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アコースティックエンジニアリングが手がけた“ドラムが叩ける”プライベート・スタジオ Archive #8[東京都 高木さん宅]

  • 取材:編集部 撮影:八島 崇
  • 文:西本 勲

“自宅で思いきりドラムを叩きたい。しかも良い音で”……スタジオやライヴ・ハウスなどの防音/音響工事を行う専門業者、アコースティックエンジニアリングが住宅に施工したドラム用防音室にフォーカスする連載企画。今回は東京都在住の高木さんが叶えた、夫婦で楽器を楽しめる自宅スタジオを紹介していきます!

僕はドラム、妻はピアノ
お互いが好きな時間に楽しめる
この部屋は最高です

ドラムをタイトに聴かせながら
ピアノの豊かな響きを妨げない

趣味でドラムを叩く人なら、誰しも“家でドラムを叩きたい”と考えるだろう。高木さんも例外ではないが、その背景には高校時代の原体験があった。

「当時は富山に住んでいて、家とは別にあった納屋みたいなスペースで生ドラムを叩いていたんです。防音も何もしていないので外に聴こえ放題でしたが、田舎ならではの寛容さがあって、近所のおばさんから“上手になったね”と褒めてもらったくらい(笑)。でも、大学に入って初めて都会で一人暮らしをしたマンションでは、電子ドラムでもすぐに苦情が来て、これは無理なんだなと」。

▲高木さんのドラムと奥様のグランド・ピアノが共存するスタジオ。それぞれに適した室内音響を1つの空間で無理なく実現することが部屋作りの大きなテーマとなった。内装の色調もこだわりポイントの1つ。

それ以来、「好きなときにドラムを叩きたいとずっと思っていました」という高木さんは、後に音大出身の奥様と結婚。現在の家ができる前の住居にピアノ用の防音室を作ったが、それを施工したのがアコースティックエンジニアリングのかつてのグループ会社だった。

「そのときに“一戸建てならここまでできます”という話を聞いて、家でドラムを叩ける可能性を考えるようになったんです。実際に家を建てる計画が始まったときは、グランド・ピアノを置ける部屋を作りたいというのが妻の希望で、“だったらドラムも置けるよね”みたいな感じでスタートしました(笑)」。

▲PAスピーカーは、希望する機種が生産終了してしまったため一時は天井吊りを諦めかけたそうだが、高木さんがやっとの思いで探し出して計画通りのセッティングに。室内のコンセントはエアコン用を除いて黒で統一。写真右の、壁と床の間の黒い部分に溶け込んでいるのがわかる。

高木さん宅の1階は、玄関と水廻り、寝室、スタジオで構成。「スタジオがこの家で一番広い部屋です(笑)」と高木さんは笑う。ドラムとピアノが置けて、バンドでも使えて、なおかつホーム・シアターとしても活用したいという要望に合わせて、完成後約10畳という広さを割り出し、それに必要なスペースを確保するために住宅メーカーとのやり取りが重ねられた。

このように、家の新築工事と並行して進めることはスタジオ作りの自由度を高める要因の1つになる。結果、完成したスタジオは約10.6畳と十分な広さになった。大きな特徴と言えるのが室内の響き。ドラムの周りの壁は吸音パネル、ピアノの周りは板張りとし、それぞれに適した響きを得ている。特にピアノ側は、部屋の隅と天井で低音を吸収しつつ、高音は反射させるというきめ細かい作りで、ドラムはしっかりタイトに鳴らしながら、それ以上に繊細なアコースティック楽器であるピアノを気持ち良く演奏できる環境を実現している。

▲出入り口は木製防音ドア×2枚で構成。部屋の外から中の様子が見えるようにという家族への配慮から、ガラス窓つきのドアが選ばれた。その右にある照明スイッチのパネルも、コンセントと同じく黒をチョイス。
▲スタジオがあるのは1階奥(写真では手前)。隣家との距離が近いが遮音上は問題なし。高木さんは事前にショールームで遮音性能を確認し、安心して工事に臨めたそうだ。

