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エル・エステパリオ・シベリアーノ – SNS総フォロワー数1千万人超え! 世界中が注目する怪物ドラマー【Interview|前編】

  • Interview:Mark Griffith Translation:Tomohiro Moriya Photo:Mariano Regido/Redfernsr©Getty Images
  • Reprinted with Permission of Modern Drummer ©2025 https://www.moderndrummer.com/

自分がどこまでテクニックを高められるかを探求したかった
ドラム・コミュニティ全体をもっと深掘りし始めたんだ

超人的なドラム・テクニックで瞬く間に話題となり、SNSの総フォロワー数は1000万人超え! 今、世界中から最も注目を集めているスペインのドラマー=エル・エステパリオ・シベリアーノ。発売中のドラマガ2025年7月号では、Modern Drummer誌による独占インタビューを抜粋してお届けしているが、ここでは、誌面で泣く泣くカットした未公開セクションを含むアナザー・パートを前・後編に分けてWeb掲載! ぜひ誌面と合わせてチェックしてみてほしい!

◯グレイトな質問だ。12歳のときに始めたんだ。とにかくエネルギーが有り余っていて、そのエネルギーをどう使えばよいのかわからなかったけど、ドラムが一番グッドな解決策だった。最初は俺はギター、兄貴がドラムをやりたがっていたんだけど、途中で立場が逆転してしまった。地元に教えてくれる人を見つけて、1時間5ユーロでレッスンを受けた。親が毎週月曜に俺をその先生のところに1年間連れて行ってくれて、そこで本物のドラム・キットに触るようになったんだ。

ドラムっていきなりキットを買って始めるのはかなり難しいから、レッスンから始めるのは絶対に必要なことだね。すでにキットを持っている人と一緒にやることから始めるべきなんだ。そして自分のキットを手に入れたらすぐにレッスンを辞めた。先生に問題があったわけじゃなくて、自分で探求していきたかったからね。

◯最初のキットは中古のLudwig Accentだった。それを売って白いTAMA  Imperialstarの6ピース・キットを手に入れ、それも売ってからは長い間MAPEX Saturnを使っていた。グレイトなドラムだったよ。

◯先生と1年練習した頃には、音源を聴けばどのパーツを叩いているのかがわかるようになっていた。正直に言うと、ドラムは何が起こっているか、基本的に耳で理解できてしまうものなんだ。年配のドラマー達は、「何をやっているのかわからなかった」ってよく言うけど、当時は今みたいに映像で確認できなかったから、何が起こっているかを知る術がなかったんだろうね。

YouTubeが出てきたことでパフォーマンスやソロを目で見て理解できるようになり、今は学びたいっていう気持ちさえあればその手段はいくらでもある。昔は確かに大変だったかもしれないけど、今は教材が溢れている。俺はとにかく学ぶことへの情熱が止められなかったんだ!

◯俺がやりたかったSUM 41、グリーン・デイ、それにスリップノットの曲なんかは速さや持久力が必要で難しかったけど、実際はそんなに複雑じゃなかったんだ。手足の独立したテクニックを必要とするわけでもないし、普通のドラムだった。曲を聴けばすぐに一緒にプレイできるものばかりだった。速くて追いつけなかったかもしれないけど、少し自分のアレンジを加えてプレイすることはできた。そうやってできる限りのことをやっていたんだ。でも元々の質問に戻ると、まだ初めてのバンドをやるには全然準備ができていなかったと思うし、実際バンドに入りたいとすら思っていなかったんだ。

◯俺はかなり小さな町の出身で、バンドに入るにはドラム・キットをリハーサル・スタジオに持って行かなきゃいけなかったんだ。当時は1台しかドラム・キットを持っていなくて、そのキットをスタジオに毎回持って行くのが嫌だったんだ。仮に置きっぱなしにできたとしても、日々ドラムが練習できない遠い場所に持って行くなんて嫌だったし、ただ1人でプレイしていたかったんだ。バンドでプレイすることの意味さえわからなかった。

