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【R.I.P.】極上の8ビートを刻んだバンドマン the pillows/Theピーズのドラマー、佐藤シンイチロウ氏急逝
- Photo:Takashi Hoshino/Text:Rhythm & Drums Magazine
the pillows、Theピーズのドラマーとして活躍した佐藤シンイチロウ氏が、3月23日に食道がんによりこの世を去ったことが発表された。享年61。
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— the pillows monument (@thepillowsJPN) March 28, 2026
シンイチロウ氏は1964年生まれ、茨城県出身。ドラムを始めたのは高校時代で、当時はセックス・ピストルズのコピーばかりしていたという。影響を受けたドラマーは特にいないそうだが、本誌初登場の1995年5月号では好きなドラマーとしてイヌイジュン(ザ・スターリン)、高橋まこと(BOØWY)、池畑潤二(ザ・ルースターズ)の名前を挙げている。
POGOでの活動を経て、1987年にKENZI & THE TRIPSに加入し、メジャー・デビュー。89年の解散後、the pillowsを結成し、1991年にメジャー・デビューを果たした。94年よりトリオ編成となり、2025年1月の解散まで、30年以上に渡って日本のロック・シーンを牽引。海外でも高い評価を受けるなど、屈指のライヴ・バンドの屋台骨を支え続けてきた。
the pillowsの活動と並行して、2002年からはTheピーズのメンバーとしても活躍。また、2003年には奥田民生、YO-KING、大木温之と共にO.P.KINGを期間限定で結成。過去にはTHE BLUE HEARTSやthee michelle gun elephantらのサポートを務めたこともあり、バンドマンが信頼を寄せるドラマーであったことが、そのキャリアからもわかるだろう。
リズム&ドラム・マガジンでは何度もシンイチロウ氏のインタビューを行なってきたが、印象に残っているのは、その豪快な生き様とクールなドラミングのコントラスト。無類の酒好きとして知られ、本番前にビールを飲んでステージに上がり、「少々飲み過ぎてもライヴができますよ、自信があるな(笑)」(1995年5月号)と豪語する破天荒な一面を持ちながら、いざスティックを握るとそのドラミングはステディ&タイト。本人も意識していたという揺れのないビートは、マシンのように正確でありながら、決して無機質ではなく、心地良く転がり、まさにロックンロール。長年愛用していたTAMAのドラムから放たれるサウンドは、ツブ立ちも音ヌケも抜群で、氏が刻む唯一無二の8ビートに影響を受けたと語るプロ・ドラマーも数多い。

そんな自身のドラム哲学について、結成25周年イヤーの2014年に行なったインタビューで本人は「メンバーやお客さんが喜んでくれれば良い……とか、良い人みたいになってるな(笑)。でも、本当にそうで、別にドラマーとしてのエゴはあんまりないんです。ドラムを叩くことでメンバーやお客さんが喜んでくれて、俺は楽しく酒が飲めればそれで良いかな。ビールとか飲んでライヴやって、許されてるのがすごいな、ありがたいなと思ってます」と、らしい言葉で語っていた。
また、2008年のインタビューでは「ドラムで目立ちたいとも思わないし、できれば目立たないところでやりたい」、「若い頃は”俺を見ろ!”って思っていたけど、歳と共に引っ込み思案になってきたのかな(笑)」と笑いながら話す一方で、「ドラム・ソロをやれって言われるのが一番困る(笑)。もちろん、うまいドラマーを見るのは面白いんだけど、俺はバンドの中ですごいと思わせるドラマーが好きだから……別にすごいと思わせなくてもいいんだけど(笑)。ドラムだけを見るより、バンドを見て踊ってくれた方が楽しいだろうし、ロックンロールのドラムってそういうもんなんじゃないですか」と、バンド・ドラマーとしての揺るぎない矜持ものぞかせていたのも印象深い。

ドラムに関しては感覚派だったようで、2008年8月号の取材時にthe pillowsのメンバーは氏のドラミングについて次のようにコメントしている(抜粋して掲載)。「最初から苦労しないで叩けた人なんだと思う。鳥が飛ぶように、魚が泳ぐようにドラムを叩けちゃう人」(山中さわお)、「彼がドラムを練習したり研究したりというのを一度も見たことがないし、聞いたことがない(笑)。常にステディで体調が悪くても、本番10分前に寝ていようとも(笑)、ステディのまま」(真鍋吉明)。シンイチロウ氏も「家で練習なんてしない」(2005年1月号)と取材時に公言しており、それでもスティックを手にすれば極上のビートを刻んでみせる。そんな氏の天性のドラマーぶりが、メンバーの言葉からもうかがえるだろう。
2025年1月のthe pillows解散後、特に表立った活動はなかったようだが、公式発表によると、かねてより食道がんの治療中だったとのこと。
職人気質なドラミングと飾らない人柄で、誰からも愛されていたシンイチロウ氏。61歳というあまりに早い逝去が残念でならない。
心よりご冥福をお祈りいたします。