“とにかく落ち着ける場所”を
コンセプトにした内装のアイディア

もう1つ、高木さんがこだわったのがスタジオの内装。これについては夫婦で意見を出し合い、イラストを描いてアコースティックエンジニアリングに“逆提案”したという。

「最初に作っていただいた叩き台は、ブラウン系の暖色を中心とした内装だったんです。一度はそれで固まりかけたのですが、せっかく作るならとにかく落ち着ける空間にしたいと思っていろいろと考えた結果、某コーヒー・チェーンの内装を参考に、床は黄色味のあるオーク材で、壁の一部はライトグレーで……という感じで一新させていただきました」。

置かれた楽器類も引き立つナチュラルな内装は、設計担当者も「良い意味で、いつもの弊社のテイストと違う仕上がりになりました」と感心するほど。間接照明も最初のプランにはなかったそうだが、住宅部分の設計から着想した高木さんの要望で、こちらはアコースティックエンジニアリングが具体案を出して現在の形になった。

▲スクリーンを下げるとホーム・シアターに変身。スクリーン下の棚もアコースティックエンジニアリングによる造り付けで、サウンド・バーの置き台でありつつ収納家具の役割も果たしている。ダウン・ライトと間接照明の組み合わせで、明かりを暗めにしたときの雰囲気作りも完璧。
▲ドラム・セットはパールのDECADE MAPLE、シンバルはジルジャンのiシリーズ。フット・ペダルはパールDEMONDRIVE P-3000Dと足技にフォーカスしたセレクト。

まさに、施主と施工側のキャッチボールで出来上がったと言えるこのスタジオ。高木さんは「今は子供が小さいので、僕も妻も空いた時間に少しずつしか使えていませんが……」と前置きしつつ、「スタジオが家にあるという状態は素晴らしいです」と大満足。そもそも、忙しい日常生活の合間でも楽器に触れられるのは自宅スタジオの大きなメリットだ。

「ドラムをフル・パワーで叩いても大丈夫。バンドで音を出したこともあって、さすがに最初は外への音漏れが心配でしたが、まったく問題ありませんでした。ギター・アンプがもう1台欲しいと思ったほどです(笑)。あとは音楽ものの映像を観ながらドラムを叩いたり、映画などを大音量で観たりして楽しんでいます。楽器とスクリーン周りの機材レイアウトもずいぶん考えましたが、最終的に“ここしかない”という配置になりました」。

いずれは音楽一家として家族みんなでスタジオを活用する日が来るかもしれない。そんな未来を想像させる今回の訪問だった。

中学時代に親のギターを触り始め、高校の軽音楽部でドラムを始める。「入部説明会に遅れて行ったらギター志望の新入生がすでに10人くらいいたので、友達の薦めもあってドラムにしました。当時はメロコア全盛で、Hi-STANDARDのコピーをひたすらやりましたね」。社会人になってからは、「大学時代の友人や会社の人達とたまにスタジオに入る程度」だったが、自宅スタジオができたことでドラム熱が再燃。ギターを弾く時間も増えたそうだ。

※本記事は2024年10月号掲載の記事を転載したものになります。

アコースティック
エンジニアリングとは?

株式会社アコースティックエンジニアリングは、音楽家・音楽制作者のための防音・音響設計コンサルティングおよび防音工事を行う建築設計事務所。1978年に創業して以来、一貫して「For Your Better Music Life」という理念のもと、音楽家および音楽を愛する人達へより良い音響空間を共に創り続け、携わった物件の数は2,000件を超えている。現在も時代の要請に答えながら、コスト・パフォーマンスとデザイン性に優れ、「遮音性能」、「室内音響」、「空調設備」、「電源環境」、「居住性」というスタジオの性能を兼ね備えた、新しいスタイルのスタジオを提案し続けている。

株式会社アコースティックエンジニアリング
【問い合わせ】
TEL:03-3239-1871
Mail:info@acoustic-eng.co.jp
住所:東京都千代田区九段北2-3-6九段北二丁目ビル
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