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Drummer’s Disc Guide – 2022 Autumn

– Autumn 2022 –

【A】=アルバム 【M】=ミニ・アルバム 【E】=EP 【V】=DVD、Blu-ray


【A】マーク・ジュリアナ『ザ・サウンド・オブ・リスニング』

d:マーク・ジュリアナ

音質/音価の差異を感覚的に把握していなければ
こうした演奏はできないだろう

曲順やドラムの音色作りから2022年を強く感じるアルバム。M1の中盤から通奏される控えめでくぐもったキックはドアの向こうのフロアに響くハウスのようだし、M2冒頭のミニマルなベースに絡んでくる各楽器のジャジーなアプローチを、直後のスネアの音色だけでビート・ミュージック的なニュアンスに転回させていくさまも現代的。同曲1分9秒あたりから差し込まれるライド・シンバルのプレイが素晴らしく、手指とスティックの接触面積、そしてスティックとシンバルの接触時間による音質/音価の差異を感覚的に把握していなければこうした演奏はできないだろう。M7とM8の対比的な並び順も含め、さまざまなバランスを取りながら現在進行形を感じさせる作品になっている。(木暮栄一/the band apart)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】マーク・ジュリアナ(d、per、syn、drum programming)、クリス・モリッシー(b)、ジェイソン・リグビー(sax、cl、fl)、シャイ・マエストロ(p、org、etc.)

発売元:コアポート  品番:RPOZ-10080 価格:¥2,640(税込) 発売日:2022.10.05

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【A】ONE OK ROCK『Luxury Disease』

d:Tomoya

Tomoyaの独創的なスタイルに王道のアプローチを融合
新たなフェーズへ突入したことを感じさせる

ONE OK ROCKの約3年ぶりとなるオリジナル・アルバム。前作では“バンド・サウンド”に捉われない音像に挑戦した彼らだが、本作ではロック回帰を謳い、グリーン・デイらを手がけた名匠=ロブ・カヴァーロがプロデュース。彼らが追求してきた高解像度でモダンなサウンドでありながら、アレンジにはクイーンを代表とするクラシック・ロックのエッセンスも織り込まれ、新たなフェーズへ突入したことを感じさせる。Tomoyaのドラミングもまたしかりで、その独創的なスタイルに王道のアプローチを融合。本人も“ドラムに感情を乗せて、今の自分をしっかりと落とし込めた”と手応えを感じている様子。また、これまでの作品と比べてリズムのバリエーションが多彩で、絶妙なハネ加減が気持ちいいM2や、推進力のある3連のリズムが冴えるM4、タム類を駆使したアプローチがグルーヴィなM7、トレードマークとも言える変則パターンが印象に残るM13、打ち込みから生ドラムへと切り替わるM10など、聴きどころ満載! デビューから15年、さまざまな経験を重ねてきた彼らの歴史が凝縮されているかのようだ。(北野 賢/リズム&ドラム・マガジン編集長)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】Tomoya(d)、Ryota(b)、Toru(g)、Taka(vo)、他

発売元:ワーナー 品番:WPCR-18540(国内盤/Japanese Version) 価格:¥3,300(税込) 発売日:2022.09.09

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【A】聖飢魔II『BLOODIEST』

d:ライデン湯澤殿下

23年間溜めに溜めた血の濃度と
強度でもって制作された待望のオリジナル大教典

M1から力強いシンコペのリズム、大仰なストリングス、ケレン味溢れるヴォーカル、コレだよコレコレ! 23年間溜めに溜めた血の濃度(BLOODIEST)と強度でもって制作された待望のオリジナル大教典だ。M3のぶっといシャッフル・ビートに某銃薔薇を思わせるシャウト、珍妙なタイトルながら中身は良バラードのM5、歌詞に幾度も登場する“何度だって”が、争いを繰り返す人類の血生臭い歴史を想起させるタイトル・トラックのM7なんかは、ひょっとして悪魔なりの鎮魂歌なのだろうか。掛け合いがアツいM9や王道のミディアム・チューンM10、ラスト前に疾走してくれるM11など、とにかく信者のツボを突いてくる流れがありがたやの極み……(涙)。(庄村聡泰)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ライデン湯澤殿下(d)、ゼノン石川和尚(b、cho)、ルーク篁参謀/ジェイル大橋代官(g、cho)、デーモン閣下(vo)、他

発売元:Ariola 品番:BVCL-1250 価格:¥3,300(税込) 発売日:2022.09.21

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【A】Petit Brabancon『Fetish』

d:yukihiro

yukihiro氏の持つ硬質なドラム・サウンドや
ハイハット・ワークが効果的かつとても気持ち良い

昨年末のイベントにてバンドの存在とそのメンツに驚いた方も(筆者も)多いであろうPetit Brabancon。いよいよアルバム・リリースで全貌が明らかに。バンドのイントロデュースとも取れる「Don’t forget」のダンサブルなイントロから突っ走るリズムに絡むギター、「疑音」、「OBEY」のニュー・メタル的アプローチでの攻めは、冒頭3曲でオーディエンスがライヴでシャウトする映像が浮かぶ。yukihiro氏の持つ硬質なドラム・サウンドやハイハット・ワークが効果的かつとても気持ち良い。「Ruin of Existence」ではパーカッシヴなタムが、タフでマッチョな楽曲に存在感を出している。徐々に構築されていくかのように聴こえるドラムに、浮遊するギターから始まる「刻」では、ヘヴィでありながらもキャッチーにまとめ上げ、メンバーの持つキャリアが窺える。バンドの持つレンジの広さと確固たる音像が全体を通して聴いて取れ、「渇き」まで、すでにあるブレなき世界観はぜひ生でも体感したい。(ARIMATSU/特撮)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】yukihiro(d)、高松浩史(b)、ミヤ/antz(g)、京(voice)

発売元:DANGER CRUE RECORDS 品番:DCCA-107 価格:¥3,300(税込) 発売日:2022.08.31

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