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    【R.I.P.】チョップスとグルーヴを備えたゴスペル・ドラマーの代表格、アーロン・スピアーズ急逝

    • Translation:Takayuki Matsumoto
    • Photo:Tetsuro Sato

    ゴスペル系ドラマーの第一人者で、アッシャーやアリアナ・グランデのサポート・ドラマーとしても活躍した凄腕ドラマー、アーロン・スピアーズが亡くなったことが本人のSNSで発表された。享年47歳。10月26日に誕生日を迎えたばかりであった。

    Instagramに投稿された家族のメッセージは下記の通り。

    深い悲しみを持って私の最愛の夫、アーロン・スピアーズの訃報をお伝えします。 アーロンはその卓越した才能と音楽への情熱で多くの人に尊敬されている非常に優れたドラマーでしたが、同時に、私達のかけがえのない息子であるオーガストに献身的な父親でもありました。彼の愛、指導、そして温かさは私達家族の支えだったので、彼を失った今、言葉では言い表せないほどの喪失感に襲われています。私達はアーロンと共に人生を送ることができて本当に幸せでした。彼の遺産は彼が生み出した美しいリズムと私たちに注いでくれた愛を通じて生き続けるでしょう。この困難な時期にたくさんの思いや祈りを届けていただき感謝しています。アーロンという素晴らしい人物と、彼がこの世界にもたらした素晴らしい音楽をどうか忘れないでください。このような状況ですので私達のプライバシーへの配慮をお願いしたいと思います。

    愛を込めて ジェシカ、オーガスト

    アーロン・スピアーズは1976年生まれ。ドラムを始めたきっかけは故郷であるワシントンDCの教会。すぐに夢中になり、「止めなさい」と言われるまで叩いていたという。高校時代はコンサート・バンドとマーチング・バンドを掛け持ちしながら、ジャズ・バンドでもプレイし、ドラムのテクニックや楽譜の読み方を学んだそう。

    影響を受けたドラマーとして、ジェラルド・ヘイワード、ジョエル・スミス、ジェフ・デイヴィスなどのゴスペル系ドラマーの他、デニス・チェンバース、デイヴ・ウェックル、ヴィニー・カリウタ、スティーヴ・ガッドの名前を挙げている。

    本人がキャリアのターニング・ポイントと語っているのが、ゴスペル・グループ=ギデオン・バンドへの参加。ゴスペル音楽でありながら、ジャズやロック、R&B的なサウンドの曲もあったそうで、さまざまな音楽ジャンルを演奏することで、独自のプレイ・スタイルを培ったとインタビューでは語っている。

    このギデオン・バンドでの演奏がアッシャーの音楽監督であったバルデス・ブラントリーの目に留まり、オーディションを経て、ツアー・ドラマーに抜擢。グルーヴとテクニックを兼ね備えた新世代ドラマーとして注目を集めるようになった。

    彼の名前が広く知られるようになったのは、2006年に行われたモダン・ドラマー・フェスティバルにおけるパフォーマンスだろう。「Gospel Drumming Summit」と題して、ゴードン・キャンベル、ジェラルド・ヘイワード、マーヴィン・マックイティと共に出演。強烈なパワーとスピードで”ゴスペル・チョップス”を繰り出すアーロンのパフォーマンスは世界中のドラマーに衝撃を与えた。

    体格の良いドラマーが縦横無尽に叩くというゴスペル・ドラミングのイメージを定着させた代表格であり、日本のドラマーにも大きな影響を与え、彼のファンを公言するプロ・ドラマーも数多い。新型コロナ・ウィルスが流行する直前、2020年2月に来日し、ドラム・クリニックを行ったことも記憶に新しいだろう。

    近年も歌姫=アリアナ・グランデのツアー・サポートとして世界中を飛び回り、さらにクリニシャンとしても活躍。ドラム・イベントにも引っ張りダコで、2023年も9月20日にアメリカで行われた「ZILDJIAN 400TH ANNIVERSARY CONCERT」に出演。殿堂入りを果たしたデニス・チェンバースへのトリビュート・パフォーマンスで、極上のグルーヴと迫力満点のチョップスで会場を沸かせてくれたのが約1ヵ月前。その元気な姿が印象に残っている中、突然届いた訃報に驚きを隠せない。

    心よりご冥福をお祈りいたします。