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    Column-円熟を増し続けるマスター=スティーヴ・ジョーダンの“現在”

    • Photo: Al Pereira/Getty Images
    • Text:Takashi Numazawa

    偉大なる音楽の歴史を継承し、体現するドラム・マスター、スティーヴ・ジョーダン。“グルーヴ”という言葉を認知させた第一人者であり、ドラマー&プロデューサーとして時代をリードし続けている存在だ。流行りに左右されないタイムレスな作品を作り続けてきた彼だが、特に近年、プレイング・マネージャーとして手がけた作品は特筆もので、音楽家として1つの円熟を迎えているようにさえ感じられる。そこでスティーヴのフォロワーである沼澤 尚氏に、その注目の最新参加作品についてレビューしてもらった。

    時代を超えるサウンドを創造し続ける
    世界最高峰のドラマー&プロデューサー

    パティ・オースティンの『THAT’S ENOUGH FOR ME』を発売と同時に購入して、その1曲目のタイトル・トラックから一瞬にしてそのすべてに惹かれたのが1977年……忙しすぎるスティーヴ・ガッドが来れないジョー・コッカーのツアー日程で、代わりに起用された19〜20歳のスティーヴ・ジョーダンがここでもガッドの代わりとしてレコーディングに参加……自分としては初めて耳にしたそれは感動的な高校時代。それからクレジットを目にしたら全部聴くのはもちろん、83年にアメリカに辿り着いたらデヴィッド・レターマン・ショーで観られる毎日……そして今現在までまったくとどまることなく、確実に世界最高峰のドラマー&プロデューサー、誰も成し遂げていない次元で大活躍中のプレイング・マネージャーとして君臨している。数々のインタビューで常に語っているのが“Timeless sound”=時代を超えるサウンド。決してレトロ・サウンドを目指してるわけではなく、歴史に残る最高の産物そのものは絶対に超えられないから、それを元に経験と学習でグレード・アップしてきた自分自身の物を生み出そうとしているのだ、と。すべての作品の隅々で堪能できるスティーヴ・ジョーダン“MAGIC”にはいつも驚きと感動しかない。

    スティーヴの“現在”が体感できる最新参加アルバム

    『Beat Odyssey』/Mix Master Mike & Steve Jordan

    毎年エミー賞授賞式の音楽監督を務めているスティーヴ・ジョーダンが、気に入っていたビースティ・ボーイズのアルバム=『Paul’s Boutique』に参加していたDJ、MIX MASTER MIKEをハウス・バンドに呼んだことがきっかけで、賞の進行に必要な音楽(CUE)を製作中に、作業が終わってからスタジオに残って2人だけでセッションを重ねるようになり、そこで生まれてくるサウンドを何も決めないで完全な即興で約30曲を録音。そもそもはいろいろなアーティストがそこに乗ってこられるように用意したのだが、2人の演奏だけでまるで映画のように仕上がっていると感じた本人達がそのままリリースした、とんでもないサウンド&グルーヴ作品!

    『Blackbirds』/Bettye Lavette

    2020年にRock and Roll Hall of Fameの殿堂入りを果たした、1962年に16歳でデビューしたR&B、ブルーズ、カントリー、ゴスペル・シンガー。こういう伝説的な偉人を決してレトロでもノスタルジーでもなく、時代の流行に合わせたりなどせずに、あくまでもピュアにそのアーティストの歴史をこんなにも“今”のサウンドを生み出すには、豊富な経験や知識だけではなくそれを元に自分自身の“何か”を表現している、ということに尽きる。メトロノームやクリックをマニピュレート(fractuate)することで各楽曲とアルバム全体をグルーヴさせないといけない、バラードであろうがどんなテンポでも、と本人の言葉……我々とは別次元のコントロールだけど、もちろん。

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