマ(key、vo)

    LP/輸入盤(配信中) 発売日:2021.11.19

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    【A】神保 彰『アメアガリ』

    d:神保 彰

    自由気ままに波形を切り貼りしたかのような
    実験的なモジュレーションが人力で行われている

    神保 彰さんの2作品同時リリースもののこちらは、ドラム・ソロとプログラミングをフォーカスした作品で、すべて神保さん1人で完結しております。全体を通してポップでキャッチーなコード・プログレッションとメロディが主としてありつつも、後ろでドラムが自由気ままに波形を切り貼りしたかのような、実験的なモジュレーションが人力で行われております(すごすぎる!)。M1「アメアガリ」は神保さん感ある、聴き馴染みのあるテイストで進行していくルンルンな楽曲。M5「ロボダンス」は、全体を通して90年代の神保さんの教則ビデオを見ていた方なら“これは1人でやっているところが頭に浮かぶ!”となっちゃうのではないでしょうか? 新しいグルーヴに意欲的に挑戦されている音楽がたくさん入っており、かつしっかりとした聴きやすい音楽が揃った素敵なアルバムとなっております。お散歩にオススメしたい雰囲気の楽曲が多いですが、ドラムに身を委ねすぎると歩調が乱れる可能性がありますのでお気をつけて(笑)!(山本真央樹/DEZOLVE)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】神保 彰(d、prog)

    発売元:キング 品番:KICJ-856 発売日:2021.12.22

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    【A】ノラ・ジョーンズ『アイ・ドリーム・オブ・クリスマス』

    d:ブライアン・ブレイド

    パーティの後ろで聴こえてくる音楽としてはもったいない
    奥の奥まで味わい尽くしたい最高のアルバム

    “クリスマスじゃない時期でもガンガン聴きたくなるクリスマス・アルバム”。これってけっこう、音楽ファンとしての自分が求める要素なのだが、まさにジャスト・フィット。クリスマス・パーティの後ろでしっとり聴こえてくる音楽としてはもったいない、奥の奥まで味わい尽くしたい最高のアルバムなのである。そして演奏はもちろん、とても乙な気の利いたミックスも重要な要素だと思う。クリスマスというテーマがありながらも、大きくいうと初期のノラの感じに戻ったような、“これぞノラ・ジョーンズ”という雰囲気がムンムンと漂う内容で、ドラムはもちろんブライアン・ブレイド。しかもトニー・シェールとの相性はめちゃくちゃ最高である。(伊藤大地/グッドラックヘイワ、サンフジンズ、他)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】ノラ・ジョーンズ(vo、p、org、wurlitzer)、ブライアン・ブレイド(d、per)、ニック・モブション/トニー・シェール(b)、レオン・ミッチェルズ(syn、sax、fl、per、d、glo)

    発売元:ユニバーサル 品番:UCCQ-1147  発売日:2021.10.15

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    【A】スティング『ザ・ブリッジ』

    d:ジョシュ・フリーズ/マヌ・カチェ

    スティングの意向を汲んでプレイをしていても
    その人とわかるプレイと音を奏でるジョシュとマヌは最高!!

    スティングの5年ぶりのニュー・アルバム! コロナ禍に感じたことを新譜で発信してくれるスティングをミュージシャンとして心から尊敬します! ドラマーは近年スティングのライヴもサポートしているジョシュ・フリーズと、何とマヌ・カチェが参加しているじゃないですか! マヌが参加してるスティングの2枚目と3枚目のソロ・アルバムが大好きで聴きまくってたので、久しぶりのレコーディング参加作品が聴けるのはうれしい! M5の5拍子の芸術的なプレイに鳥肌立ちまくり! さらにM12なんてもうマヌそのもののプレイ! 多分レコーディングのときはスティングの意向を汲んでプレイをしているんだろうけど、それでもその人とわかるプレイと音を奏でるジョシュとマヌは最高!!(吉田佳史/TRICERATOPS)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】ジョシュ・フリーズ/マヌ・カチェ(d)、スティング(b、vo、etc.)、ドミニク・ミラー(g)、マーティン・キーゼンバウム(key)、フレッド・ルノーディン(syn)、ブランフォード・マルサリス(sax)、メリッサ・ムジーク/ジーン・ノーブル/ジョー・ローリー/ライラ・ビアリ(cho)

    発売元:ユニバーサル 品番:UICY-16021 発売日:2021.11.19

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    【A】宮本浩次『縦横無尽』

    d:玉田豊夢/屋敷豪太

    表現力を進化させたヴォーカルに拮抗するような
    変幻自在のサウンド・メイクとリズム作りが秀逸

    エレファントカシマシのフロントマン、宮本浩次のソロ・ワーク第三弾は、小林武史の全面プロデュースのもと、前作にも参加の名越由貴夫(g)、キタダ マキ(b)、玉田豊夢(d)と小林(key)を核とするバンド・サウンドに注目したい作品だ。女性歌手が歌った昭和歌謡ポップスをカヴァーした前作『ROMANCE』の表現力をさらに進化させ、まさに“縦横無尽”と言える宮本のヴォーカルに拮抗するように、パンキッシュなロックンロールやヘヴィなブルース、モータウン風の軽快なシャッフルに、歌謡ラテンや壮大なバラードと、変幻自在なサウンド・メイクとリズム作りが秀逸。1曲、M7「東京協奏曲/宮本浩次×櫻井和寿」のみで屋敷豪太(d)がプレイしている。(岸田 智)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】玉田豊夢/屋敷豪太(d)、キタダ マキ(b)、名越由貴夫(g)、小林武史(key)、他

    発売元:ユニバーサル 品番:UMCK-1702 発売日:2021.10.13

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    【A】Nothing’s Carved In Stone『ANSWER』

    d:大喜多崇規

    パターンのアイディア、グルーヴの振幅
    スパイシーなフレーズを散りばめるセンスに深みが加わった

    Nothing’s Carved In Stoneの11枚目となるアルバム。緻密に構築された前衛的でスリリングなアレンジや、ストレートに邁進し、サビに展開する際の圧縮エネルギーを一気に開放するような爆発力は、このバンドならではの中毒性のある心地良さ。前向きな気持ちを喚起させる愛と希望を乗せたメロディは、骨太なロックとポップスのエッセンスが絶妙なバランスで配合されているのも魅力です。曲のボトムを彩って個性を際立たせる大喜多崇規のドラムは、パターンのアイディア、グルーヴの振幅、要所にスパイシーなフレーズを散りばめるセンスにさらに深みが加わった印象。曲ごとのこだわりが反映された音色も素晴らしく、1打1打に説得力を感じるプレイに心を打たれます。(長野祐亮)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】大喜多崇規(d)、日向秀和(b)、生形真一(g)、村松 拓(vo、g)

    発売元:Silver Sun Records 品番:DDCZ-9072 発売日:2021.12.01