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アコースティックエンジニアリングが手がけた“ドラムが叩ける”プライベート・スタジオ Archive #9[神奈川県 岡部真二さん宅]

  • 取材:編集部 文:西本 勲
  • 撮影:関川真佐夫

“自宅で思いきりドラムを叩きたい。しかも良い音で”……スタジオやライヴ・ハウスなどの防音/音響工事を行う専門業者、アコースティックエンジニアリングが住宅に施工したドラム用防音室にフォーカスする連載企画。今回は神奈川県でドラム教室を営む岡部真二さんの自宅スタジオを紹介していく!

レッスンを仕事にしているので
こういう部屋があるのはとても助かります

苦情の心配がない遮音性能の高さと
整った響きを両立した室内

音大出身で、現在は演奏活動と共にドラムとパーカッションの講師を務める岡部さんが、レッスンの拠点としてこのスタジオを構えたのは2022年。防音室を作る前提で新築した自宅の一室である。

「ここができる前は、外のリハーサル・スタジオを使ってレッスンしていました。でも、生徒さんの希望する日時が予約で埋まっていたり、急遽欠席ということになるとキャンセル料が発生したりと、改善したい点がいくつもあったんです。そこで、結婚して家を建てることになったとき、レッスンができる部屋を作ろうと考えました。もちろん、自分の練習に使うのも目的の1つです。ドラムで一番苦労するのは練習場所ですから。

でも、住宅展示場をいくつか回って、“ドラムが叩ける防音室を作りたい”と言うと断られたり、なかなか話が進まなかったりすることが結構ありました。そんな中、過去にアコースティックエンジニアリングで防音室を作ったことがあるという住宅メーカーと出会い、そこからスムーズに動き出しました」。

スタジオには、ドラム・セット(Yamaha YD-9000)とさまざまなパーカッション、奥様の実家から運び込まれたアップライト・ピアノを設置。バスケット・ボールは、リバウンドの感覚を生徒に伝えるために活用しているそうだ。
メインのドラム・セットから見た正面に大きな鏡を設置。取材時にはもう1台、コンパクトなドラム・セット(ソナーAQ2 MARTINI)も置かれていた。「レッスンではドラム・セットが2台あるとすごく楽ですね。室内の響きをうまく調整してもらった結果、両方叩いてもうるさくなりすぎないのがありがたいです」。ピアノの上に見える窓の向こうには小さな部屋があり、そこにもたくさんの楽器が収納されている。

もともと岡部さんがレッスンで利用していたリハスタもアコースティックエンジニアリングが作っており、そういう意味でも安心感があったという。

「スタジオを作るにあたって要望として伝えたのは、とにかく防音はしっかりしてほしいということと、でも室内の響きを止めすぎないこと。主にレッスンで使うので騒音の苦情が来ると困るのは言うまでもありませんが、変な聴こえ方の部屋で練習すると耳が疲れてしまうので、音の響き具合いも重要でした」。

出入り口は木製防音ドア×2枚で構成。約2.4mの天井高を確保するため、床の下げ幅を大きくとり、レッスンでさまざまな年齢層の生徒が利用することを考慮して広めのステップを設けている。

周りは静かな住宅地だが、隣家との距離は少し離れており、防音面ではそれほど厳しい条件ではなかった。その上で、さらにスタジオを高遮音仕様の設計にすることによって「周りを気にせず音を出すことができます」と岡部さんも大満足の結果に。

室内音響に関しては、ドラム/パーカッションだけでなくピアノも置くことになっていたので、両方に適した響きになるようバランスを整える必要があった。そうした設計は、アコースティックエンジニアリングが得意とするところでもあり、「違和感はまったくありません。ピアノはあとから入れたので、これから機会があればパーカッションとピアノで合奏したりできたらいいなと思っています」