初めてバンドに入ったのは、メンバーがドラム・キットを持っていて、自分のドラムをスタジオに運ばなくて良かったからだ。ただ、それでも俺は本気でフルタイムのドラマーになろうとは思ってなかったし、今でもそうだと思う。フルタイムのドラマーになるなんて恐ろしいアイディアだし、すごく大変な人生だと思う。俺にはあまりにも合わない選択肢だと思ったから学業に集中し、ドラムはあくまで趣味と割り切っていた。別にロック・スターになりたかったわけじゃなかったんだ。

◯俺のドラミングのアイドルや影響を受けたアーティスト達は、90年代の音楽から始まる。昔は、システム・オブ・ア・ダウンのジョン・ドルマヤンや、スリップノットのジョーイ・ジョーディソンのようなニュー・メタル系のドラマーにすごく影響を受けていた。俺はその当時の若者の誰もが聴いていた音楽を聴いていたんだ。後になってスナーキー・パピーやマーク・ジュリアナを聴いて、ドラムは俺が当初思っていた以上に複雑なものだと気づいた。多くの人がドラムを始めたばかりの頃に経験することだと思うけど、もっと深く掘り下げて、ドラム・コミュニティの中にあるもっと複雑な、音楽的な要素や言語を探ることをしない。でも、それはとても大きな間違いだと思う。

そんな中、俺はスペインでミゲル・ラマスというドラマーを見つけた。彼はトーマス・プリジェンに似たスタイルを持つ素晴らしいドラマーで、パラディドルをベースにしたアイディア豊かな演奏をしているけど、グルーヴもかなりソリッドなんだ。俺は17歳のときに幸運にも彼と一緒に演奏する機会があった。それが、本当のドラマーだと思える人と初めて触れ合った瞬間だった。

▲ミゲル・ラマス

彼はメイン・ストリームの音楽をプレイしているだけでなく、ジャズやジャズ・フュージョンのもっと複雑なこともプレイできる人だった。彼に出会った瞬間、俺の世界は一変した。ミゲルは俺より少し年上だったけど、スペインで俺が理解できないようなプレイをする若いドラマーを見たことがなかった。それまで自分はドラムを十分叩けると思っていたけど、彼に会った瞬間に、それではまだ全然足りないことに気づかされたんだ。彼は俺のキャリアを大きく変え、最初からやるべきだった練習をするようにインスパイアしてくれた。俺はドラムや演奏のすべてを探求し始め、世界が爆発的に広がったんだ!

そして、みんなが話題にするようなヴィニー・カリウタやトーマス・ラングにも注目し始めた。彼らはドラミングを開拓するためにプレイしている本物のドラマーだと聞いたからね。俺は自分がどこまでテクニックを高められるかを探求したかったし、ドラム・コミュニティ全体をもっと深掘りし始めたんだ。

ドラマー達にとって良いロール・モデルかどうかは疑問
ドラムを始めたばかりの人達にとっては
逆効果で有害だとすら思っている

◯インターネット上の典型的なオーディエンスが興味を持つものって、かなりバカみたいなものが多いから、長期的な目で見たときにそれが良いことになるかどうかはわからない。注目を集めるためにはバカげたことをたくさんしなきゃいけないよね。最終的にはかなり大きな観客の前でドラムを叩くことになるかもしれないけど、今はたくさんのドラムを叩かない人達に向けて叩いている。つまり普通のドラミングの状況ではやらないような、バカげたことも取り入れなきゃいけないってことだね。

あとはクールに見せる必要があるっていうことも問題だと思うんだ。レコーディングするときには髭を剃らないといけない、靴をきれいにしなきゃいけない、機材もピカピカにしないといけない。それらはまったく意味がないし、これらすべてが全体的な雰囲気を悪くしているんだよ。素晴らしいキットが必要だとか、最も高価なシンバルが必要だとか……そういう考えが社会やドラム・コミュニティにとって非常に有害だと思っている。これがTwitter(X)から始まったんだ。

注目を集めるためには、少ないスペースにたくさんの情報を詰め込まないといけなくて、注目を集めるために曲を切り刻んだりした。YouTubeではもっとバランスの取れたことを俺はやれているけど、Instagramでやっていることは、ある人達にとっては魅力的かもしれないけど、どこでもそんな風にプレイすることはお勧めしないよ! それがドラマー達にとって良いロール・モデルかどうかは疑問で、少なくとも俺にはそうは思えない。ドラムを始めたばかりの人達にとっては、逆効果で有害だとすら思っている。

