GEAR
UP
【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯29〜EVANS UV 1〜
- Text:Takuya Yamamoto
- illustration:Yu Shiozaki
第29回:EVANS UV 1
ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回は特殊なコーティングを施したEVANSのドラム・ヘッド、UV1にフォーカスします!
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 保管や流通にかかるコストを削減することで、価格を抑える方向に作用する、パッケージ製品を検討したことはありますか? 近頃、あるメーカーの流通経路が変わったためか、いくつかのハードウェアのパッケージがデジマート上に登場しました。試しにいくつかの比較をしてみたところ、単品販売に比べて、大幅な割引が適用されていました。
日本では「1つずつ選びたい」というニーズが強いらしく、シンバルは単品販売が基本ですが、北米ではクラッシュやスプラッシュなどのシンバル1枚分が無料で同梱された、Box SetやPackと呼ばれる製品群も根強い人気があるようです。人気の高い王道のアイテムや、新製品が中心ではありますが、導入を検討している製品が含まれたパッケージがないか、確認してみても良いでしょう。そんなわけで、セット商品を見て回っていたところ、今こそ取り上げるべき製品を発見しました。
今月の逸品 EVANS UV 1【B14UV1】
これまでに何度か取り上げたRemoと双璧を成す、大手ヘッド・ブランドであるEVANSより発売されている、特殊なコーティングを施した、比較的新しいコーテッド・ヘッドです。私個人の使用方法では、RemoやLudwigのコーティングに対して、耐久性の不満は一切ありませんが、このUV1で採用されているものは、伝統的なコーティングと比較して、圧倒的な耐久性を誇ります。
それなりに叩き込んでもほとんど打跡がつかず、長期に渡って使用して剥がれ始めても、剥がれが加速するような印象はありません。また、少なくとも数年といった単位では、よくある加水分解のような劣化もしないので、使用頻度がさほど高くない場合でも安心です。
エッジ付近がコートされていないことや、コーティング自体が硬質であるためか、音色には独特な明るさとクリアさが存在しているので、RemoのAmbassador Coatedや、EVANSのG1のような、基本モデルの完全な代替とはいきません。しかし、クリアとは異なる温かみのような雰囲気もあり、何よりルックス面でのそれらしさと、高い耐久性が期待できます。
スタイルによっては、使い込んだ汚れや、中央と周辺とのコーティングの残り方にムラを求めるケースもあるでしょう。しかし、クリーニングに出したばかりの、糊の効いたパリッとしたシャツのような質感が好ましい、という方も少なくないはずです。
これまでになかった音なので、新鮮で現代的な印象を受けるかもしれません。現行の楽器はもちろん、あえて古い楽器に張ってみても面白いでしょう。ヘッドに由来する音と、楽器のそれとを見極めることは、導入と運用、それぞれの楽器選びの上で、大切なポイントです。
さて、パッケージの話に戻りますが、執筆時点において、UV1を含むいくつかのセット商品が流通しています。スネア向けとして、UV1を含む裏表両面と、同じくD’Addario傘下のブランドであるPuresoundのスネア・ワイヤーなどをセットにしたUV1 Snare Tune Up Kit、タム向けの3種類の3枚セット……UV1 Coated Standard Tom Pack (12″、13″、16″)、UV1 Coated Rock Tom Pack(10″、12″、16″)、 UV1 Coated Fusion Tom Pack(10″、12″、14″)が見つかりました。
純正の新品に交換するのも良いですが、楽器を購入するより低いハードルで挑戦でき、気分転換にもなります。また、耐久性やセット商品の割引による経済性を生かして、サークルや部活の備品などで試してみても良いかもしれません(当然ですが、それぞれの管理者の方に相談してくださいね)。
発売当時に受けた印象と、現在UV1を使用しているアーティストとその楽器を見比べると、意外に感じる一方で納得感もあったりと、定期的に振り返ることの面白さも再確認できました。時間が経つと、耳や好み、許容範囲にも、変化が生じる場合があります。今までに試したことがある方も、そうでない方も、この機会にぜひチェックしてみてください。
島村楽器主催「ドラムショー2024」との
コラボレーション企画が決定!!
島村楽器が行っているドラマーのためのドラム展示会=“DRUM SHOW”(ドラムショー2024)が今年も開催! その「ドラムショー2024」と本連載のコラボレーションが実現!! 「山本拓矢が島村楽器ドラムショー2024で見つけた逸品たちを試打&レポート」と題した試奏イベントを10月19日(土)名古屋パルコ店で行います!
限定アイテムやハイエンド・モデルなど、「ドラムショー2024」でフィーチャーされるスネア・ドラムを博士が試奏し、それぞれの特徴やサウンドの魅力、チューニングのポイントなどをリアル・タイムで解説するという内容を予定。イベントで試奏したスネア・ドラムは後日、本連載でもご紹介します!
イベントは人数限定となっているので、興味のある方は早めに申し込みをオススメします!! ドラムショー2024の詳細はこちら→https://info.shimamura.co.jp/drums/article/drumsshow2024
Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。
Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto
【Back Number】