本物のドラムが叩けることを
レッスン受講生も喜んでいる

スタジオが完成してからは、生徒の都合に合わせてリハスタも併用しながら、ここをメインのレッスン場所として活用している。

鏡側から出入り口の方を見たときの写真。

「生徒さんはこの近辺の人が中心ですが、スタジオ代がかからないとか、時間の融通が利くなどのメリットを感じて、遠くから通ってくださる方もいらっしゃいます。みなさんに共通しているのは、電子ドラムや練習パッドではなく、本物のドラムが叩けるのを喜んでくださっていることです。家でドラムを叩けると言うと、最初は驚かれることも多いのですが(笑)、やはりこういう部屋があるのはとても助かりますね。

今はYouTube などでレッスン動画がたくさん出回っていて、便利な世の中ではあります。でも対面レッスンなら生徒さんの技量に合わせて教えることができるし、ある程度叩ける人は、ちょっとしたやり方を伝えるとどんどん上達していきます。初心者の場合は、とにかくレッスンを楽しむことが一番で、音源を流しながら叩いて、バンドで演奏する気分を味わってもらったり……そういうことができるのも、防音室があるからこそです」。

鏡の上に設けられた横長の窓からは外からの光がたっぷり射し込み、昼間はこれだけでも十分な明るさが得られる。
将来はドラムの本格的なレコーディングも行ってみたいという岡部さんの要望に合わせて、隣室とスタジオの間にケーブルを通す穴を用意。専用トランスを介した200Vのコンセントも備える。

そして、岡部さん自身も打楽器奏者としてこの部屋を満喫している。

「やっぱり夢でしたからね。音大に通っていたときは楽器も練習場所も学校にあったので、卒業後はなかなか大変でした。それで、リハスタを1年間に利用する回数とか、行き帰りにかかる時間とかを考えると、家に防音室を作った方がはるかに良いと思ったんです。それこそYouTubeに、DIYで防音室を作る動画もあったりしますけど、特にドラムとなると絶対に音が漏れるだろうから、やっぱり作るなら専門家にお願いしたい。そんなふうに考えたところからのスタートでした。もちろんそれなりに悩みましたけど、作って良かったと思います。

レッスンが入っていないときに“ちょっと1時間練習しよう”みたいなことがすぐできるのは、単純に楽しいです。今は小さい子供がいるのですが、僕がスティックを出すと、手で同じような仕草をするんです。もっと大きくなって楽器に興味を持ったら、ぜひここで叩かせてあげたいですね」。

音漏れを最小限に抑えた高遮音仕様。西側の壁(吸音パネルを除いた部分)に角度をつけて定在波の発生を防いでいる。

高校時代の吹奏楽部で打楽器を始め、東邦音楽大学打楽器科へ進学。卒業後、JPCで行われたワークショップへの参加をきっかけにプロのパーカッション・プレイヤーのアシスタントを務め、さまざまなライヴ/レコーディングの現場を体験。「その頃に知り合った人から“君は教えるのが向いていると思う”って言われたことが、今の仕事につながっています。ドラムとパーカッションを両方できる強みを生かして、いろいろ自分なりに工夫しながら教えています」。

<Information>
ドラム&パーカッション教室  オカビート・ラボ

※本記事は2024年4月号掲載の記事を転載したものになります。

アコースティック
エンジニアリングとは?

株式会社アコースティックエンジニアリングは、音楽家・音楽制作者のための防音・音響設計コンサルティングおよび防音工事を行う建築設計事務所。1978年に創業して以来、一貫して「For Your Better Music Life」という理念のもと、音楽家および音楽を愛する人達へより良い音響空間を共に創り続け、携わった物件の数は2,000件を超えている。現在も時代の要請に答えながら、コスト・パフォーマンスとデザイン性に優れ、「遮音性能」、「室内音響」、「空調設備」、「電源環境」、「居住性」というスタジオの性能を兼ね備えた、新しいスタイルのスタジオを提案し続けている。

株式会社アコースティックエンジニアリング
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TEL:03-3239-1871
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