◯俺はいつも物事に心血を注ぐのが好きだって言ってきたし、頭が良いとかそういう素質よりも努力に頼っている。物事がうまくなりたくてすごく努力しているから、自分を頭が良いとは思わないかな。大学での知的な学びに関してはけっこう良い部類だったけど、それでもすごく勉強していた。大学では政治学と社会学を学び、ほとんどの時間を勉強に費やし、勉強していないときはドラムを叩いていた。俺はかなり規律を守るタイプだしかなりの努力家だと思うけど、俺がどれだけ頭が良いかはよくわからないな。

◯うん、実は今(2024年のインタビュー当時)、自分のプロジェクトを始めている。来年にはツアーをしていたいが、正直なところ、今のところ書いてレコーディングした曲は3曲だけだし、俺たちが大きな成功を収めるとは思っていない。俺は引き続き自分のドラム・チャンネルを続けるつもりだし、それが食っていくための方法だ。もちろん音楽を作ることに挑戦したいと思っているが、それはただ純粋に音楽を作るためだけだ。次のビッグ・ヒットをねらってバンドを作りたいわけじゃない。俺にとっては逆で、外の世界からの注目を求めているわけじゃなく、俺のバンドは俺自身にとって良いものにさせたいと願っている。

◯それはとても良い質問だ。実は、俺はソーシャル・メディアのドラマーにはあまり注目していない。ソーシャル・メディアから出てきたドラマーで、俺が本当に気にかけているのはグレイソン・ネクルトマンだけで、彼は良き友だ。

最近の俺は、最初に俺の注意を引いたドラマーたちを振り返ることが多いかな。クリス・コールマン、エリック・ムーア、トーマス・プリジェン、デイヴィッド・コールマン……それに、JD・ベックっていう狂ったように叩く小さなキッズも好きだ。彼は素晴らしい。マイク・ミッチェルはJD・ベックを教えたことがあって、マイクも素晴らしいドラマーで、もっと評価されるべきだ。ラーネル・ルイスは恐ろしいドラマーで、素晴らしい人でもある。ベニー・グレブ、アニカ・ニルス……面白いことをしているドラマーは本当にたくさんいるよ。

◯その質問は何度か聞かれたことがある。残念ながら俺はあまり外を出歩くことがないので、そういった体験はあまりないんだ。俺はスペインじゃなくてアメリカに行ってキャリアを積むべきだと言われるが、俺はここが気に入っている。家族もいるし、車も犬もいれば、天気に恵まれている。俺はいつも“チルっていられる”んだ。外出しても俺のことを認識する人は少ないし、アメリカほどのドラマーのコミュニティはここにはない。俺が経験するドラマーのコミュニティはオンラインだけだ。そこでは嫌な思いをすることもたまにはあるが、ほとんどの人は素晴らしくて、俺にとっては最高だよ。

◯最近Alesisの電子ドラムを使い始めた。新品のAlesis Strata Primeキットを手に入れ、それをとても気に入っているよ。

◯まったく問題なんてないさ。

◯現在は、スペイン・バレンシアで作られたVarusのカスタム製のドラムを使っている。お気に入りのVarusのスネア・ドラムは、14”×6.5”のキャスト・ブラスだ。Varusからは、今後必要になるであろう数以上に多くのサイズやドラムを提供してもらっている。シンバルとスティックはMEINLを使用していて、彼らのドイツ流のオーガナイズのさせ方が大好きだ。

クラッシュは20″、ライドは22″、チャイナは20″、ハイハットは16″を使っている。全部好きだから使用するモデルは常に変えているが、特にお気に入りのライド・シンバルは22″のSymmetry Rideで、これが今までにプレイしてきた中で最高なライドだと思っている。ドラムと俺達の間にあるものなのでペダルとスローンにはこだわりがあって、ペダルは中程度のテンションに設定したYamahaのFP9を使い、スローンはPearlのトラクター・シートのタイプのものを使っている。

Next➡︎自身の強みやスティッキング、最近の活動について語られたインタビュー後編も近日公開!

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